概要
ジェイは、恋人ヒューにある呪いを移されてしまう。その呪いにかかると、人型の「それ」に追いかけられ、捕まると死んでしまう。
「それ」は性行為で他人に移すことができるが、その他人が殺されると、その前に呪いを持っていた人を追いかけ始める。
「それ」はジェイにゆっくりと歩いて近づいてくる。ジェイは走って逃げ、「それ」から離れることができるが、「それ」は常に近づいてくる。遠く離れては「それ」が近く恐怖に怯えながら、ジェイと友人たちはどうにか「それ」を倒す方法を考える。
レビューの印象
高評価
- 普通の風景の中から浮かび上がってくる「それ」の恐怖感がすごい
- 「それ」にまつわるルールが斬新で面白い
- 驚きやグロさではなく、逃れられなさをメインにした独自なホラー表現
低評価
- もっと上手い対処の仕方があったのでは、とツッコんでしまう
- 展開が淡々としていて、ホラー映画としてやや期待外れ
- ラストが微妙
ナニミルレビュー
オススメ度:A
こんな気分の時オススメ:じわじわくる恐怖感のホラー映画が観たい時。設定が面白いホラー映画が観たい時。
モンスターの特性(題名通り)が面白い
「若者がモンスターに追われて殺される」というベタなホラー映画の定形をとりつつも、モンスターの特性にひと工夫するだけでこんなに面白くなるとは!
この特性によって、どのシーンでもモンスターに追われている緊張感が途切れずにストーリーが進んでいく。
画面でどんなことが起こっていても(比較的平和なシーンであっても)、常に「今、モンスターは・・・」という想像が頭から離れない。
というのも、この映画のモンスターの動きはあまりに単純なので、こちらが想像力を働かせる気がなくても想像できてしまう。
そして、この想像と緊張感が、実際にモンスターに追われている主人公たちへの感情移入を促す。
もう近くに来てる? まだ大丈夫? もしかしてすぐ後ろに?
ホラー映画のモンスターや殺人鬼が神出鬼没なのはよくあること。しかし、この映画のモンスターは神出鬼没ではない。単に執念深いだけ。そこが怖い。
主人公のジェイは、映画序盤で「自由にドライブしたかった」と語るのだが、その後ジェイはずっと不自由なドライブをし続けることになる。
呪いから生まれるドラマ
この映画では、モンスターは1人の人間を襲ってくる。そういう意味では、無差別殺人というよりは呪いである。そしてこの呪いは、人から人に渡ったり、戻ったりする。
この仕組みからドラマが生じていて、単なる殺人ショーになっていない点も、この映画の面白さ!
さらに、この呪いの仕組みに性的要素が絡んでいることで、若い女性が心身ともに傷ついていくところを痛切に描きつつ、甘酸っぱいロマンスの要素も含まれている。
ストーリー的に見ても、この呪いの仕組みは面白い展開を生んでいる。
主人公のジェイが一度この呪いから開放されることで、この呪いの傍観者になるシーンがある。さっきまで逃げ回っていたのに、今はモンスターの犯行を真横で見ている、という視点の切り替えがとても新鮮。
静かでスタイリッシュな映像
全体的に映像がフォトジェニックでカッコいい。画面に映り込むアイテムもレトロなものになっていて、配色もおしゃれ。
また、定点カメラ的な映像や、かなり引きで撮った画も上手く使われていて、映像を見ている気持ちよさもたっぷり味わえる。
例えば並木道を通って海辺の家に一時避難する場面。行きは並木道を引き画で撮り、帰りは車内からの定点カメラで撮っている。行きの穏やかさと帰りの緊張感が対比的に見えて面白い。
映画冒頭は、静かだが恐怖感のあるシーンから始まる。このシーンだけで、この映画の感触をだいたい感じ取ることができる。
この最初のシーンでこそ少しグロテスクな映像があるが、殺人系のホラー映画のわりには流血やグロいシーンはそれほど多くない。グロ描写や痛い描写が苦手な人でも比較的見やすい映画だと思う。
この映画はどちらかというと、グロさや痛さより、気味の悪さの表現が多い。ビクッとするシーンももちろんあるのだが、「ん・・・おぉっ!」みたいな、じわじわ気づいて、気づくと気味が悪い、というシーンが多い印象。
この、映像を見ている時に感じる「これって・・・」という宙ぶらりんな時間が、主人公たちが感じている不安感を映像的に表現している。
映像によって世界観に入り込む気持ちよさがしっかり詰まった映画になっている。
レコメンド作品
28日後
この静かなホラー映画の後に、あえて爆走感のあるゾンビ映画もいいのではないだろうか。
ゾンビ映画なので、グロい描写も痛い描写もある。でも、イギリスの田舎っぽい静かさもある。
ノーカントリー
ドライヴ
『イット・フォローズ』を見ていて、何度も喚起した映画。
映像なのか、音楽の使い方なのか、静かな雰囲気なのか、なんとなく似た雰囲気を感じる。
ドライヴもスタイリッシュ映像で超絶カッコいい映画なので、この映画みたいにな映像の映画ないかなぁ、と思う人にはおすすめしたい。
激突!
執拗に追いかけられる恐怖って、そういえばこういう映画もあった!