映画

ジュラシック・ワールド/炎の王国 -火山噴火、恐竜オークション、人工生命-

概要

恐竜たちの住むイスラ・ヌブラル島の火山活動が活発化。このままでは恐竜が再び絶滅してしまう事態になる。

ジュラシックパーク創設者ジョン・ハモンドの親友ロックウッドは、元ジュラシックワールド従業員で恐竜保護の活動をしていたクレアに、恐竜保護の資金提供を申し出る。

クレアらは、ロックウッド財団の経営者ベンジャミンが雇った探検隊と共に恐竜の保護を試みる。しかし実はベンジャミンは恐竜を捕まえてオークションにかけるため、クレアたちを利用していただけだった。

探検隊はクレアたちを置いて島を脱出しようとするが、クレアたちは何とか探検隊の船に忍び込み、そのままロックウッドの屋敷へと向かう。

ベンジャミンの犯行を知り怒ったロックウッドはベンジャミンに殺され、ロックウッドの孫娘メイジーは、ベンジャミンの本当の姿を知って屋敷の中を逃げ惑う。

みんなのレビュー

高評価

  • 過去作を彷彿とさせる島のシーンやアクションシーンなどのファンサービスが嬉しい
  • ラストの展開と、キャラクターたちの葛藤に考えさせられた
  • シリーズの中で新しい幕開けとしてワクワク感があった

低評価

  • 時事問題、次回作への布石、過去作オマージュなどに追われ、本編自体のストーリーが疎かになっている
  • ご都合主義的展開が多く、既視感のあるシーンばかり
  • 恐竜が脇役になり、悪役にも魅力がない

ナニミルレビュー

オススメ度:C

こんな気分の時オススメ:恐竜パニック映画が観たい時。生命倫理をモチーフとした作品が観たい時。

全体的なレビュー

脚本づくりが火の車だったのではないかというくらい、なんとか着地させた感のあるストーリー。

ツッコミどころも多く(特に、敵陣で主人公たちが自由に行動できすぎている違和感は大きいし、恐竜の設定も演出優先でリアリティがない)、1つのストーリーとしてのまとまりも薄い。

ただ、作り手の思いを忖度しながら観れば、やりたいことや言いたいことは分かる。でもやっぱりいろいろマズイよね、というのが素直な感想。

端的に言って、要素を詰め込みすぎている。そして詰め込んでいるわりに全て既視感がある。というのも、本作で起こる出来事で、シリーズ過去作にない展開は、恐らく火山の噴火と、ラストシーンでのある展開(次回作への布石)以外ないと思う。つまり、中盤からクライマックスまで、お馴染みの出来事しか起きないし、恐竜アクション的にも過去作を上回っているわけでもない。

ハンターたちとの恐竜探しや恐竜ビジネスは2作目で、島からの脱出は3作目。新種の開発やラプトルとの友情物語は4作目でやっている。

過去作のストーリーをなぞりながら、ヌブラル島を燃やして、『ジュラシックパークシリーズ』を全く新しい作品に転換するための象徴的な作品にしよう、という狙いがあるのだと思う。

そういう意味では、この既視感満載のストーリーは理解できる。理解できるが、新鮮味がないのは事実。

 

映画の雰囲気としても、見心地がいいとは言い難い。

前作『ジュラシック・ワールド』も、要素てんこ盛りの大味なストーリーだったが、コミカルな雰囲気のパニック映画だったので、大味なりの楽しさがあった。

本作も、中盤までは前作的なノリがあって、パニックコメディとして、なかなか良かった(そのお陰で細かいツッコミどころはスルーして楽しみやすい)。

だが、クライマックスで決定的な行為を担う少女メイジーのキャラクター設定が想像以上に重いということが判明し、「えぇぇぇえ!」となる。いや、こんな大味映画の一要素としてサラッと放り込んでいい設定じゃないだろ!

