映画

ジェイソン・ボーン -父の死とCIAの腐敗に迫るボーン-

概要

祖国を遠く離れ地下格闘技でその日暮らしをするボーン。彼のもとに、元CIA局員ニッキーが現れる。ニッキーはCIAのサーバーをハッキングし、ボーンが巻き込まれた過去の事件についての情報をつかんでいた。

一方でCIAは、ハッキング時にニッキーを逆探知し、口封じのためニッキー、ボーン共に暗殺しようと画策する。逃げる途中ニッキーはボーンの目の前で殺され、ボーンはニッキーの残した情報を元に、ボーンは各国を飛び回りながら過去の秘密に迫る。

ボーン暗殺に躍起になる長官デューイに違和感を持つCIA局員ヘザーは、ひそかにボーンに協力。彼の逃走を助け、アメリカへの入国を助ける。ボーンはデューイの出席するイベントを狙って着々とデューイに迫っていく。

みんなのレビュー

高評価

  • 緩急のついた演出で緊張感が途切れない
  • 悪玉権力と孤高のスパイが戦う王道な筋書きと、格闘、銃撃戦、カーチェイスとアクションシーンをしっかり描いた良作
  • シリーズファンが安心してみられる面白さ

低評価

  • シリーズ過去作との類似点が多く既視感があり、展開も単調で意外性がない
  • ボーンシリーズの渋さが弱まり、普通のアクション映画になっている
  • アクションに派手さはあるが、カット割りが細かく見にくい

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:王道のサスペンスアクションが観たいとき。静かで渋めなアクション映画が観たいとき。

良い点!

まず『ボーンシリーズ』を観ていなくても、楽しめる作品になっている。実際、ぼくはこれが一作目だと勘違いして観てしまったが、映画のストーリーは楽しめた。

また、セリフの量を抑え、しっかりアクションで語っていこうという作り方には好感が持てた。

特に導入の30分は、わかりやすい説明シーンがない中、アクションシーンを連続しながら、少ない会話で状況や人物の関係を観客に理解させていく。

断片的にしか情報が明かされないので、観客は必死に事態を把握しようとし、アクションを追いかけながら情報を整理する。集中を要するので一気にストーリーに引っ張り込まれる感覚がある。(でもちょっと疲れる。特にぼくのようにシリーズについての前知識なしで観ると・・・。)

なぜこの少ないセリフでの進行が可能かと言えば、冷静に見れば事態がかなりシンプルだからだ。

過去の事実を突き詰めたいボーンと、それを阻止したいCIA長官。2人の対決の舞台(イベント)を導くためのサブキャラとして、セキュリティ会社アーロンと、長官の部下ヘザーが描かれている。

とてもわかりやすく悪役、対立軸、協力者、ライバルを配置している。面倒なロマンスなどもなく、この1つの対決で最後までストーリーを描いている。

シンプルな状況を描いたうえで情報の出し方を工夫しているから、集中はさせるが混乱はさせない。そしてシンプルなストーリーでありながら、複雑な状況を描いているような面白さを観客は感じられる。

また、ストーリー全体だけでなく、人物の見せ方も上手い。

例えば、ライバルのアセット登場シーンでは最小限の会話とその後の彼の殺人のみで彼の異常さを物語っているし、ベンチャー社長とその部下のちょっとした会話で、のちの部下の裏切りに説得力を持たせている。部下ヘザーの裏をかく長官の狡猾さも無線でのやり取りを通してスマートに描かれている。

アクションやサスペンスの進行と共に、信頼、裏切りなどの人間関係と、そこにいたる布石が無駄がなくちりばめられている印象。多少の説明的な会話はあるものの(アセットが過去に受けた苦痛を説明するシーンなど)、退屈するほどの量ではない。

アクション映画として、しっかりアクションと共に状況を展開させる、いい意味でオーソドックスな良作になっている。

またデモに紛れるアクションシーンも今っぽくて面白かった。たしかにここで会うのが一番見つかりにくいだろうというストーリー上の説得力もありつつ、デモの中にいるような感覚を味わえ、かつアクションとしても見応えがあって、新鮮な面白さがあった。

そういう意味でも、しっかり「アクション映画」をやっている一作。

イマイチな点・・・

王道の面白さがあるアクション映画だが、では何か突出した面白さがあるかというと、正直なかった。

面白いのだけど、何か残るものがあるかと言えばないし、「ここが本当にすごかった」と人に話したくなるほど突出した推しポイントがあるとも言い難い。

特に、ドラマが浅いと感じた(これはぼくがこのシリーズ未見であるせいかもしれないので、シリーズを観れば見方が変わるかもしれない。)。

一応、父の死に対する憤りがボーンの動機になってはいるが、そこで語られる事件や父に対する思いは、かなり形式的なもので、納得できなくはないが、深く感情移入するほどではなかった。

良くも悪くもストーリーがシンプルであり、ここでのボーンの心情もそれに合わせてシンプルになっているという感じ。ここで父に関するドラマを描きすぎると話がややこしくなってしまうので、とにかく、「父の敵を討つ息子」というシンプルな構図を保っている印象。

また、協力者のヘザーがボーンに賭ける心情も説得力がない。ヘザーの行いはかなりの犯罪行為だと思うのだが、せいぜいボーンに関する書類を読んだくらいで、あそこまでの行動に出られるだろうか。

ヘザーのボーンに対する手助けがあまりにも軽々しく感じ、これによってヘザーという人物の重厚感が消え、単にストーリー上必要だからそこにいるだけという人間に見えてしまった。

ボーンの命を狙うアセットもそうで、過去にボーンのせいで酷い目にあった、という情報は明かされるのだが、それ以上の内面はなく、単に「暗殺者」として登場している。

長官の狡猾な感じは良いし、野望と倫理観の間で揺れるアーロンは最低限の葛藤を描けていると思うけど、主要人物ではない。

メインであるボーン、ヘザー、アセットの動機や内面が薄っぺらいことで、どうしてもドラマは浅く見えてしまう。アクション映画として潔いとも言えるが、それによって「そこそこ面白い作品」を超えられていないのかもしれない。

また、一応ボーンの過去と並走して、CIAによる監視システム導入の阻止もサブ要素として流れている(わざとらしく「スノーデン」の名前も登場)。

が、こちらもあまりにも形式的な話にとどまっているので、一般常識的な危機感しか感じられず、ストーリー的な「絶対阻止しなくては!」というハラハラ感にはなっていない。

なので、全体的に動機不全というか、個々のアクションやサスペンスとしてはとても面白いのだが、なんかこう、ずっしりとくるものが何もないな、という感じがしてしまうのだ。

まとめ

決して悪くない、渋い雰囲気のアクション映画で、2時間しっかり楽しめる作品になっている。しかし、真新しさや深いメッセージ性を感じる作品ではない。人物設定や動機、善悪など、全体的に形式的で、その形の上でうまくアクションシーンが流れているという感じ。

レコメンド作品

ザ・シューター/極大射程

権力者に濡れ衣を着せられた男の復讐劇を描いた作品

アウトロー

流れ物として生きる男が不可解な事件の黒幕を突き止めるアクション映画

JFK

不可解な顛末をたどったJFK暗殺事件。その謎に迫る地方検事の奮闘を描く作品

メカニック

完璧主義な殺し屋の活躍を描く痛快なアクション映画