映画

ナイトクローラー -サイコパスの商才と創作魂-

概要

窃盗や強盗をしながらその日ぐらいの生活をしていたルイス。ルイスはある日、交通事故の現場を通りかかり、そこで事故の様子を撮影している映像パパラッチ「ナイトクローラー」の男を見かける。ルイスは男に雇ってくれと頼むが断られ、自分でナイトクローラーとして働くことに決める。

ルイスは盗難品を売った金で最低限の機材を買い、早速街に繰り出す。試行錯誤を繰り返しながら、熱心さと口のうまさで、あるテレビ局との契約を取り付ける。

ルイスは良い映像を取るために現場を勝手に荒らしたり、民家に不法侵入したりとやりたい放題だが、映像のクオリティの高さで勝負し続け、逆にテレビ局の担当者を自分の意のままに操れるほどの立場まで登りつめる。

彼は、ある事件で警察よりも先に現場に着いて映像を撮ったことで、警察から捜査を受けるハメになるが、それにもめげず、スクープのためなら何でもやる姿勢を貫き続ける。

みんなのレビュー

高評価

  • ハラハラさせる異端な主人公(ゴロつきで承認欲求が強く、仕事熱心で倫理観がない)が面白く、悪い奴が悪どいやり方で勝っていく様子もある種の爽快感がある
  • ストーリーに緩急がついており、共感しにくい主人公に対し観客の視点を象徴するパートナーも登場するなど、しっかり最後まで飽きさせない構成になっている
  • ビジネスでの成功や報道について、考えさせられる

低評価

  • 論理的なサイコパスである主人公の言動にイラつく。因果応報が描かれず不快
  • キャラクターたちの内面にあまり変化がなく、ドラマとして単調
  • 主人公が成功するための、リアリティのないご都合主義的展開が多い

ナニミルレビュー

ポジティブ

恐らくサイコパスであるルイスの、ダークなサクセスストーリー。最初から最後までスリルとワクワク感が途切れることなく続いていく。

人を食ったようなゲスな主人公ルイス。彼の言葉、やり方、ビジネスパートナーへの態度、壊れた倫理観。ベースとして共感できないキャラクターでありながら、仕事への熱心さにおいては、どこか憧れと尊敬を感じてしまう。

そして、彼の「これぞ天職」という興奮が伝わってくる序盤のワクワク感が素晴らしい。それまで何をやっても上手くいかなかったであろうルイスが、「これでなら戦える」という何かを見つけた瞬間の充実感がひしひしと伝わってくる。

と同時に、それが行き過ぎて、どんどんエスカレートしていくルイスの悪事。さらに、それでも勝てない同業者に対する異常な苛立ち。しかし、それをも乗り越えて、さらに高みへと登り続け、驚異的なスクープ映像を手に入れていく興奮。

倫理的な部分ではルイスに反感を持ちつつ、同時に、仕事に打ち込み、素晴らしい作品を作るルイスのアドレナリンが自分の脳にも流れてくるかのような高揚した気分が味わえる。

ネガティブ

映画だから良いけど、ルイスには一生会いたくはない。そういうキャラクター。

反社会的な側面は言わずもがなだが、仕事熱心な部分においても、ビジネスメソッド的なアドバイスをひたすらまくし立ててくるあたり、自分に向かって言われていたら絶対イラつくだろう、と思う。

こういう、機械のように淡々と生きているタイプの人間は、同じような強靭さを持っている人以外にとっては、一緒にいて疲れる人間でしかないだろう。ルイスはまさにそういう人間だ。

そんな彼のサクセスストーリーなので、ある程度距離を保って観られなかった場合、普通にラストに納得できないだろう。

それから、ものすごくリアリティの高いストーリーではない。ルイスに都合よく話が進んでいる場面はいくつかある(ライバルの事故、取り締まられないスピード違反、ラストでの部下への仕打ちなど)。なので、変にツッコミながら見ると、面白さが半減してしまうかもしれない。

ルイスというキャラクター

主人公ルイスのアクの強さは、この映画最大の魅力と言っていいと思う。

いきなりルイスが金網泥棒をしているシーンから始まり、そこに見回りに来た警備員を殴って腕時計を盗む。粗暴な男かと思えば、金網を買い取る業者オーナーに言葉巧みに自分を売り込み、それを断られてもニコニコしながら事務所から出ていく。

