映画

フレンチ・ラン -SNS、フェイクニュース、デモを扱ったアクションバディムービー-

概要

パリのスリ師マイケルは、不運にもテロのために用意された爆弾を盗んだことで、テロリストとして指名手配されてしまう。

CIAのブライヤーはパリ警察とは別にマイケルを追い、マイケルがただのスリ師であることを突き止める。ブライヤーはマイケルと協力し、爆弾を運んでいた女性ゾーエを探す。

真相を追っていくと、これが単純なテロではなく、組織ぐるみのある計画の一部であることが分かっていき、ブライヤーの上司はその組織に殺されてしまう。

ブライヤーは1人で組織を倒すために行動し始め、マイケルとゾーエもブライヤーに協力するため立ち上がる。

みんなのレビュー

高評価

  • オーソドックスなストーリーやキャラクターを使って、現代的モチーフを描いている。気楽に見られる娯楽アクション映画ながら、それなりに考えさせられる
  • スリ師というキャラクター設定が活かされた展開が楽しい
  • キャラクター同士の関係が、ベタベタし過ぎておらず、小気味よい

低評価

  • ベタなキャラクターと展開で、ストーリーに新鮮味がない
  • 設定も展開も非現実的過ぎて、話に乗れない
  • せっかくのバディムービーなのに、アクション的にもドラマ的にも2人の関係が薄い

ナニミルレビュー

良い点!

まさに凸凹コンビのバディムービーとして面白い。人種も、体格も、職業も、性格も真反対。ただ、はみ出し者という点だけが共通点。

マイケルがスリ師であるという設定が、最初から最後までしっかり活かされているし、正義感のある諜報員のブライヤーが、セコいスリ師のマイケルと少しずつ信頼関係を築いていく展開も良い雰囲気。

また現代的なモチーフを扱った組織犯罪の計画自体も面白いし、巨悪を描きながら、最後は気軽なアクション映画として勧善懲悪的にスッキリ終わっているのも良い。

イマイチな点・・・

「この2人、パリ出禁。」というサブタイトルが付いているが、それくらい街中での振る舞いが雑。

真面目に見ていると「いくらCIAでもこんなことしたら普通に大問題なのでは」とツッコまずにはいられないアクションシーンが目白押し。普通に一般市民や家屋が巻き込まれていたりする。

しかしそういうリアリティを追求した映画ではないのだと割り切れば、楽しいアクション映画として納得できるかもしれない。

ただ個人的に、主役2人の関係が始まる尋問シーンは、ブライヤーが簡単に銃をマイケルに向けすぎていて、逆にプロフェッショナル感がなかった。

スリと諜報員のバディムービー

正義感が強く有能なCIAエージェントのブライヤーと、その日暮らしの凄腕スリ師マイケルが打ち解けていく展開がバディムービーとして面白い。

ブライヤーとマイケルは、最初は追う側と追われる側の敵同士。

マイケルを捕まった後、全体的に立場が上のブライヤーが、マイケルの有能さを認めていき、最後にはマイケルがブライヤーのために行動する、という流れで2人の信頼関係が醸成されていく。

最後にブライヤーが身を呈してマイケルを守り、マイケルも逃げるチャンスを捨て、ブライヤーのために行動する展開がアツい。

警察よりも早くマイケルを捕まえたブライヤーは、マイケルを尋問し、彼が不運なスリ師であることを信じる。これが2人の信頼関係のきっかけである。

尋問中にテロ組織の男が訪ねてきて、マイケルの姿を見るや否や銃撃を始める。

マイケルはこの銃撃戦の隙をついてブライヤーの元から逃げるが、組織に追い詰められたところをブライヤーに助けられる。

マイケルにとってブライヤーは、自分を捕まえる厄介者であると同時に命の恩人である。同時にブライヤーにとってマイケルは、捕まえる相手でありながら捜査に協力してくれる仲間になる。