さらに、その後もハラハラパニック展開は続き、メイジーの葛藤を丁寧に描くことなく、往年のスプラッターホラーパロディをやっていたりする。もう怖がらせたいのか笑わせたいのか考えさせたいのかよく分からん。

メイジーはかなりのキーパーソンなのだけど、実はストーリー的にはそれほど上手くメインストーリーに溶け込んでいない。クレアたちが恐竜を救おうと頑張るストーリーと、メイジーのストーリーはほぼ分離している。メイジーはベンジャミンの正体にいち早く気づくが、その情報がストーリーを動かすわけでもない。途中でメイジーの設定が語られた後も、特にメインストーリーにツイストがかかるわけでもないし、話の重心がメイジーに移るわけでもない。

ストーリーは分離したままアクションだけが続き、クライマックスでメイジーが急に決定的行為をする。メイジーの葛藤をちゃんと描いていないから説得力が薄い。さらに、最後の最後で突然メイジーがメインストーリーに絡んでくるせいで、展開としてもモヤモヤが残る。

後日談を見ると、なるほど次回作の世界観を作るためには、この展開でなければいけなかったのか、と妙な納得感はあって、「作り手の苦労は分かるが、無茶苦茶だな」という感想を持つ羽目になる。

火山噴火シーンの迫力

ヌブラル島の火山が噴火しマグマが流れてくる中、キャラクターたちが全力疾走で島からの脱出を目指す中盤のシーンは、この映画最大のアクション的見ドコロになっている。

クライマックスでも恐竜たちが暴れる見せ場はあるのだが、恐竜に襲われるシーンは全体的に、前作『ジュラシック・ワールド』に見劣りする。

アクションに関しては、この島でのシーンが最大の見せ場だ。

ヌブラル島のシーンはややコミカルな演出でライド系の楽しさがあり(前作っぽい雰囲気)、リアリティはともかく、ドキドキハラハラで映像的に面白く見られる。

オーウェンが麻酔を撃たれ、上手く動けないままマグマを必死に避けるシーンがとても良い。

成長するキャラクターの役割を担っているフランクリンのへなちょこぶりも面白いし、『ジュラシックパークシリーズ』ではお馴染みの気が強い女性キャラクターとしてのジアも頼もしく描かれている。

過去作を見ていると「これはあのシーンのオマージュかな」と思うシーンがあったり、前作に出てきた乗り物が出てきたり、そういうサービス展開もある。

そうやって過去作に思いを馳せながらアクションシーンが続き、最後にヌブラル島が溶岩に覆われ、さらにブラキオサウルスが象徴的に炎に包まれるシーンは、演出的にもストーリー的にも、とても良い流れ。

一難去ってまた一難のお手本

本作は、スリラーの演出として、一難去ってまた一難、という演出が多用されている。

冒頭の島からヘリで脱出するシーンからそれは始まる。

恐竜に追いかけられる男。ヘリからハシゴを垂らしながら男を助けようとする仲間たち。男はどうにかハシゴを掴むが恐竜もハシゴに噛み付く。仲間たちは仕方なくハシゴを切り離そうとし、もうダメかと思われたが恐竜がハシゴから落ち、男は助かる(一難去る)。そしてホッとした矢先、海中から現れた恐竜にハシゴの男はパクリと食べられる(また一難)。

この冒頭のシーンはとても面白い。

海底で恐竜の骨を採取する潜水艦。その背後に現れる恐竜のシルエットを見せ、恐竜のスケールを強調。木の陰から男に迫る恐竜を、雷の光で一瞬だけ見せながら、「後ろ!後ろ!」と観客にツッコませる。

ベタだけど楽しい演出で映画のワクワク感を盛り上げてくれる。

一難去ってまた一難演出は続く。 

火山噴火の中、クレアとフランクリンがハシゴを使って施設から脱出するシーンでも、まずはハシゴを登り「助かった」と思わせ、その後、ハシゴの留め金が外れてスルスルと下に落ち、恐竜に睨まれる、という演出にしている。

そして、命からがら施設から脱出してホッと一息つくと、火山が爆発し(ここでクレアが「Holy Shit!」と漏らす顔が最高)、「逃げろー!」と叫びながらオーウェンが走ってくる。

乗り物を見つけ乗り込んだら、恐竜に襲われ、なんとか恐竜を逃れたらマグマがどんどん迫ってきて、どうにか崖から海に落ちて逃げ切ったかと思えば、乗り物に閉じ込められる。

