映画

ジュラシック・ワールド -ビジネス優先による危機、搾取と信頼の葛藤-

概要

ジュラシックパークの跡地に作られた恐竜のテーマパーク「ジュラシックワールド」。

そこでは単なる恐竜に飽きてきた客を引き留めるため、遺伝子操作によって新たな恐竜の開発が行われ、「インドミナス」という最強の恐竜の公開が準備されていた。

インドミナスは様々な動物の能力を有し、さらに賢く、監視員たちを騙して檻から脱走する。

パークの職員は来場者を避難させつつ、インドミナスを食い止めようと警備員らを送り出すが、次々と返り討ちにあってしまう。

みんなのレビュー

高評価

  • パニック映画として、迫力がある
  • メインの恐竜においしい見せ場を作っていて、恐竜映画として楽しい
  • ところどころにある過去作オマージュが良い

低評価

  • シリアスな状況とキャラクターたちのコミカルな行動にギャップがあり、ストーリーに乗り切れない。キャラクターがバカかつ無責任でイライラする
  • パニックを起こし、悪化させるためのご都合主義的展開にうんざりする。ツッコミどころが多すぎる
  • シリーズを見ていると既視感が強く、食傷気味

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:大味なパニック娯楽映画が観たい時。恐竜に襲われるハラハラ感を味わいたい時。

良い点!

恐竜たちが暴れだしてからのパニックシーンがなかなか面白かった。思ったよりちゃんと人が襲われて食われていた。特に、兄弟のシッターをやっていたザラの扱いの酷さはギャグとして素晴らしい。(子供から目を離したシッターはこんな目に遭ってしまうのだ)

また、パニックスリラーの中で展開される細々としたギャグやコミカルなセリフと表情など、コメディ要素がとても良かった。もっとコメディに振った作品になっていても良かったと思えるほど。

オーウェンと恐竜ラプトルの信頼感の微妙さも良かった。ビジネスマンたちが象徴する「勝手で安易な利用」とオーウェンが象徴する「信頼構築の難しさ」が上手く対比的に描かれていた。(それだけに、ラストでは一気に安易な信頼関係に流れていたのが残念)

イマイチな点・・・

要素を盛り込みすぎた大作映画の典型のような締まりのなさ。

テーマパークのスペクタクル、仕事人間クレアの改心、クレアとオーウェンの恋、オーウェンと恐竜の友情、軍事産業の悪、ビジネス優先の弊害、兄弟の絆と親の離婚など、要素が多すぎる。

結果、全体的に中途半端で、どの要素もグッと来るレベルに達していない。

特に、兄弟に関して、両親の離婚の件は完全に蛇足だし、ストーリー上、両親が登場する必要が全くない。兄の女好き設定なども活かせていないし、弟も明確な成長があるわけでもなく、この2人がメインで描かれている意味がよく分からない。

仕事人間クレアが兄弟を蔑ろにしていた問題も、兄弟の危機の責任がシッターのザラに責任転嫁されたせいで、今ひとつクレアが改心していくドラマに見応えがない。それにクレアは結局兄弟を救出できていない。全体的にクレアの権限や責任や役割が曖昧で、クレアの成長物語としても葛藤が弱い。

クレアとオーウェンの恋愛にしても、そもそも恐竜愛に溢れたオーウェンがビジネス優先のクレアを口説いている最初の設定に違和感がある。最初はいがみ合っている設定の方が展開的にも面白かったのではないか。そこからクレアが傷ついた恐竜を見て命の大事さに気づき、2人の価値観が揃ったことで、お互いに好感を持つ流れの方が自然だ。

軍事産業の件にしても、序盤から引っ張ったわりには呆気ない失敗で微妙すぎる。銃を持った男たちが恐竜にボロ負けするシーンはもっと手前にもあるし、同じ失敗を2度繰り返されても、という感じ。

最後の恐竜バトルは迫力はあったが、クレアたちが呑気に観戦しているせいで緊張感が削がれた(逃げろよ!)。そして、ラプトルが完全にオーウェンのペット化していたのも安易に感じた。ペット化するならせめてラプトルの死にオーウェンが悲しんでいる描写をいれないとオーウェンが冷酷に見える。そして、ティラノサウルスの登場は1作目を観ていれば燃える展開なのは分かるけど、本作だけで考えるとさすがに唐突すぎる。

それぞれの要素で伝えたいことは分かるのだが、ドラマとしても、風刺としても中途半端。もっとシンプルに作った方が良かったのではないか、と思ってしまう。

他者を搾取することへの警鐘

恐竜の飼育員であるオーウェンは、自分が管理しているラプトル4頭に名前をつけ手懐けている。しかし完全に手懐けているわけではなく、ラプトルらは一応命令を聞きつつも、いつでもオーウェンに背きそうな雰囲気がある。