この冒頭のシーンだけで、ルイスのヤバさを観客が理解できる素晴らしい幕開けになっている。

ルイスの性格で特筆すべき点はいくつかあると思うけど、まず何より異常な押しの強さ。

交渉するときは常に強気に出るし、相手の立場や顔色など気にせず、自分の取りたい行動、言いたいことをガンガン押し出していくスタイル。

値段交渉をするときは、まずとにかく高額をふっかけ、撮影するときは注意や警告など気にせずできる限り現場や被害者に近づく。

これができるのは、ルイスが、他人の自分に対する人間的評価を1ミリも気にかけていないからで、彼が実利しか気にしないサイコパスな人間だからだ。

ルイスのキャラクターが興味深いのは、この特性が単なるクソ野郎としてだけでなく、彼の仕事に対する勤勉さや、実際の結果につなげる優秀さとも直結しているから。

確かにルイスの言動は眉をひそめるようなものだが、でも実際、彼はどんどん結果を残していく。周りは嫌な顔をするだけで、誰もルイスを止めるガッツを持っていない。そんな中でルイスはどんどん頭角を現していく。

ルイスは賢いし、言葉巧みで常人離れした雰囲気を持っているが、誰も逆らえないような超人というわけではない。

このことは、この映画に2つの面白さを与えている。

1つは単純に、ルイスのキャラクターをより興味深くしている点。ルイスはサイコパス特有の超然とした雰囲気を持ちながら、同時に俗っぽいしょうもなさを持ち合わせており、そこが彼の奥深さになっている。

例えば、テレビ局のパートナーである女性ニーナに対し、ルイスは、彼女の足元を見て性的関係を迫る。そして、映画終盤で、彼女があるプレイを拒んだことに怒ったりする。これは恐ろしくもしょうもないルイスの一面を現している。

さらに、金を手に入れた彼が買う車(ダッジ チャレンジャー)は赤色だ。これは映画のグラフィック的な意味もあるのかもしれないが、ルイスが赤色を買う所に、彼の俗っぽさが垣間みえていて、良い選択だと思う。

実際、映画のラストで、部下のリックに「車が赤いせいで目立って見つかるぞ」とツッコまれており、ルイスが実は見栄っ張りで、実利にだけこだわり切れている訳でないことが示されている。

この俗っぽさはしかし、観客が感情移入できる余地でもあると思う。

ルイスは時々、こういう俗っぽさや弱さ(=人間らしさ)を見せる。だからこそ、彼のサクセスストーリーは、反感を感じながらも、どこか感心してしまうものになっている。

ニーナはある時、スクープを持ってこなかったルイスに激怒する。ルイスは最初こそ、いつもの調子で達者に言い訳するが、最終的にはニーナの怒りに納得し「自分をごまかして言い訳していた」と反省する。

この異常さと人間味のバランスがルイスの魅力だ。

サイコパスらしく相手を矮小化し自分を尊大に見せていたと思ったら、実は人間的感情でショックを受けており、しかし常人離れした冷静さで反省と改善を繰り返して成功を導いていく。

感情移入できる弱さを、超然とした態度でサンドイッチしたのがルイスというキャラクターなのだ。

だから見ているこちらは、眉をひそめ反感を覚えつつ、部分的に共感し、そして彼の容赦ない成功ぶりに感嘆する。

ルイスが単なる超人でないことから生じているもう1つの面白さは、ルイスの周りにいる普通の人間の弱さが容赦なく描かれている点である。

もし、ルイスが超人であったら、それに圧倒される周囲のキャラクターは、単なる可哀想な人々にしかならないだろう。

だが、ルイスには欠点もあり、穴もあり、本気でルイスに立ち向かおうと思えば、立ち向かえるはずだ(もちろん、事故に見せかけて殺されるリスクはあるけれど)。

この「普通の人」の代表が、ルイスの部下であるリックである。彼は野心も持たず、主体性も持たないことで、ルイスに搾取されている。体良く扱われ、給料は最低限で済まされている。

では、リックにはルイスに対抗するチャンスはなかったのか。

ルイスはしきりにリックにどうすれば成長できるのかを説き、交渉のチャンスを与えている。もちろん、ルイスは高圧的な態度をとり有利に話を進めるが、ルイスの態度に立ち向かう覚悟があれば、リックにも交渉をひっくり返せる余地はあった。

