映画

明日への地図を探して -時間の無人島で終末デート、ドラマは弱めだが、みずみずしい青春ロマンス-

概要

高校生のマークはタイムループにハマっており、同じ1日を繰り返し生きている。ある日、そんなマークの前に、自分と同じく1日を繰り返すマーガレットが現れ、2人は一緒に過ごすようになる。

2人は繰り返す毎日の中で、日々新たな「奇跡」を発見しながら、楽しい時間を過ごす。

しかし、いいかげんループから出たいと願うマークに対し、マーガレットはループから出たくないと感じており、2人の関係はギクシャクし始める。

マークは偶然、なぜマーガレットがループから出たがらないのかを知り、マーガレットを誘うのをやめる。一方マーガレットは母の言葉を聞いて、自分の困難に立ち向かい始める。

特殊な状況設定でありつつ、迷える高校生カップルが出会い、仲良くなり、対立し、助け合う、爽やかな恋愛を描く作品。穏やかな空気感と、ポップで可愛い画面。切なさはありつつも概ね前向きなストーリー。

!!これより下はネタバレの可能性があります!!

レビューの印象

高評価

  • 小さな出来事に目を向けることの大事さを感じさせられた
  • 行動を起こす勇気をもらえて前向きになれる
  • ティーンの青春ロマンスとして爽やかで可愛い

低評価

  • ストーリーが平板で大きな事件も起こらず退屈
  • SF設定の部分に納得できない
  • 似た設定の過去作もあり新鮮さがない

ナニミルレビュー

ループ=「世界に2人だけ」の状況

ループ物にもいろいろあるが、本作は真っ直ぐ青春ロマンス映画である。

ループという世界観を使って、真っ直ぐ青春ロマンスを描くというアイデアがこの映画の第一の面白さだ。

なぜこれが面白いか。

まず、「ループしている」という共通点を持たせることで、2人が暮らす社会を維持しながら「世界に2人ぼっち」というロマンチックな状況を作れているから。

「ループする」=場所と時間が切り離されるということだ。

「場所」を残しながら、2人の「時間」だけが世界から分離している。

つまり、2人は「時間的な無人島で2人きり」になっており、場所的には社会の中にいるのだけど、時間的には社会から解放されている。

この状況によって、2人は現実のカップルのように町中でデートを繰り返しながらも、実質的には世界に2人しかいないという、美味しいとこどりなロマンスを謳歌している。

車(どころか重機)を乗り回したり、食べたいものを食べ、お金をばらまき、モデルハウスに忍び込んで破壊に明け暮れたり。

社会(現実)をアトラクションにしながら、全ての責任や帰結から逃れて、自由奔放にデートする2人の姿は、まず映像的に見ていて楽しい。

ある種の終末物とかディストピア物っぽい「ルールから解放された楽しさ」がありながら、暗さや陰惨さ、ネガティブさがない。

そういう意味でもいいとこ取りな楽しい映画である。

一方、SF部分についてはかなりおざなりだ。とはいえ、それで興醒めとも感じなかった。

この映画は、青春ロマンス映画であり、このおざなりなSF設定は映画全体のテイストに合っていて、むしろ良いと思った。

ラストでマーガレットがループから抜ける方法を思いつき、それによって映画はハッピーエンドで終わる。

この辺りの流れはかなり強引で、マーガレットの行う方法でループから脱出できるという説得力は何もない。むしろ「そんなバカな・・・」と思ってしまうようなものである。

ただ、先ほども書いたように、この映画のテイストならこれで全然問題ない、というのがぼくの素朴な感想。

ただ、ぼくはこのラストをもっと好意的に解釈している。

ゲームのような映画の構成

この映画は少しトリッキーな構成になっている。

クライマックスまではマークが主人公であり、クライマックスで主人公がマーガレットにバトンタッチされる。

この転換は、マークのセリフによって「自分が主人公だと思っていたが、俺の物語じゃない」と語られるから、誰が見てもそう見えるように演出されている。

実際、大きな葛藤を乗り越えて成長するのはマーガレットだから、マークの考えは正しい。

なぜループが始まったのか、映画内で客観的事実として語られることはない。

けれど、マーガレットの直感が正しいとすれば、それは「母の死期を悟ったマーガレットが明日が来ないよう願った」からだ。

であれば、最後にループが解けるのは何もおかしくない。

マーガレットの「願い」によって始まったループが、マーガレットの成長を経て、マーガレットの思いついた方法で終わるのは自然と言える。

「それではあまりにマーガレットに都合が良すぎるじゃないか」と思うかもしれないが、このストーリーは、マークが語ったように「マーガレットの物語」なのだ。だから彼女に都合が良くて当たり前だ。