とにかく島のシーンは、一難去ってまた一難の連続でアクションが作られており、ここのライド感は素晴らしい。

キャラクターたち(特にフランクリン)の言動をコミカルに見せながら、でも最後はブラキオサウルスの悲しい映像で終わる。

アクション的にも感情的にも起伏があって、とても良いシーンになっている。

さらに、本作のメインモンスター:インドラプトルが脱走するシーンも同じ。

まず探検隊の隊長がインドラプトルに襲われ食われる。その後、インドラプトルはエレベーターで逃げようとするセレブたちを襲おうとする。ギリギリでエレベーターが締まり、助かったセレブたちはホッと息をつく。しかしインドラプトルの尻尾がエレベーターのボタンを壊し、エレベーターの扉が開く。

ラストでインドラプトルを倒すシーンも、クレアとオーウェンの連係プレイで「やった!」と思わせ、しかしインドラプトルがしぶとく復活し、それをラプトルに助けられる、という演出。

こうして、緊張、安堵、また緊張、という演出のアクションシーンが繰り返される。

これはベタなんだけど、なかなか見応えがあって面白い。特にセレブたちがエレベーターで食われるシーンは、金持ちに対する意地悪な視線も込みでコミカルで楽しいシーンになっている。

メイジーについて(大いにネタバレ)

本作は、「恐竜を絶滅の危機から救う」というメインストーリーと、「メイジーとロックウッドの謎」というサブストーリーでできている。

ロックウッドは、恐竜を作ったクローン技術を転用して、死んだ自分の娘のクローンとしてメイジーを作る。恐らく、その罪の意識がクレアに協力するモチベーションになっている。

序盤からメイジーの母親の写真がミステリー要素として描かれており、ロックウッドの死をきっかけにメイジーが写真を手に入れ、自分と母親が瓜二つなのを知る。さらにダメ押しで、ベンジャミンがメイジーはクローンなのだと話す。(ベンジャミンが話すなら写真のストーリー的価値は何?と思わずにはいられないけど)

自分をクローンだと知ったメイジーは、恐竜への共感から、恐竜を死なせるか野に放つか、という選択を突きつけられた際、恐竜たちを野に放つ。そして、人類と恐竜が同じ大陸で暮らす世界が幕を開く。次回作楽しみ、という流れ。

ラストで、メイジーが恐竜を野に放つのは、倫理的にかなり危うい行為だ。恐竜を救うことによって、人間社会に危険を放っているから。

このラストでは、「人間が勝手な都合で作った恐竜を、また人間の勝手な都合で見殺しにするか、もしくは、人間の都合より恐竜の命を優先するか」という究極の選択が問われている。

クレアはその決断をすることができず、代わりにメイジーが決断を下す。

この重い決断を下すキャラクターとしての説得力を持たせるために、メイジーを人間と恐竜の間の存在であるクローン人間として描いているのは理解できる。

メイジーはクローンだからこそ、恐竜に共感し、人間のクレアにはできなかった決断を行う。

そして、倫理的に危ういこの行為も、クローン人間のメイジーがやったことであれば、それなりに許されるというか、観客としてもメイジーの気持ちを汲むことができる。

だから、作り手の意図はよく分かる。

話の筋としても、メイジーの設定がロックウッドの動機にもなっていたり、ちゃんとストーリーに組み込まれているのは分かる。

しかし、やっぱりメイジーの存在や行為には違和感がある。

これは単純に、「クローン人間」というめちゃ重いモチーフに対して、メイジーというキャラクターの掘り下げが浅いからだ。

メイジー自身の葛藤も大して描かれず、メイジーの事実を知ったクレアやオーウェンも特に悩んでいない。

メイジーがクローンだと明言された直後、メイジーがパニックになっているような演出があるのだが、そこも、クローンだと知ったショックのせいなのか、恐竜に急襲されてビックリしているのか曖昧になってしまっている。

クローン人間を作ることは、恐竜を野に放つこと以上に倫理的に難しい問題だ。だから優先順位がおかしいというか、クローン人間問題を放っておいて、最後の決断だけちゃんと説得力を持たせようとしても、さすがに無理がある。

こんなことを言っても仕方ないのだが、正直、映画後半は、過去作の焼き直しをするくらいだったら、メイジーを巡るドラマにした方が良かったのではないかと思ってしまう。

とにかく、映画全体の大作・大味・ワクワクアクション映画のトーンの中から、メイジーというキャラクターが浮いている。キャラクター自体というか、クローン人間という設定が浮いている。

でも前述したように、その設定になっている意味はわかる。

そういうこともあって、なんともモヤモヤする。

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