ごちゃごちゃ余計なことを考えずに毎日を過ごせたら、生きることって意外と楽に感じられるんじゃないか。
そんな風に思わせてくれる映画を集めました。
のるかそるか
あらすじ
妻との関係に問題を抱えるタクシードライバーのジェイ。ある日、同僚ルーニーが乗せた客が、競馬の八百長について話しているのを聞き、その情報を教えてもらったジェイは有り金を持って競馬場に出かける
競馬場はジェイの友人や馴染みの客、そして会員クラブで競馬を観戦するセレブまで、様々な人の溜まり場になっている。
最初こそ八百長情報で金を当てたジェイだったが、増えた金を本当の賭けに使い、それがさらに当たって興奮する。勝ち続けるジェイに、友人たちは嫌味を言い、最初はおおらかにジェイを見ていたセレブたちさえ、ジェイの勝ちっぷりに腹を立て出す。
ジェイの妻は、ジェイのギャンブル癖に怒っており、彼が稼いだ大金を目にしても意に介さず、家に帰っていく。ジェイは十分稼いだと考えて家に帰り、妻にプレゼントとお金を見せるが、怒って酔った妻はそれを見てもちっとも喜ばない。
ジェイは最後に、ありったけの金を一頭の馬に全額ベットし、最高の賭けを楽しむことにする。
おすすめポイント
まず、場末感漂う競馬場に集まる人々とその交友関係が楽しい。貧乏人からセレブまで、賭ける人から換金係まで。とにかく、活気があって、みんな必死で、なのにどこか能天気な現場の空気が見ていて痛快だ。
ジェイは明るく賭けを楽しみ勝っていく。一方で周りの人たちは勝ち続けるジェイを見てイラつく。他人の幸運を喜べず、セレブすら勝てなくてヘソを曲げだす様子は、何が人生から楽しみを奪っているのかを垣間見せる展開になっている。
そして、ジェイの「最後の賭け」が本当に素晴らしい。「細かいこと考えないで、楽しもうぜ!」と、超ハイリスクな賭けを提案するジェイ。しかし、周りの人たちは誰もジェイの提案に乗らない。
小賢く考えるせいでギャンブルを楽しめない周囲と、ギャンブルを楽しむことだけを考えるジェイ。「別に勝つかどうかなんてどうでもいい! 楽しめたらそれが最高の報酬だ!」というジェイの豪快な賭けを見ると、人生なんて難しく考えずに楽しめばいいんだな、という気分にさせられる。
最強のふたり
あらすじ
パリの富豪フィリップは、首から下が動かない障害を持ち、彼をサポートするための介護人を探していた。移民の青年ドリスは、失業保険の期限延長のために働く気もなく面接だけ受けに来たが、フィリップの目にとまり、ドリスはフィリップの介護人を勤めることになる。
礼儀がなく、フィリップに対しても臆せず何でも発言するドリスに、フィリップの友人は眉をひそめる。しかし、フィリップ自身は、「ドリスは自分のことを憐れんでいない」と話し、ドリスはフィリップにとって特別な存在になっていく。
またドリスも、フィリップと生活を共にすることで、芸術の知識を得たり、クラシック音楽を聞いたり、ハングライダーに挑戦したり、生活の中に新しい経験を見出していく。
おすすめポイント
フィリップが重度の障害を持つキャラクターであるにも関わらず、底抜けに明るいドリスのおかげで、映画全体はとてもポジティブな空気に包まれている。
とにかく、ドリスのキャラクターが際立つ映画だ。ドリスは、ただの能天気なキャラクターなのではない。ドリスは貧困家庭に生まれ、現在も家族との問題を抱えている。
にも関わらず、ドリスは明るい。フィリップの家に住み込みになり、その豪華な部屋を存分に堪能しながら、それに執着するのでもなく、家に帰って小さなバスタブに浸かっている。
ドリスは与えられた楽しさを存分に楽しみ、与えられた問題にできる限り対処して生きている。他人の目を気にしたり、常識を気にしたりするより、自分にできることをやっている。
ドリスを見ていると、変にこだわりをもったり、贅沢か貧乏かということに左右されず、オープンマインドで、素直に生きることができれば、きっと人生はもっとシンプルに生きられるんだろう、と思わされる。
シェフ 三ツ星フードトラック始めました
あらすじ
一流レストランで働く料理人のキャスパーは、こだわりの強い料理人だが、オーナーに命令されて作った料理を出したことで有名な批評家からボロカスにけなされてしまう。
その上、慣れないSNSを使って批評家に反論してしまったせいで、大炎上。オーナーともケンカになり、仕事を辞め、路頭に迷ってしまう。
悩んだ末、前妻の勧めでフードトラックを始めることにするキャスパー。レストランの元同僚マーティンは、仕事を辞めて手伝ってくれ、イマイチ上手くコミュニケーションが取れていなかった前妻との息子パーシーもフードトラックに乗り込む。
3人で、マイアミ、ニューオリンズ、ロスを巡って、フードトラックで料理を売り出す旅に出る。
おすすめポイント
