映画

ハッピー・デス・デイ 2U -「死ねば解決」なんかしない。死んで努力し、決断する女子大生-

概要

前作で自分が殺される1日のループからようやく脱出した女子大生ツリー。実はループが起きていたのは同じ大学の学生が作った装置が原因だとわかる。その装置が原因でツリーはまたしても自分が殺される日に戻されてしまう。

事情を理解したツリーはさっさとループを抜けるために行動し始めるが、どうやら彼女が戻ったのは、前回と全く同じ日ではなく、別の次元の少し異なる世界だと分かる。

その次元では死んだはずの母が生きており、ツリーは元の次元に戻るよりその次元にとどまることを望む。装置を開発した学生たちと協力し、ツリーは無事殺人犯をやっつけ、ループを閉じるために行動し始める。

みんなのレビュー

高評価

  • 前作のストーリーを活かしながら、ジャンルを変え、いい意味で期待を裏切るストーリー
  • 主人公ツリーのキャラや振りきった行動がとても魅力的。かつ、他のキャラもさっぱりしていて良い気分で観られる
  • サスペンス要素、笑える要素、感動要素がそれぞれしっかりとあり見応えがある

低評価

  • ループのたびに弱るという設定や、最初にループで登場したライアンがないがしろ
  • 最後の後日談が乗れない
  • 完全にホラー映画ではなく、ジャンルがごちゃついていて期待外れ

ナニミルレビュー

オススメ度:B

良い点!

良い意味で「期待を裏切ろう!」という意志を感じるストーリーだった。

最初に画面に映るライアンが今回は主人公か、と思わせておいて実は違う。

前作を踏襲した「学内を歩くシーン」を描くことで、ループを期待させる始まり方。だが、ツリーがライアンの状況を理解することで、ループお預けのままストーリーを進行させていく。

そして「ようやくループしたか」と思えば、今度は前作の時間軸に戻ってツリーの主観に。「なるほど、じゃあライアンと協力して違う方法でループを抜けるのか」と思いきや、この次元のライアンはループを知らず、結局ツリーをメインとしてストーリーが進む。

なるほど、じゃあ前作と同じ日を違う方法で乗り切る展開なのかと思いきや、ストーリーの主眼はループを抜け出すことというより、ツリーがどちらの世界を選択するか(「失われた過去の世界」と「現実世界」)というドラマに移っていく。

前作でメインだった殺人鬼との対決は思いっきり背景に追いやられ、今作ではツリーを取り巻く人間ドラマと、どうやってループを閉じるかというSF要素をメインで描いている。

この目まぐるしい展開が起きるのが、最初の30分くらいである。

次から次に予想を裏切る展開が続き、にもかかわらず観客を置いていかないよう、複雑になりすぎないように展開を見せていく。

普通に考えて、こんな始まり方をしたら「なにを追ってみればいいのか」となりそうなものなのに、前作の設定をうまく使いながら、「そうくるか!」と楽しんで見られるように語られていく。

前作と同様、本作もドラマ部分がしっかり描かれている。

前作はループを繰り返す中でツリーの虚栄がはがれて人間として成長するドラマが描かれていた。

今作では、2つの世界とその選択を描くことで、ツリーが過去を克服し、自分の価値観を確立する形での成長が描かれる。

前作で「ループ自体」がツリーの成長を促していたのとは違って、今作ではループからの「抜け方」の選択によってツリーが成長する構造になっている。

(今作でツリーのループは、犯人捜しではなくループを閉じる装置完成のために使われ、ツリーの努力と学生仲間との友情を深めるサブドラマを描くために使われている)

「世界が分かれる」というストーリー上の設定と、「片方を選択する」というツリーの成長の描き方がしっかりとマッチしている。

(前作でも「ループ」という設定と、「繰り返しの中で大事なものを見定める」という成長がしっかりとマッチしていた。)

ここがしっかりマッチしているからこそ、ドラマ部分が不要なお涙頂戴要素にならず、メインストーリーと一緒に楽しめるのだ。

またロマンス部分も、今作はツリーの方がカーターに片思いをしている形になっており、ほかの女性と付き合うカーターを見てやきもきする感情を描いている。

そして、このやきもきがこの映画上最もアグレッシブなブラックジョークシーンになっているのもすごくよい。

とにかく、設定にせよ、ドラマにせよ、ギャグにせよ、ひとつの要素をそれだけで終わらせずほかの要素とつなげ、相乗効果で面白くしていこう、という工夫が随所にみられる。

だから映画を見ていると、「あれがここでこう活かされるのか!」「この設定でこのギャグにするのか!」というワクワク感がずっと続いている感じ。

また、感動からギャグまで、感情のふり幅も非常に広い。例えば、最も感動的な母との対話シーンの直前は、友人の浮気現場に居合わせてしまい、その男がとんでもなく間抜けという、最もバカっぽいギャグシーンになっていたりする(ここの男の「アウチ・・・」という演技が良い)。

