映画

ゾンビーワールドへようこそ -他人の目より親友との絆-

概要

高校生になってもボーイスカウトを続けているベン、カーター、オギーの3人。オギーはスカウトに夢中だが、カーターは思春期真っ盛りでダサいスカウトを辞めたがり、ベンもカーターに言われてスカウトを辞めることを考えている。

あるキャンプの日、ベンとカーターは夜中にスカウトの活動から抜け出し、上級生が主催するパーティーに出かけようとする。それに気づいたオギーは、2人が自分が裏切ったことに怒り、3人の絆にひびが入ってしまう。

オギーに対して罪悪感を抱きつつも、2人はパーティーへ参加するため街に繰り出す。しかし、そこには人っ子一人おらず街の様子がおかしい。2人はストリップクラブに忍び込むが、そこでゾンビに襲われる。

ピンチになった2人を、そこのウェイトレスで同じ高校出身のデニースが助ける。その後、逃げ込んだ警察署でオギーとも再会し、4人は避難場所を探して動き出す。

みんなのレビュー

高評価

  • アメリカ青春コメディにゾンビを掛け合わせたストーリーが面白い
  • 仲良し3人組の男、セクシーとキュートを体現するヒロイン2人、青春物的な下ネタギャグに加えて、ゾンビを使ったギャグもあり、オーソドックスな面白さを的確に抑えた、バランスの良いエンタメ作品に仕上がっている
  • ふざけたストーリーながら、思春期の自意識、友情の回復、人を助ける正義感など、ドラマがしっかり含まれている

低評価

  • ゾンビものを期待すると、青春要素が多すぎるし、ホラー映画としての恐怖感も薄い
  • 下品な下ネタが嫌い
  • スカウト3人それぞれの個性を使った活躍が少なく感じる。メイン1人以外に添え物感がある

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:おバカコメディのゾンビ映画が観たい時。青春友情ストーリーが観たい時。

良い点!

冒頭のウィルス拡散のきっかけを描くシーンから完全にふざけており、映画のトーンをよく表している。

グロテスクな描写はしっかり描きつつも、あまりリアリティはなく、恐怖や不気味さというよりドタバタな面白さの方に回収されている。なので、ホラーが苦手な人でも問題なく見れそう(ただ、グロいことはグロい)

いわゆる童貞喪失を目指す思春期男子の青春友情コメディに、ゾンビというジャンルをを上手く重ねて、エログロ+悪趣味な描写を加えながら、胸熱で笑える作品になっている。

ゾンビ映画としても、銃をぶっ放すゾンビが出てきたり、歌を歌うゾンビが出てきたり、猫ゾンビに舐め舐めゾンビなど、多様なゾンビを登場させていて、それも面白く見られる。

ゾンビ物と青春友情物を上手くミックスし、ライトなスリラーコメディとして、最後まで楽しく見られる作品になっている。

イマイチな点・・・

ラストで3人が大活躍するシーンは、3人が人を救っているという状況がもっと分かりやすければ、もっと熱いシーンになっていたかと思う。

現状だと、パニックの中にむやみに飛び込み、無策にゾンビを殺しまくっているだけになっていて勿体無い。もうちょっと「体を張って人命救助をしており、そのためにゾンビを殺している」というヒロイックさが分かりやすく描写されていると良かった。

一応、最終的には人を外に避難させるシーンがあるけど、かなり後手後手感がある。ここは「スカウト」という特性を見せつけるシーンなんだから、最初から手際よくカッコ良く見せて欲しかった。

あと、個人的に最後のベンの恋の成就には違和感があった。「そっちじゃないだろ〜」と思った。

3人の友情

思春期真っ盛りに突入した幼馴染3人の友情が、この映画ではかなり肝になっている。

ゾンビ映画に無理やり取って付けたような青春ドラマをぶち込んだというテキトーさはなく、この3人のドラマとしてだけ見ても、ちゃんと胸熱に感じられるぐらいちゃんと描かれている。