ケンカ、悪評、失業、という三連コンボでキャリアのどん底に落ちてしまうキャスパー。
しかし、キャスパーは「高級レストランで働いていた」という過去の栄光にとらわれず、ボロボロのフードトラック(屋台)を譲り受け、それを自分の手で綺麗に清掃するところからやり直す。
失業は不幸な出来事だが、この映画では失業を別の角度から前向きにとらえている。
キャスパーは、自分をある場所に縛り付けていたレストランから解放され、「自由」に移動できるフードトラックに乗り込み、そこで好きな料理を作る。そして、自分が料理にのめり込んだ原初的な興奮「自分の料理を作り、それが人を喜ばせること」を再び取り戻していく。
さらに冒険するようにアメリカの各地を移動し、そこで最高の食材を味わい、そこからアイデアを得て料理を考案し、それが現地の人々を楽しませる。
行動を起こし、自分の能力を遺憾無く発揮し、人々に喜んでもらう。それで十分だ、と思わせてくれるポジティブ過ぎる映画になっている。
フォレスト・ガンプ/一期一会
あらすじ
知能指数は少し低いが、運動能力に長けていて、異常に実直な男フォレスト・ガンプ。彼の半生を、第二次大戦後からのアメリカの歴史に乗せて描いていく。
子供の頃、足が悪く、さらに周囲の子供達にからかわれるフォレストだが、高潔な母の愛情を受けて実直な青年に育つ。
フォレストは、流れるままに人生を生きていく。
高校では走りが認められアメフト選手になり、ベトナム戦争で出兵し、そこで卓球の才能に目覚めて卓球選手として活躍し、それが終わると、戦友と約束していたエビ漁船を始める。幼馴染の女性に再開するもフラれ、アメリカ往復ランを始める。
おすすめポイント
周りからの疎外、家族や友人との別れや死、ベトナム戦争、周囲からの嫉妬、戦友の破滅など、フォレストの人生は苦い経験に満ちている。
にも関わらず、とにかくポジティブな空気が流れているのは、良い意味で、フォレストに主体性がないからだろう。これは、フォレストが無気力ということではなく、流れに身を任せ、その場その場で自分に素直に、最善を尽くして生きているということだ。
フォレストは、基本的に周囲からの提案を受け入れ続けるイエスマンだ。虐めっ子から逃げる走りを見られ、アメフト部に誘われれば入り、兵士としてリクルートされれば入隊し、友人がビジネスアイデアを話せばそれに乗る。
そしてフォレストは、他人を評価しない。
無力感に沈み込むジェニーと幼い頃と同じように接し、すっかり落ちぶれたダン中尉を見つけると喜んで駆け寄る。
周囲の人間を判断したり、逆に周囲からの判断を恐れたりせず、ただ自分の気持ちに素直に生きるフォレスト。その姿は、まさにその時その時を実直に生きることが、人生をシンプルで実り多いものにするというロールモデルになるだろう。
アバウト・ア・ボーイ
あらすじ
父が残した印税収入で自由気ままに暮らす38歳の男ウィル。ウィルは自分を孤島に例え、人と深い関わりを持たず、空っぽの日々を楽しく過ごしていた。
ウィルはある経験から、シングルマザーが女遊びの相手として最適だと思い、シングルペアレントの集会に潜り込む。それがきっかけで、シングルマザーのフィオナの息子であるマーカスと出会う。
マーカスは、精神的に不安定なフィオナを心配し、ウィルとくっつけることでフィオナを助けようと考え、中学生なりに画策する。ウィルは始め、毎日家に訪ねてくるマーカスを鬱陶しく思っていたが、だんだんとマーカスと過ごす時間を楽しむようになる。
マーカスとの交流を通じて他人に心を開くようになったウィルは、真剣な恋愛に挑むが、自分の不甲斐なさから上手くいかずに悩む。そして、フィオナの精神状態が悪化し、マーカスは母の問題で苦しんでいた。
おすすめポイント
孤独を愛し、1人独身貴族を楽しむウィルは、一応、それはそれで幸福な男として描かれている。しかし同時に、どこか心に穴が空いた存在としても描かれる。
マーカスとの交流を通して、ウィルは人と関わることの充実感を知っていく。それと同時に、自分の空っぽさに気づき、苦しむ。
そんなウィルにこの映画が提示する方法は、単に「人に心を開く」ということだ。
ウィルは、人に心を開くことで、新しい人間関係を獲得し、それまで味わって来なかった人生の充実感を手に入れる。
人に心を開き、人と関わりを持つことは、ウィルにとっては難しく、プライドが許さないようなことだったが、実際やってみるとそれはあっけないほどに簡単だった。
ウィルは最後、マーカスのために余計なプライドを捨てる。捨ててみれば、それがそんなに大事なものでないことに気づけた。そして、それを捨てたからこそ得られるものがたくさんあった。
自分の殻に閉じこもらず、ちょっと勇気を出して人に心を開いてみれば、意外と人生充実するのだ。人間関係をそんな風にシンプルに感じさせてくれる映画。