とにかく、観客を飽きさせない、予想通りにさせない、ワクワクさせ続けるぞ、という意志と、あちこちに散らばった創意工夫がすごいストーリー。

背景に追いやられていた殺人鬼との対決もクライマックスでちゃんと活かされている。

しかも、クライマックスでのツリーの行動は、映画中盤で「自分勝手じゃないか?」とカーターに問われたことの解答になっていて、ツリーの成長をより強く示している。

さらに前作を踏まえて見ると、ラストでツリーが友人ロリに言う「I wish things could have been different(違う風だったら良かったのに)」という言葉はすごく胸に来る。

さすがに深読みだけれど、違う宇宙にいる、というこの映画の設定も踏まえて考えると、このツリーのセリフには、生きることの偶然性や多様性も感じてしまう。

前作同様、本作もとても良い作品だと感じた。

イマイチな点・・・

ループの設定(主にツリーの身体のダメージ)がおざなりなのは前回同様。だが、本作はむしろそれを皮肉ってギャグにしているようにすら感じた。

カーターが「またツリーがループすればいいんじゃないか?」と提案すると、「ループには限界があるの」とツリーがそれをはねのけるシーンがある。

これ、明らかに脚本上生じてしまう観客のツッコミを、ツリーの雑なセリフで流しているようにしか見えない。

「ツッコミたくなるのは分かるけど、これはもう、こういう設定だということで楽しんでくれ!」という作り手のメッセージに感じてしまう。

この設定の整合性をとるために余計なシーンを増やすよりは、ここは納得してもらってテンポの良さを優先したのではないか。

と、かばいたくなってしまう・・・。とはいえ、やっぱりおざなりなのは事実だ。

同様に、最初のひっかけとして出てきたもうひとりのライアン。彼は「問題が大きくなるぞ」と忠告しているのだが、問題はそんなに大きくなっていない。

ツリーに面倒が降りかかっただけで、それもループ自体は前作より対処可能な状況になっている。だからこそループ自体はわりと背景に追いやられたストーリーになっている。

冒頭のもうひとりのライアンの強烈さによって、「実は違う宇宙では大変なことになっているのでは」という引っ掛かりを残してしまっていると思う。

が、そのあたりはもう、気にしないでくれっていうことなのだろう。でも気になる人は気になると思う。

あと、母子のドラマ部分がしっかり描かれているわりに、メインストーリーとからむ学生仲間とのドラマはかなり希薄に感じる。

最低限やっているとは思うのだけど、ここの関係づくりが十分描けていない感じがすることで、終盤にかけてのツリーの要求がさすがに横暴すぎるのではないかと感じてしまうのだ。

基本的に、ツリーを救うために、ツリーの命令でみんなが動いているという形なので、みんなの方にツリーを救う動機があまりないよなぁ、と感じてしまうのだ。

その上で「ちゃんと装置を作ってよ!」と怒っているツリーを見るとちょっと引いてしまう。

その動機のなさを穴埋めしているのは、ライアンの「問題を解決するのが科学者だ!」という矜持であって、やっぱりツリーとの友人関係ではない。

そのあたりを見ても、友情部分のドラマは弱いと言わざるを得ず、そういう意味ではあのナードな学生仲間たちが、都合のいいサブキャラクターとして使われてしまっている感がある。

とはいえ、最初にライアンが主人公かという始まり方をするので、あの学生仲間たちも含め、存在感が薄くはない。その意味でも、あの始まり方はとても賢い構成だと思うのだ。

と、こういまいちな点を書いていても、ついつい擁護してしまいたくなってしまう。

良いところが良すぎて、穴はもういいかなっていう感じの映画だ。

ただ、ひとつ大きな問題点があるとすれば、前作を観ずに今作だけ観た場合、このストーリーが果たして分かりやすいのかという点だ。

ぼく自身は前作を観てしまっているので、この部分を検証できないけど、前作を知っているからこそかなり端折ってもちゃんと伝わっている部分が多いのではないかという気がする。

なので、基本的に前作とセットで観る映画だと認識する必要はあるかもしれない。

まとめ

まさか同じ設定を使いながらジャンルがここまで変わっているとは、という驚きをはじめ、とにかく予想を裏切っていく語り口がとても面白かった。前回以上にギャグも振りきっているし、細かい部分は気にせず楽しんでくれっていう潔さがある。もちろん、ずさんな脚本ということではなく、せっかくの素晴らしいストーリーを観る喜びを、揚げ足取りでつぶさせないような作りになっているということ。不謹慎なブラックユーモア満載なのに、ひどい下ネタやグロシーンがなくて、比較的どういう状況でも見易そうなのもいい。お茶の間でも観られると思うし、いい映画だ。

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