爆弾を運んでいたゾーエの隠れ家を探す際、マイケルのスリの腕を活かして情報をゲットする。

こうして、2人はお互いに自分の強みで相手に貢献するバディ関係になる。

ゾーエもまた、自分の状況を察してくれたブライヤーの仲間になる。

ラストでは、ピンチに陥ったブライヤーのために、活動家のゾーエがデモ隊を扇動する。それにマイケルも協力し、2人でブライヤーを助ける。

ブライヤーは手に負えないほどの悪に敢然と立ち向かい、2人はそんなブライヤーを助けるために行動する。

最初は敵対関係の3人だったが、ブライヤーが2人の話を聞いて相手を信用したことから、事件を解決する仲間になる。

世間的には不信感が蔓延してデモが勃発する中、3人の信頼関係が頼もしく描かれている。

細かい場面だけど、ゾーエの隠れ家へ向かう2人のやり取りは、バディムービーとしてかなり良い雰囲気に仕上がっている。

マンションの中から出てきた住人ににこやかに挨拶をするブライヤーを見て「笑うと別人だな」と軽口を叩くマイケル。

エレベーターに乗り込み、無表情でまっすぐマイケルを見るブライヤー。マイケルは気まずそうにチラチラとブライヤーを見ながら、ためらいがちに「俺に銃は?」と聞く。それをブライヤーは完全無視する。

コミカルで、かつ2人の力関係が示されながらも、マイケルとブライヤーがだんだんと打ち解けてきている感じが上手く表現された素晴らしいシーンになっている。

スリのテクニックが大活躍

マイケルのスリ師という設定を、映画序盤からラストまでしっかり活かしているのが上手い。

序盤でマイケルは、裸のモデルを使ってスリを行う。

この一件はマイケルの凄腕ぶりを示すシーンでありながら、マイケルと知り合いの古物商との繋がりを見せたり、このモデルがのちにマイケルの情報を警察に流す、という展開に繋がっている。

そして当然、マイケルはスリ師であったがゆえに、この大きな組織犯罪に巻き込まれてしまう。

ブライヤーがマイケルを捕まえ、「俺から財布をスってみろ」という尋問の場面。

ここでマイケルが説明するスリのテクニックは、進行中の組織犯罪の手口を暗示しており、ブライヤーが事件の全貌を理解するときに、このスリのテクニックから連想して理解している。

そしてゾーエの隠れ家を探すときにも、マイケルのスリが見せ場として描かれているし、ラストで犯人のポケットから盗難品を奪うのもマイケルだ。

情報を集め推理しているのはブライヤーだが、場面場面でマイケルのスリのテクニックが上手く生かされており、マイケルがいなければ解決は不可能だっただろう、という説得力がちゃんとある。

SNSを巻き込んだ犯罪計画(※ネタバレ含む)

ブライヤーが追い、マイケルとゾーエが巻き込まれた爆弾事件は、実は犯罪計画の一部でしかない。

その犯罪計画は、ネットで誤情報を流してデモを扇動し、その混乱に乗じて銀行から暗号通貨を盗むというもの。

現代的なモチーフを混ぜ込みながら、気楽に見られる楽しいアクション映画になっている。

ブライヤーたちは、この爆弾テロの犯人を追いかけているのだが、途中で、爆弾事件が陽動の1つであることに気づく。

ブライヤーたちの捜査と並行して、ネットにばら撒かれた映像によって市民の中に警察に対する怒りが広がる様子がサブストーリーとして描かれている。

その映像は本当の映像ではなく、警察官たち自身が演技をして、それをネットに流している。つまり、わざと自分たちが悪者になるような映像を流しているのだ。

なぜそんなことをしているのか。

実は組織犯罪をしているのは悪徳警官たちで、自分たちの権限を使って、市民の中に対立を煽り、デモを起こさせる。

怒りが最高潮に高まったところで、「銀行を襲え」というメッセージをネットで拡散する。それに応えた市民たちは銀行前に集結。その悪徳警官たちが銀行の警護の任に就き、そこで堂々と銀行から暗号通貨を盗む、という計画なのだ。

つまり、この悪徳警官たちは、自分たちの法的な立場、情報操作によって生み出した市民の怒りとデモを利用して銀行強盗を行う。

結局はこのデモによって計画が失敗するという皮肉な展開になってはいるのだが、フェイクニュースが吹き荒れる現代に、それを利用した銀行強盗をモチーフに描いている点はとても面白い。

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