「マーガレットの物語」なのだと捉えると、マークがマーガレットの前に現れ、そして「ループから出よう」と彼女を誘うのも、マーガレットを成長させるための出来事なのだと考えられる。

マーガレットの願いによってループが始まったのであれば、そのループの中にマークが現れたのも彼女の願いだったはずだ。

マークは主人公ではなく、主人公をゴールに導く助手だったのだ。

母の死から逃れるため、マーガレットはループに逃げこんだ。しかしマーガレットは、どこかで「このままではいけない」と思っていた。

その思いがマークを呼び寄せ、そして彼と恋に落ちることがそのままループから脱出する鍵になった。

マーガレットは、ループからの脱出方法のヒントをテレビゲームから得ている。

この映画のストーリーは、「母の死の受容」というクリアに向かって繰り返される、マーガレットのゲームだったと捉えることができる。

この見方は、映画中何度もテレビゲームのシーンが挟まれることを考えると、それほど行き過ぎた見方ではないのではないかと思う。

というか、ループという設定自体がそもそもゲーム的なものだし、映画内で言及される『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はモロにゲームのような映画だ。

そう思ってみると、映画冒頭で町中を自由に動き回るマークの器用な振る舞いは、『グランドセフトオート』のようなオープンワールド系のゲーム的な映像だと思える。

という感じで、話がそれたけれど、つまり、あのループ脱出劇は「無理のある展開」であるけれど、この映画としてはこの「無理」こそ正しかったのだ。

なぜなら、そもそもマーガレットの「願い」によってループが始まっているという「無理」がストーリーの前提になっているから。

というのがぼくの感想で、『涼宮ハルヒの憂鬱』を想起しながら観ていた。

孤独だから、共有したいという根源的感情

青春ロマンスらしい、みずみずしい恋愛感情もこの映画の魅力である。

この映画で描かれる恋愛感情はどういうものか。それは「誰かと何かを共有したい」という素朴な感情だと、ぼくは感じた。

ループの中にいるということは孤独である。マークは孤独にあえいでいる。

(実はマーガレットは孤独ではない。母がいるから。だから出会いの場面でマーガレットはなんだか連れない。このズレが2人のロマンスに葛藤を起こしている)

マーガレットに出会ったマークは、「君に見せたいものがある」と言って、町中で起こる面白い場面を一緒に見に行く。

その後、マーガレットも同じく、マークを川辺に連れて行き、貴重な場面を一緒に見る。

2人はそれから町中で起こる「小さな奇跡」を集めるという活動を始める。

(この活動が結果的にループを解く鍵になる。と書いてみると、すごく比喩的に響く。退屈な繰り返しの毎日を解く鍵は、小さな奇跡を注意深く集めてみることだ、というのが裏にあるメッセージだろう)

2人の間に生じる感情は、「自分が見つけた楽しみを、誰かと一緒に見たい」という欲求である。

この素朴さに、青春ロマンスらしい「みずみずしさ」の正体があると思う。

と言ってもマークの方は前へ進もうとする。

マーガレットのために宇宙セットを作り、彼女を楽しませ、部屋に招き、キスしようとするが断られてしまう。

この後半の、恋愛の紆余曲折も順当な面白さがある。学校でデートするシーンはとてもワクワクするし、互いを思いやりつつ少しずつ関係を深めていく姿はロマンスとして面白い。

でもやっぱり、この映画で特筆すべきは出会ってからしばらくの、お互いの経験を共有しようとする素朴な時間だと思う。

なぜなら、後半の紆余曲折部分は、他の世界観でもよく見られるものだけど、前半の、ただ町中で起こることを一緒に見られるだけで嬉しい、という部分は、この映画の設定ならではの物だからだ。

2人が孤独だからこそ、ただ「自分が経験したことを相手も経験する」という共有が無性に嬉しい。

この「嬉しい」という感情こそが、この映画のロマンスの最も魅力的なところだと思う。

同時に、恋愛の根底にあるのは、実はこんなに素朴な気持ちなのかもしれない、と思わせられる新鮮さがある。

葛藤は浅め

とても面白い映画だ。しかし、ドラマは浅めだと思う。この映画を見て淡白に感じる人がいれば、多分そのせいではないかと思う。

マークの問題は、他人に無関心という性格。マーガレットの問題は母の死を受け入れられないという弱さだ。

ストーリー上では、この2つの問題が解決され、最後はハッピーエンドで終わる。

ただ、いまいち浅く感じるのは、2人が成長する決定的な出来事が曖昧だからだ。

マークはどう成長するか。

最初のきっかけは、妹エマに父のことについて聞かされた場面だと考えられる。(マークはその前にマーガレットにフラれて凹んでいる)

