キャラクターが人間としてのある一線を超えてしまう映画を集めました。
あるキャラクターは追い詰められて、あるキャラクターは夢を叶えるため、あるキャラクターは欲望に駆られて。
「一線を超える」と言っても、そこには様々なドラマがある。
セッション
あらすじ
ジャズ・ドラマーに憧れる音大生ニーマンが、最高の指揮者と仰がれるフレッチャーの超スパルタ指導を受け、一旦はドラマーの道を諦めるも、結局はまたドラマーの道へ帰っていく。
おすすめポイント
フレッチャーの指導に耐えていたニーマンが、そのうち指導に応えるようになり、さらにフレッチャーに楯突くまでに成長するさまが、まず凄い。何かにひたすら打ち込む人間の強靭さを感じられる。
と同時に、ニーマンの中で生活の優先順位や狂い、人生における価値の多様性が失われていく様子も描かれている。ドラムに打ち込むことでダークサイドに落ちていくニーマン。
ある事件をきっかけにニーマンはドラムをやめ、狂いから覚め、通常の生活に戻っていく。そこでニーマンに、そのまま夢を諦めるか、ドラムを再開するかという選択肢が提示される。ニーマンはドラマーになる道を選択するが、そこに最大の試練がある。
ニーマンがその試練を乗り越えるのと同時に、ある一線を乗り越えていくラスト。興奮と熱量と狂気に満ちたラストシーンは物凄いシーンになっている。
プレステージ
あらすじ
手品師として切磋琢磨するアンジャーとボーデン。アンジャーはどうしてもボーデンを超えられず、ある発明品を使って完璧な手品を完成させ、同時にボーデンを凋落させる。
おすすめポイント
アンジャーはボーデンに対して個人的な恨みを持つ男。その恨みに加えて、どうしてもボーデンの手品に勝つことができない悔しさに苛まれる。
まずこの「個人としての恨み」と「プロフェッショナルとしての悔しさ」に、同時に襲われるアンジャーの苦悩がよく描かれている。
そしてその苦悩を晴らすため、アンジャーはある発明品を使って、一線を超えた方法で手品を考案してしまう。
さらに面白いのは、ではボーデンの方は単に天才だったのか、というとそうではなく、ボーデンもボーデンで、ヤバイ方法で手品を考案しているというキャラクター。
度が過ぎたプロフェッショナリズムの戦いが観られる作品。
キング・オブ・コメディ
あらすじ
有名コメディアンを夢見るパプキン。必死に有名コメディアンを研究し、エージェンシーに自分を売り込むが相手にされず、最終手段に出る。
おすすめポイント
「自分は有名なコメディアンになるしかない」と信じ込んで生きているパプキンの狂人さ加減がまず大きな見所。
この行き過ぎた信念ゆえに、パプキンはある一線を超え、犯罪を犯してしまう。
犯罪にも関わらず、オフビートな調子でパプキンの間抜けな雰囲気が可笑しく描かれている。
これはコメディとして面白いと同時に、パプキンがいかに世間というものを気にしておらず、自分の夢にしか興味がない男か分からせる描写になっている。
夢に取り憑かれ、そのことしか考えられない男の奇妙さを観ることができる。
紙の月
あらすじ
梅澤は真面目な銀行員だったが、不倫をきっかけに銀行の金を横領し始める。梅澤の犯行はどんどん大胆になり、不倫相手と共に豪勢な生活楽しむようになる。
おすすめポイント
もちろん、真面目に働いていた人が犯罪に手を染める、という時点で一線を超えているのだが、この映画の主人公梅澤の場合はそこで終わらない。
むしろ、この映画のストーリーが凄いのはラスト。犯罪がバレてしまった後だと個人的には思う。
横領は梅澤の人間性を大きく変えた。自信なさげで主体性の曖昧だった梅澤が、ラストでは強靭な強さを持ったキャラクターに変貌している。
ある一線を超え、誰もついていけなくなった梅澤の姿が、爽快なクライマックスになっている。
マッチポイント
あらすじ
テニスコーチの仕事をきっかけに、セレブ一家への婿入りを果たしたクリス。順風満帆な人生の一方で、不倫相手に夢中になり、さらに関係が泥沼化。クリスはある方法で問題解決を図る。
おすすめポイント
「運」をテーマにした映画。偶然の出会い。そして出会うタイミング、別れるタイミング。そこから生まれる悲喜劇と、それに翻弄されるクリス。
そして、翻弄され疲れたクリスは、ある一線を超えて強引な解決を図ってしまう。
人間の人生や行動が、ほんの些細な運に左右されているという事実を、クリスの生活や行動を通して描いているのが面白い。
そして、そんなクリスの行動さえ、「運」による奇妙な帰結として、ブラックコメディ的に決着していく。
ナイトクローラー
あらすじ
ルイスは夜の街を徘徊し、事件現場を撮影してはそれをテレビ局に売って生計を立てている。ルイスはこの仕事で成功し、ビジネスを大きくしながら、だんだんと周囲の人間を支配し始める。
おすすめポイント
「ナイトクローラー」こと映像パパラッチの仕事に出会い、そこで才能を発揮し、頭角を現していくルイス。
ビジネスが順調に成長するごとにルイスは強欲さを発揮し、ライバルを潰し、ビジネスパートナーをも手玉に取り始めるルイスのサイコパスぶりが強烈。
さらにルイスは、最高の映像を撮るために一線を超える。事件現場を荒らし、犯罪行為にも手を染め、さらに強烈な映像を演出するため、一般人を危険な目に合わせる。
とにかく目的に突き進んでいくルイスの恐さが際立つ作品になっている。