むしろ、3人の友情物語を描くために、背景としてゾンビの襲撃を描いていると言っても過言ではないくらい、青春ムービーとしてきっちりしている。

「スカウト」というのは、日本人の僕でも「少年がやるもの」というイメージがある。

実際、この映画内でもそう描かれていて、「高校生にもなってスカウトなんて恥ずかしくてやってられない」というのが、スカウトを辞めたいカーターの心情だ。

これはわりと感情移入しやすい心情だろう。誰でも、年相応に何かを卒業した経験はある。

しかし一方で、オギーはスカウトに夢中であり、今でも熱心にスカウトのバッチ(何かを達成すると貰える)を集めている。

そして、中間に立たされたのがベンであり、ベンも高校生らしくスカウトに恥ずかしさを感じつつ、しかし、スカウト活動自体はそんなに悪くないと思っている。

3人でのキャンプシーンが、カーターも含めて、とても楽しそうに描かれているのが印象的だ。

ベンにしてもカーターにしても、オギーに対しては強い友情を感じており、だからこそ、2人はスカウトを辞める決心がつかず、強い葛藤を抱いている。

ここでは、「イケてる高校生活」という新しい社会を取るか、「幼馴染3人組の絆」を取るかのという対立が描かれている。

高校の上級生からカーターがパーティーに誘われたことで、ベンとカーターは「新しい社会」になびいて、オギーを裏切ってしまう。

裏切りに対してケンカが発生するのは当然だが、3人のケンカが青春物として絶妙に胸にくるのは、この裏切りが単なる裏切りではないからだ。

というのも、裏切られたオギー自身も、スカウトが高校生としてはあまりイケてないことを理解しており、そのことがオギーの感情を複雑なものにしている。

オギーはこの裏切りに対して怒りつつも、2人が裏切った理由を同じ高校生として理解できる。しかし、自分は2人のようにイケてる側に行ける気がせず、だからこそ、余計に2人が向こうに行ってしまったことが悲しい。

オギーの怒りの中には、裏切られたという気持ち以上に、向こうに行ってしまった2人に自分が加わることができないという疎外感が大きく含まれている。

そしてベンとカーターも、オギーを友人として切り捨てる気は無く、ただスカウトを辞めたいだけだ。恐らくオギーが一緒に辞めてくれるなら、2人にとってそんな嬉しいことはないのだ。

3人は親友同士だが、しかし「スカウト」という一点に置いてのみ、折り合うことができない。

この関係性が、3人のケンカを愛おしいものにしている。

そして、この厄介な共通点であった「スカウト」が、ゾンビと対決するストーリーの展開と共に3人の武器になっていく。ラストでは、スカウトで学んで技術や知識を発揮して、ゾンビと闘う。

そして、最後のベンのスピーチでは「スカウトが好きだ。だってスカウトのおかげでお前らに出会えたし、また絆を取り戻せたから」と語られる。

スカウトは、3人を出会わせ、3人を仲違いさせ、そして3人を仲直りさせる。

思春期の問題は、つまるところ「他人の目」なんだという主張を込めて、スカウトというちょっとダサい活動を使って友情物語を描きつつ、そして、それをゾンビバトルにも活かすストーリー。

B級ゾンビ映画だと侮るなかれ。結構よくできた設定とドラマになっている。

ゾンビギャグ

ゾンビとの対決はストリップクラブから始まる。

その後、警察署に向かい、避難場所があると分かってそこに歩いて向かう。途中で軍人に拾われ、パーティーをしているカーターの姉ケンドルらを助けにパーティー会場に向かう。しかしそこが嘘の住所だと分かり、本当の会場を探すためカータの家により、隣家を通り、量販店で武器を準備して、パーティー会場に乗り込む。

こんな調子で、主人公たちは街中をあっちこっち歩き回りながら、その場所場所でゾンビたちと闘っていく。

この映画は、ホラーというよりコメディである。真剣に「恐い」と思うシーンは多分ない。

だから全体的に、ゾンビを使ったギャグが目白押しだ。

例えば、ゾンビが出血した時に、毎回カーターの顔に血がかかる、という天丼があったり、ゾンビがブリトニー・スピアーズの歌を歌い、それが問答無用で撃ち殺される、というジョークがあったりする。

