概要
イギリス・ロンドン。ショウの妹ハッティは、MI6の一員として、殺人ウイルス「スノーフレーク」を積んだテロ組織のトラックを急襲。一度は奪還に成功するが、すぐにテロ組織「エティオン」に属するサイボーグ化した男ブリクストンが現れる。
ハッティはウィルスを守るため、自身の体にウィルスを注入し、その場からなんとか逃げるが、エティオンの情報操作によって、ウィルスを盗んだ犯人に仕立て上げられてしまう。
この事件を解決するため、ショウとホブスが招集される。ハッティ、ホブス、ショウの3人はウィルスの開発者を見つけ出し、ハッティの体から安全に取り出す方法を聞き出す。ハッティを救うためには、エティオンの基地にある装置が必要だと分かり、3人は潜入のための作戦を練る。
レビューの印象
高評価
- 軽快なストーリー、楽しい雰囲気のアクション映画として面白く観られる
- 街中、敵の基地、サモアの草原と、舞台を変えながら展開される筋肉アクションに見応えがある
- 2019年現在的なテーマを盛り込んだ悪役になっている
低評価
- 車によるアクションや仲間とのアツいチーム感など、本シリーズに求めているものがなかった
- ハイテク武器の設定がずさんで、悪役の強さに説得力がない
- ストーリーが全体的にご都合主義
ナニミルレビュー
ポジティブ
「お前ら、これが見たかったんだろ!」と訴えてくるかのように、ホブスとショーのBL感溢れる友情をこれでもかと見せてくれる作品。
本作のメインは、車でもなく、アクションでも悪者退治でもなく、2人のお互いに対する言葉や仕草であると言っても過言ではない。
ハッティの命の危機や、テロリストによる凶悪犯罪などシリアスな展開がありながらも、シリーズの中でも一際コミカルでおちゃらけた雰囲気の一本になっている。
たしかに、ショーやホブスはシリーズの中でも比較的最近登場したキャラクターながら、それまでのメインキャラクターたちに対して良い距離感にいるキャラクターだった。
ホブスは権力側ながら、真実のためなら権力に追われるのもいとわない気持ちのいい男で、ショーは最強の敵役が味方になる、いわゆるベジータ的ポジションにいるキャラクターだ。
そして、一方は公権力、一方は犯罪者である2人は犬猿の仲であり、そのやり取りは見ていてワクワクするものだった。
その心地よい関係性をクローズアップしたのが本作。口の悪い男2人がいがみ合いながらも協力するバディムービーとして、とても小気味好い作品になっている。
戦車や潜水艦、空飛ぶ車など、さまざまな乗り物アクションを見せてきた本シリーズ。今回は何を見せてくれるのかと期待していると、サイボーグが登場。
本作のアクションは、主役2人の特性に合わせるように、銃撃戦やカーアクションより肉弾戦がメインになっている。(もちろんカーアクションや銃火器戦もあるが、クライマックスではない)
このアクションを描くのに、悪役のハイテク設定はうまく機能している。
クライマックスでは、そのハイテク設定を活かし、ハッキングで銃火器を使えなくして、大人数での殴り合いの場面へとつなげている。
さらに、熊でも素手で殺せそうなホブスとショーが、2人で協力してギリギリ倒せる相手役として、機械によってパワーアップしたブリクストンは最適だった。
「1人では勝てないが2人なら勝てる」というバトルシーンの展開も、単にパワー押しではなく、闘い方の工夫によって描かれていて良い。この闘い方が、一発殴られる前提の消耗戦として描かれているのもアツかった。
映画全体が描いている2人のバディ感が、ラストのバトルでしっかり結実している。しかも「俺が殴られる隙に、お前が殴れ」という献身的な闘い方なのも胸アツ。最後プロレスみたいになってたけど。
ネガティブ
ここ数作、「今回はそうきたか!」と驚かされるのが本シリーズの魅力だった。かなり荒唐無稽ながら、斬新なカーアクションシーンで観客を驚かせてやろう、という感じがしていた。
本作も、もちろんアクションシーンは悪くない。悪くないのだが、あっと驚くものでもない。
といっても、これはハードルが上がりきった状態ではしかたない気もする。
本作ではクライマックスは肉弾戦であり、そして肉弾戦映えする2人を主役にし、そして2人の関係性の楽しさでストーリーを引っ張っている。
そういう意味では、シリーズの流れも踏まえつつ、ここ数作とは違う方へ舵を切って、本シリーズの別の魅力(仲間同士の関係性)に焦点を当てた良い続編だと思う。
がしかし、やはり斬新な乗り物アクションを期待して観た手前、少しがっかり感はある。
また、敵がハイテク集団ながら、戦いが比較的普通なのも残念。バイクでトラックの下をくぐるシーンなど、「おっ」というシーンがあるにはあったが、でも、そのくらいだ。
アイデアとしてサイボーグは悪くないけど、ショウとホブスとのバランスを取るために人間離れした性能にはできず、宝の持ち腐れになった感は否めない。
ショウと妹ハッティとの関係は、映画冒頭からクライマックスまで続くドラマの主軸の1つなのだが、ここが弱く感じた。
偽情報によってハッティはショウを恨んでおり、ストーリーを通してその誤解が解けて仲直りするという展開になっている。だからこそ、ハッティは序盤ショウの協力を拒んでいる。
だが、この2人の事情が分かりにくい。ショウを恨んでいるハッティの感情がいまいち理解できないまま序盤のストーリーが進み、3人は共闘を始めてしまう。しかも、ショウとハッティは誤解が解ける前からそれなりに仲良く会話しており、そこまで軋轢があるようには見えない。だから、誤解が解ける瞬間も、ドラマ的なカタルシスがない。
ハッティというキャラクター自体は魅力的だと思ったので、彼女の影が薄いのは残念。
むしろ、ラストにようやく登場するホブスの家族との葛藤のほうが、性急な展開ながら胸熱感があった。
また、これはこの映画のメインであるから仕方ないのだが、さすがにショウとホブスの憎まれ口合戦が多すぎる。さすがにもういいわ・・・、となるほど多い。
飛行機の中での口論なんか、ほんとうに半分で良かった。
その後、あまりにもずさんに登場する新キャラクター:ディンクリー。恐らく次回作以降で活躍させるための顔見世なのだろうが、あまりにもテキトーすぎる。
また武器を調達できる理由付けのために登場するロシアの女ギャング団や、ロンドンにいたり敵基地にいたり、都合よく動き回っているウィルス開発者など、冷静に見始めると、ご都合主義的な点はなかなか多い。が、そんなことを気にして見るようなシリーズだったっけ、とも思える。
まとめ
80点以上のアクション映画であることは間違いない。心地良いバディ感、派手なアクション、わかりやすい敵、アツいクライマックス。退屈せず最後まで観られる。
が、本作の魅力である斬新な乗り物アクションは今回は控えめ。2人の主人公の関係性を主軸としたややコミカルな仕上がりで、ハイテクな敵が出てくるわりには、わりと普通の銃撃戦・肉弾戦・カーアクションに収まっている。
ワイルド・スピードシリーズに、アメコミ物のテイストを入れた感じの作品だ。
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