このコミュニケーションを取れるか、取れないかの微妙な関係性が、人間関係や、国際関係に置き換えて考えられる上手い風刺になっている。

ラプトルを武器化しようと考えるホスキンスは、相手を利用・搾取しようとする支配的な人間や国家を象徴している。

一方でオーウェンは、相手の尊厳や文化を尊重し、関係構築の難しさを理解しているキャラクターだ。

序盤で描かれるオーウェンとラプトルの緊張感のある関係は、「完全に理解し合うことはできないけど、殺し合いを避けることはできる」というギリギリの関係性を描いていて、素晴らしかった。

本作の大ボスであるインドミナスには、ラプトルの遺伝子が入っている。

中盤で、人間の指示を受けるラプトルが、インドミナスに対峙するシーンがある。

ここでは、種の血の繋がり(インドミナスとラプトル)か、種を超えた信頼関係(人間とラプトル)か、という対比が描かれている。

拡大解釈すれば、ナショナリズムか、グローバリズムか、と捉えてみることもできる。同族を殺す兵士として使われているラプトルらは人間に反逆する。

ラプトルというキャラクターを使って描かれている、利己的に他者を搾取することへの警鐘が、この映画では大きなテーマとして描かれている。

それだけに、ラストでラプトルがオーウェンに都合よく振る舞うのは、個人的にちょっと違和感があった。オーウェンの誠意に応えたと思えば、それはそれで胸熱な展開ではある。

ビジネスとリスク

リスクを甘く見たビジネスへの警鐘も、この映画のメッセージである。

パークの社長サイモンは、悪人ではないのだが、ビジネス優先で全体像を見失っているキャラクターだ。そういう意味では、クレアの分身である。

インドミナスの脱走後、凶暴な恐竜を作った科学者を責めるサイモン。

しかし科学者は「あなたがもっとデカイのを、恐ろしいのを、みんなが驚くような奴を、と要求したんだ」と答える。

ビジネスサイクルが早くなり、客はすぐ物事に飽き、運営者はその客を引き止めようと無理のある方法でビジネスを回し、どこかでしわ寄せがくる。これは現代では典型的な1つの悲劇の構造だろう。

サイモンは、リスクを顧みず利益優先で、知らず知らずのうちに怪物を作り出してしまっていた。

さらに、インドミナス脱走後のパークの対応も十分だったとはいえず、対応は後手後手に回り、結果的に来場者は襲われてしまう。

ここでも危機を過小評価し、穏便に済ませようとした結果、最悪の結果を招いてしまうという、ビジネスパーソン的な危機管理への怠慢が描かれている。

挟み込まれるギャグ

全体的にコメディ要素が上手く演出されている。

残念なのは、この映画はわりと倫理的に「正しい映画」なので、このコミカルな部分が、映画全体のトーンから少し浮いて感じられる点だ。せっかく面白いシーンでも「笑ってる場合じゃなくないか」という後ろめたさが顔を出してしまう。

もうちょっとコメディに振って、やや悪趣味なパニック物になっていれば、もっと素直に笑えただろうと思われる。

不謹慎な後ろめたさを置いておけば、コミカルなパートはちゃんと面白いものになっている。

特に、クレアが予想外にコメディリリーフになっているのが、驚きもあって楽しかった。

クレアとオーウェンは2人で兄弟を追跡する。オーウェンに「そんな格好で追跡は無理だ」と指摘されたクレアが、やる気を示すために着ているブラウスのボタンを開けて、裾をキュッと縛るシーン。

いや、さっきよりバカンス感増してるけど、というバカらしさとクレアの大真面目さのギャップ。それに「なにそれ」と真顔でツッコむオーウェン。

ここのクレアの動きや表情、オーウェンの戸惑いの空気感はいい。

その後インドミナスに襲われ、逃げるときに、手を差し伸べるオーウェンを無視して、必死の形相で先に行ってしまう様子も可笑しい。

兄弟がオーウェンを見て「超かっこいい」というシーンで、こっそりニンマリと笑うところもいい。

こういう何気ない場面で細々とした表情や動きで可笑しさを演出するのが上手い。

シリアスなシーンで、とぼけたギャグをかましてくる場面もいい。

兄弟が乗るトラックがラプトルに追われるシーン。生きるか死ぬかのヤバイシーンなのに、ラプトルを退治した兄弟が「今の見てた? これママに言おう!」とクレアに言ってはしゃいでいる。

それから、職員が次々避難する中、使命感から残ると決めたロウリー。避難する同僚ヴィヴィアンにキスしようとすると「私、彼氏いるから」と断られてしまう。

この緊張の緩和を使ったギャグも上手い。

そして、パニック映画ならではの、人が死ぬ恐いシーンなのだが、逆にひどすぎて笑える、という可笑しさもちゃんとある。

1番はやはり、2人の子守をしていたザラの死に方。

恐竜に襲われ、なんとか助かった、と思ったところからの、さらなる襲撃。ここの酷いしつこさはこの映画最大のギャグになっている。

さらに、ヒロイックでイケイケに振る舞うサイモンが、わりと呆気なく死んでしまうのも、ちょっと可笑しい。

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