映画

ヴィンセントが教えてくれたこと -弱さがあるから温かくなれる-

概要

借金まみれで自堕落に生活する老人ヴィンセント。銀行の融資も滞り、借金取りにも見張られ、妻の老後施設の料金も滞納。いよいよ追い込まれていた。

そんな時、隣に引っ越してきた母子家庭のマギーとオリバー。オリバーが学校で家の鍵と電話を盗まれ、電話を借りたことから、ヴィンセントはオリバーのベビーシッターを引き受けることになる。

ヴィンセントはオリバーを競馬に連れて行ったり、バーに連れて行ったり、自分の妻の面会に連れて行ったりと、面倒を見るというよりは自分の生活にオリバーを付き合わせる。

そんな不真面目な子守を通して、ヴィンセントとオリバーの間に友情が育まれていく。

しかし、オリバーの両親は親権争いの最中で、ヴィンセントの行為が裁判で不利な状況を生み出し、ヴィンセントはベビーシッターの仕事をクビになってしまう。

仕事もなくなり、金も底をつき、さらに病気で倒れてしまうヴィンセント。すべてを失った彼だったが、オリバーは学校での課題である「聖人」についての発表のモデルをヴィンセントにすることを決め、ヴィンセントの半生を調べ始める。

みんなのレビューまとめ

高評価

  • 弱点や欠点のある登場人物たちの温かさに感動する
  • 人生経験を経て偏屈になった男と、ピュアな少年の交流が心地いい
  • 人間の多面性が描かれていて、人との関わりについて考えさせられる

低評価

  • タイトル、あらすじから想像する通りのストーリーで意外性が何もない
  • 生活苦を描いているが、リアリティがなく嘘くさい
  • 感動させるためのキャラクターにあざとさ、わざとらしさを感じる

ナニミルレビュー

オススメ度:C

こんな気分の時オススメ:温かい人間関係にほっこりしたい時。老人と少年の交流が見たい時。ダメな大人が奮闘する姿を見たい時。

良い点!

わりと悲惨な状況ながら、全体的に穏やかな気持ちで心地よく見られる雰囲気の映画に仕上がっている。

年の離れたオリバーとヴィンセントの関係性や、いわゆる「立派な大人」ではないキャラクターたちを優しく描いている点も悪くない。

ラストの食事シーンが象徴するような、いろいろなバックボーンを持った、多様な人々が、仲良く生活する平和な空気感。完璧には程遠いけど、これはこれで悪くない生活だなぁ、と思わせてくれる優しい世界観はなかなか良かった。

イマイチな点・・・

全体的に、ちょっと定型的で、作り物っぽい感じがしてしまった。

表面的にはダメ人間だけど、根は優しくて、実は皆に好かれている、という設定自体は、だいたいにおいて好感が持てるキャラクター設定だし、ぼくもそう感じたけど、それ以上の深みがなかったように思う。

ヴィンセントの苦境の描き方も、「大変な状況だ」というのは説明としては分かるのだけど、それが上手くドラマと接続しきれていないチグハグさがある。それぞれのエピソードが個別に起こっていて、全体のストーリーとして上手くドライブしていかない展開になっている。

唯一、一貫して流れている「金欠」という問題も、なんとなくうやむやなまま。

もうちょっと、「ここでこんな風に振る舞う人なんだ!」という驚きのある展開があれば、ぐっとキャラクターの厚みが増すと思うのだが、わりと終盤もスルスル終わっていってしまった。ヴィンセントとオリバーのケンカも、あまり明確な理由や原因がなく、説得力に欠けていた。

その場面単体としては感動的なエンディングではあるのだけど、そこに至るまでの積み重ねが弱く、いまいち乗り切れなかった。

コメディの主役は少年オリバー

もちろん、ビル・マーレイ演じるヴィンセントのキャラクターは良いのだが、この映画で主にコメディを担っているのは、実は少年オリバーだろう。

体が小さくていじめられっ子だが、気が小さいタイプではなく、自分より体が大きい男子に立ち向かっていくガッツのある少年、というのが特徴的だ。

ヒューマンドラマによくある、ダメダメでヘナチョコなところから成長していく、というドラマとしてはキャラが弱いが、逆にさっぱりとしていて好感が持ちやすいキャラクターになっている。

ヴィンセントが乱暴な事を言ってもひるまないこの性格のお陰で、2人のやりとりを安心して見ていられる。

 

このさっぱりとした性格のオリバーと、ダメダメなヴィンセントの絡みの面白さがこの映画の大きな見ドコロだ。

オリバーがイジメっ子に囲まれるシーンで、オリバーは相手を平手打ちにして返り討ちに合う。ヴィンセントが、「なんで平手打ちなんだ?」と聞くと、ボコられた直後であるにも関わらず、「さあ。最初に思いついたんだ」と余裕のある返事を返す。

ヴィンセントと暮らしているダカの妊娠について、マギーがオリバーに聞くと、「そこは避けて通ってきた」と大人びた返事をしたりする。

 

ダメダメな大人に囲まれて、このオリバーの冷静さの方がむしろギャグとして効いてくる。

ヴィンセントを取り巻く大人たち

この映画は、現代が「セイント・ヴィンセント」であることからも想像できるが、ヴィンセント礼賛のストーリーである。

ヴィンセントの周りにいる大人たちは、なんだかんだで彼のことを見捨てないし、そして、そのことによって温かい人間関係が描かれている。

 

その中でやはり1番好感度が高いのは娼婦のダカだろう。

妊娠してしまい、ストリップ劇場をクビになるというどうしようもない状況のダカだが、ヴィンセントが病気で倒れた際、悪態をつきながらも彼の世話役を引き受ける。

口が悪くて性格が優しいキャラクターというのは、基本的に好感度満点になるものだ。

マギーから、絶対返す気がないお金を借りるダメな一面を見せつつ、しかし、そのお金で買ったチョコバーを、ちゃんとオリバーとマギーにもあげているシーンは、とてもいい感じに描けている。

 

マギーは、ヴィンセントの勝手な行動によって裁判で危機的状況に立たされてしまい、ケンカし、ヴィンセントをクビにした。

しかし、ヴィンセントが病気で倒れ、リハビリを手伝う中で、だんだんとヴィンセントと打ち解けていく様子が描かれている。

ある意味で、真面目過ぎるマギーはヴィンセントの勝手ぶりに腹を立てていたが、このヴィンセントのキャラクターを受け入れ、マギーもヴィンセントに対して「あなたって嫌なヤツね」と言い返すようになる。

 

こうして、ヴィンセントのダメさは、人と人が溶け合うための仕掛けとしてストーリー内で機能していく。

ヴィンセントはダメダメだが、だからこそ周りの人を厳しくジャッジしない。なんだかんだで、壊された車の修理代を無理に請求したりはしていない。そして、周りの人も悪態をつきながらヴィンセントを受け入れていく。

この温かい関係性が、この映画のストーリーの面白いところだ。

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