またカーターが女ゾンビの胸に釘付けになったり、ベンが爺さんゾンビのアソコを掴んで命綱にしたりという、ゾンビの体を使った下ネタもある。

そして特筆すべきは、オギーが、ゾンビ化したスカウトの隊長ロジャースと対決するシーン。

ロジャースは明らかに将来のオギーの姿であり、さらに「スカウト」の象徴である。

ゾンビ映画ではゾンビ化した親や恋人などを殺すことで、主人公が何かを克服する、というお決まりの展開がある。

だから、このシーンが始まると、オギーがロジャースを殺すことで、高校生になってもスカウトに夢中になっているオギーが成長する、という展開になるのだろう、とつい先読みしてしまう。

しかし、殺したかと思われたロジャースは生きており、オギーはロジャースを椅子に縛り付けて、彼が人間だった頃のように接している、というギャグ展開になっている。

ここには「別に大人になってもスカウトを続けていたっていいじゃん」という、映画クライマックスで描かれる主張が、先取りされて暗示的に描かれている。

さらに、このロジャースは映画内で何度も攻撃されたにも関わらず、クレジット後の後日談でも出てきて、しぶとく生き残っている。これはギャグでありつつ、「スカウトは永遠!」というスカウトの誓いを象徴している。

伏線の回収や映画パロディ

この映画、わりとしっかり伏線の回収をやっている。感動するほど上手いという感じではないけど、しかし、ちゃんと作ってある、というクオリティは十分感じるし面白い。

例えば、最初に鹿を跳ねたシーンでタイヤがパンクし、予備タイヤに交換した展開が、ゾンビから逃げようとしたところでタイヤが脱輪する、というハラハラ展開で回収されている(さらに、その場でジャッキを使ってタイヤをつけ直すというモタモタをギャグにしている)

そして、上級生が主催するパーティーにカーターが誘われるという展開についても、それがオギーに対する裏切りにつながるきっかけでありつつ、ストーリー中盤では、カーターが教えられたパーティー会場が嘘だったせいで、救助が困難になるという展開にも繋がっている。(加えてカーターが上級生に反感を持ち、親友の大事さに傾く展開でもある)

しかも、なぜ脱輪したかといえば、予備タイヤをつけているときにケンドルたちが現れ、ちゃんとナットを締めていなかったから、というロジックが実はちゃんと描かれている。

また、2人が車で家に着いたところで、隣人のばあさんがカーターに小言を言ってくる。カーターはここで小言をテキトーに受けながら、窓を少しずつ閉めてばあさんを追い払う。

これは、ゾンビ化したこのばあさんが襲ってきた時に、家の窓で彼女を首チョンパで倒すアクションの暗示になっている。

そして、ビールを買いに行ったベンとカーターが、ストリップクラブを眺めていたらガードに睨まれて退散する、という描写も、後々2人がストリップクラブに忍び込もうと考えることに説得力を持たせている(ガードの不在が特殊な状況だからこそ、2人が普段しない行動をしても納得できる)

こんな風に、この映画、序盤からずっと伏線が張られ、それが結構真面目に回収されているし、かつキャラクターの行動もちゃんと説得力を持つように、ロジックがちゃんと作られている。

また、映像的にも例えば、キャンプから抜け出そうとした2人が車のヘッドライトをつけるとそこにオギーが立っている、という描写は、ホラー映画でよくあるパターンのパロディだ(普通は幽霊とかゾンビが立っている)。

さらに、ケンドルの部屋からベンがトランポリンに落ちるスローのシーンも、落下シーンとしてよくあるやつ(『ダイハード』で最後にテロリストがビルから落ちるシーンなど)。

オギーがロジャースに襲われながらも、それに気づかず攻撃を交わすシーンも、本当に伝統的なコメディ手法だし、クライマックスで武器を用意する場面の演出も、アガる演出のベタをパロディにしている。

こんな感じで、映画を見ることの楽しさがふんだんに用意されている。

青春物、ゾンビ物、伏線の回収に、パロディ、なかなか見応えのある作品。

レコメンド作品

ショーン・オブ・ザ・デッド

ゾンビランド

スーパーバッド 童貞ウォーズ