実際、ラストではルイスはリックに足元を見られ、反撃されている。

こういう反撃のチャンスは、リックに限らず、ニーナにもあったはずだ。

しかし2人とも、自らがリスクをとり、社会的非難を受ける覚悟を持てなかったことで、それができるルイスに言いくるめられてしまう。

リックは最後まで常識を通す人間として、ニーナはルイスに影響されて変わっていく人間として映画では描かれている。

この映画では、強靭なルイスと関わると、殺されるか、ルイスのような人間に変化するか、ルイスに搾取されるか、という弱肉強食の世界観が描かれている。

ルイスはスーパーマンではない。ただの強い人間だ。

だから、同じく強い人間であれば立ち向かえるはずなのだが、しかし周囲の人々は立ち向かえない。そこに「普通の人間」の弱さが描かれている。

そして、観客のほとんどはそういう「普通の人間」のはずだ。

少なくともぼくはそうだ。だからこそ、ルイスの行動やその周囲の反応を見ていると、複雑な感情になる。

ルイスに苛立ち、同時にそれに立ち向かえない周りの人間の弱さにも苛立つ。自分の弱さをリックやニーナに重ねてなんとも言えない嫌な気持ちになる。

こういう人間の力関係や、内面の弱さを巧みに描写するキャラクターだからこそ、ルイスというキャラクターはとても魅力的なのだ。

良い映像を撮る興奮

ルイスの仕事において、倫理観が欠落した部分やビジネスマンとして成功していく姿に目が行きがちだ。

しかし、もう1つの側面として、彼が映像の作り手として撮影にのめりこみ、成長し、充実感を感じ、評価を得ていくストーリーも、この映画の大事なパートになっている。

ちょっと倫理的な問題は置いておいて、ただ「カメラで良い映像を撮る」というルイスの行為を見てみよう。

彼はカメラを買い、試し撮りする。

そして初めての事件現場で、臆せず誰よりも前に出て映像を撮ったことで、初めて映像を売り、収入を得る。

ルイスが周囲より大胆に行動し、その結果、荒削りでも良い映像を撮ったからこそ映像が売れた。これはルイスの作り手としてのセンスの証明だ。

ニーナが言う「良い目をしてる」という褒め言葉は、カメラを扱う人間には最高の褒め言葉だ。

そして彼は撮影を続ける。

ある家での銃撃事件の現場に遅れて到着するルイス。同業者が「もう撮るものなんてないぞ」と言う中、彼は粘り強く現場を観察し、その家に侵入する。そして冷蔵庫に貼ってあった家族写真と銃痕を上手く構成し、それを撮ったのち、窓越しに事情聴取を受ける被害者を撮る。

この映像もまた高く評価され、ニーナに買われる。

ルイスは、周りが諦めた後も諦めず、普通の人がしないような工夫をすることで、自分の映像を売り込んでいく。

ルイスは法を犯しているので、もちろん褒められるべきことではない。だが、その倫理観を取っ払ってみると、ルイスの創作者としてのセンスや努力は、それはそれで評価すべきもののに感じられる。

そうやって少しずつ成長し、良い映像の構図を学んでいったルイス。

彼が決定的に非倫理的な男だと描写されるシーンとして、交通事故の被害者を引きずって移動させ、絵作りをするシーンがある。

ここも、倫理的には大変問題のあるシーンなのだが、「ここからこう画角に収めて、ここに車、ここにライトが当たっていて・・・、ここに被害者が倒れてたらベストショットだなぁ〜」と構図を練っているルイスの姿は、それはそれで作り手の行動としては理解できてしまうのだ。

そして、高級住宅街での強盗事件は、ルイスにとっては、最高のモチーフを誰にも邪魔されずに撮れる最高の経験であり、凄惨なシーンでありながら、ルイスの充足感がジリジリと伝わってくるシーンになっていた。

ルイスにとってあの殺人現場は、まさに日の出の瞬間の富士山の絶景や、北欧で見るオーロラや、一斉に飛び立つ大量のフラミンゴと同じような光景なのだ。

その現場に居合わせ、どんなアングルからでも自由に撮影ポジションを取れる状況であれば、写真を撮りたい人にとっては大変幸福な時間に違いない。

殺人現場を舐めるように撮影するルイスは、まさにそういう幸福な時間を味わっているのだ。

ルイスはそうやって、映像に自分の工夫を活かすこと、自由に現場を撮ることの楽しさに目覚めていく。

そのルイスの最高傑作が、料理屋での銃撃戦から、カーチェイス、車の横転、目の前で銃弾に倒れる男たちの姿を収めた、ラストの映像なのだ。

ルイスは持てる情報を使って巧妙に現場をお膳立てし、まさに欲しい映像を収めつつ、そこで偶然発生したカーチェイスにも上手く対応し、警察や一般車両など邪魔者も多い環境の中でも、これ以上ない最高のポジションをキープしながら、映像を撮りきるのだ。

この最後の撮影シーンには、強盗犯を追いかける逃走劇の興奮と共に、作り手としてのルイスの能力が遺憾無く発揮される高揚感が存分に表現されていて、本当に素晴らしいシーンになっている。

この映画は、サイコパスのサクセスストーリーを描いている。

それを、ビジネスの側面からと、創作の側面から、両方楽しめるのが、この映画のとても優れた点なのだ。

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