映画

COP CAR/コップ・カー -少年のイタズラに振り回される悪徳警官のミニマムサスペンス-

概要

見渡すばかり荒野が広がる田舎町で、家出少年のトラヴィスとハリソンは偶然無人のパトカーを見つける。2人はパトカーに乗り込んで遊んでいるうちに鍵を発見、そのままパトカーを盗んで荒野を走り回る。

一方でパトカーの持ち主クレッツァー保安官は、裏稼業で殺した男を森の中に埋めていた。パトカーが盗まれたと気づいた彼は大慌てでパトカーを探す。クレッツァーは警察に自分のパトカーが盗まれたことを隠しつつ、無線を使って少年2人を脅して車を返すよう要求する。

そんな中、少年2人はトランクの物音に気づく。クレッツァーが埋めた男とは別にもうひとり、トランクにはまだ男が残っていた。

みんなのレビュー

高評価

  • 少年2人の子供っぽい行動に懐かしさ、可愛らしさを感じる
  • 登場人物の感情の動きが丁寧に描かれている
  • 最小限の説明で進んでいくサスペンスにハラハラできる
  • 子供の無邪気さを軸にしたサスペンス展開が新鮮
  • 笑えるシーンも多い

低評価

  • 登場人物たちの行動に説得力がない。特に子供の行動が幼稚過ぎる
  • 間延びして感じるシーンもあり、出来事のわりに長く感じる
  • 次々巻き起こる出来事にリアリティがない

ナニミルレビュー

良い点!

面白さの肝は2点。1つはミニマムな状況設定、最低限の説明で、それぞれの思惑が交錯していくサスペンスの面白さ。もう1つは、素朴な少年たちと凶悪な悪徳警官とのやりとりから生じるブラックユーモア。

サスペンスに関しては、「もしもこんなことがあったら」的な想像力を、整合性を取りながらストーリーに落とし込んだような感じ。ちょっとしたボタンの掛け違いで、少しずつ事態が泥沼化していく様子が面白く、その掛け違いの中心にあるのが少年の素直さ、愚かさ、イタズラであるのが皮肉っぽくて楽しい。

コーエン兄弟の映画『ファーゴ』や『バーン・アフター・リーディング』を彷彿とさせる感じだが、コーエン兄弟映画のような間抜けな雰囲気はなく、シリアスに演出している。事件のきっかけを生むのが「間抜けな大人」ではなく「子供らしい子供」なのが違うところ。

とにかく少年たちの可愛らしくおバカな感じと、悪徳警官の血生臭さの対比が、この映画の雰囲気を独自なものにしている。そういう意味では、シリアスな雰囲気ながら、緊張と緩和をうまく使ったコメディ作品だと感じる。

そして、とにかく少年の少年らしさがすごくて、無鉄砲な子供のヤバさもまたコミカルに描かれている。

1日2センチのジャーキーで生きていく予定。オモチャと現実の区別がついていない(よりによってパトカーを盗んだり、とにかく銃の扱いが雑)。怪しい大人を簡単に信用する。

子供の考えなしな感じが、ストーリーを追うごとにどんどんエスカレートしていくのもうまい。

状況説明が最小限なのもとても良い。余計な説明を入れず、とにかくサスペンスに必要な要素だけ、登場人物たちの行動に説得力をもたせる要素だけを観客に分からせればいいという割り切りが気持ちいい。

そんな中でも、たとえばパトカーのボンネットに置かれたビール瓶によって、クレッツァーが事態を飲み込む過程を演出したり、「捜索が始まるにはまだ早い」というトラヴィスのセリフによって2人が家出中であることを示唆したり、荷造りをするクレッツァーの様子から彼の過去の悪行を伝えたりと、状況に応じた登場人物の言動から、自然に必要な情報を観客に伝える工夫がなされている。

一方で、トランクの中の男とクレッツァーの具体的な関係や、交差点でクレッツァーに声をかけようとした男の正体、なぜ2人は家出しているのかとか、そういうことは説明されない。

ストーリーを始動させるため、サスペンスを盛り上げるためだけに用意された要素なのだから、余計な説明はしなくてもいい、という潔さがある。(マクガフィンとしての割り切り)

シーン的にも例えば、クレッツァーが車を盗むときに靴紐で鍵を開けるのだが、ここで彼は3回も鍵開けに失敗する。これはストーリー的には全く無駄なシーンだ(サクッと盗めてもストーリー的には問題ない)けれど、観客を楽しませるために(緊張感を高めるために)このようにジリジリと失敗する姿を描いている。そしてこのシーンは笑える。

このように、とにかく「観て、楽しめ」と訴えてくるような映画。

リアリティや整合性、世界観全体の理解なんていいから、映画として描き出されているこのシーンの積み重ねを観て楽しめ。それで十分楽しいはずだ、という思い切り。そして見せる部分は丁寧に描いてく。

情報が詰まったシーンが連なっていって、それによって興味や感情を掻き立てられる、引き締まった面白さのある映画だ。

イマイチな点・・・

そもそもが「もしも」な設定に基づいたストーリーなので、ややご都合主義的に感じたり、リアリティが薄いと思う部分もある。

特に、クライマックスの銃撃シーンは、こういう結末にせざるを得ないので、登場人物にはこういう風に行動してもらいました、というわざとらしさがある。

とはいえ、最小限の要素だけが描かれるストーリーなので、できすぎている感じになってしまうのはしょうがないと思う。

あと、クレッツァーが事態に気づくまでの20分ほどは、かなり退屈さを感じた。少年2人の性格や関係性を描いているとはいえ、出来事としては子供が遊ぶ姿を見せられているだけなので、モタモタした印象を受けた。

またドラマとして、やや臆病なハリソンが、ラストで勇気を獲得する様子が描かれているけど、ハリソンの臆病さがそこまで大きな問題として描かれないので(せいぜいドラヴィスに呆れられるぐらい)、あまり成長の喜びもなく、このドラマはなくてもよかったかな、と思う程度のものだったのも残念。ここを切っていればさらに締まったストーリーになっていたはず。

まとめ

90分を切る短さ、最低限の登場人物、車と荒野という明快な舞台設定と、素朴な子供と悪徳な大人という対比。

ミニマムに切り詰めたストーリーテリングが気持ちよく、少年2人に振り回される大人をコミカルに描くさまも楽しい映画。

レコメンド作品

ファーゴ

田舎町で起こった殺人事件と、それを捜査するおっとりした警官を描くストーリー

ほえる犬は噛まない

団地という日常的な舞台と、近所の犬がうるさいというよくある話をきっかけに、おかしな事件が巻き起こっていく映画

バーン・アフター・リーディング

数人の悪い思惑と、数人のおバカの思惑が交錯し思わぬ事態へと発展してくストーリー

ゾンビーワールドへようこそ

ちょっとイケてない男子高校生3人が、ボーイスカウトの知識を生かしてゾンビに立ち向かうコメディ映画

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

ラスベガスでハメを外しすぎて記憶をなくした男たち。昨夜の行動をたどりつつ、行方不明の友人を探すコメディ映画