そこで父も「行き詰まっている(stuck)」と知る。つまり、ループにハマっている自分と似た状況だと分かる。

その後、マークはマーガレットともに日付変更線をまたぐ作戦を結構する。

それに失敗したマークは、次のループで、父に書いている本(南北戦争についての研究)について尋ね、さらにエマのサッカーの試合を見にいく。その後、それまで眺めていただけだった町中の人々と積極的に関わっていく場面が続く。

この時点で、マークの「無関心」という問題は解決されている。

だが、何が決定打だったのかはいまいちハッキリとしない。

日付変更線作戦が失敗して、ダルそうに朝を迎え、なんの気無しに父に話を振ったら、その後なし崩し的に人と関わるようになっていくように見える。

だから、マークの問題はいつの間にか解決されたかのように見えてしまい、結果的にドラマが盛り上がらない感がある。

といいつつ注意深く見返すと、マークは飛行機の中で、ループから抜け出せるかもしれないという期待感を持ちながらも、町中の人々の姿を描いた絵を見て、感傷に浸っている。

マークはそこで、ループから抜け出したいと願いつつも、同時に、有り余る時間の中でも自分が町の人としっかり関わってこなかったことを反省したのだと思う。

だから、その作戦が失敗に終わった次のループからは、積極的に人々に関わっていくようになった。

そう納得することはできる。

できるけど、さすがに曖昧すぎるように思う。

そして、この曖昧さでもなんとなくストーリーとして見れてしまうのはなぜか。

それは、そもそもマークの問題がそれほど深刻な物ではなく、出来心程度の感情で解決してしまえるような問題だったからだろう。

マークの問題はそれほど深刻じゃない。家族と不仲なわけでもないし、エマの話も素直に受け入れ、事情を知れば父のこともすぐに理解できる。

マークはそもそも良い人だし、「無関心」とはいえ、町中で人々と愛想良く接する程度には社交的だ。スケボー少女に拍手を送っているから、エマの試合を応援するのもそれほど大きな変化じゃない。

マークの行動の変化は感動的に演出されている。観ているとジーンとくる場面でとてもいい。

だが同時に、マークの成長はかなり小幅であって、そういう意味ではあっさりとしている感、演出でごまかしている感は否めない。

マーガレットはどう成長するか。

実は、これがよく分からない。

もちろん、マーガレットの中に、「いつかは母の死に向き合わなければいけない」という気持ちがずっとあったのだろうということは想像できる。

では、マーガレットは何をきっかけにそうする決心をつけたのか。

流れ的にはこうだ。

ま図、マーガレットはマークと一緒にループから抜ける作戦を途中で降りてしまう。

その後、病床の母と会話し、マークを裏切ったことを後悔していると話す。母は「まだやり直せる」とマーガレットを勇気づける。

その後マーガレットは前に探していた迷子犬を見つけ、なぜかマークの友人の家に行き、一緒にゲームをする。ゲームをしながらマークと同じようにループにうんざりしている。

その後ゲームのクリアがヒントになり、ループを解く方法を思いつき、マークと一緒にループを出る。

ゲームをしている時点では、マーガレットはループから出たいと思っているのがセリフから分かる。だからこの時点でマーガレットはすでに成長し、彼女の弱さは克服されている。

問題は、どの時点でそれを克服できたのかが全く分からない点だ。

マークを裏切った時点ではマーガレットは弱さを克服できていない。ゲームをしている時点では弱さを克服している=ループを解く方法を実行できる。

この間が、どこにもなくて、マーガレットが何をきっかけに成長したのか、全く分からない。

マークの時と同様に、ここでもマーガレットの奮闘がモンタージュされ、最後はマークとのキスがロマンチックに描かれ、感動的な演出でこの辺は押し切られている。

2人の爽やかなロマンスに目を奪われている間に、ストーリーを貫く葛藤部分はおざなりに解決されて、ハッピーエンドになっていく。

そんなわけで、主要キャラクター2人とも、問題の解決がいまいち不明瞭で、感動モンタージュで押し切られている感がある。

感動的ならそれでいい、とも言える。実際、個人的にそれほど嫌な感じはしなかった。

でもやっぱり、ドラマ部分は浅いと言わざるを得ないと思う。

2人の問題も、その解決も、すごく形式的に行われているもので、内面がぼかされ、スルーされていると思う。

マークの孤独に対する絶望感もそれほど描かれないし、作戦が失敗した後もすぐ立ち直る。

この辺りの「軽さ」は、この映画の軽やかさに繋がっているだろうから、必ずしも否定はできない。

でも、しっかりとした人間ドラマを描いた映画ではない、と感じる。

それは仕掛けとして型式的にやりながら、描きたかったのは、この舞台設定で巻き起こる青春ロマンスだったんだろう。

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