映画

サード・パーソン -作家の自責-

概要

フランスのホテルで執筆する作家マイケルは愛人アンナの逢引。しかしアンナには別の恋人がいる。

アメリカ人の会社員スコットは、イタリアのバーで娘をさらわれたという美しい女との出会い、彼女を助ける決心をする。

元女優のジュリアはアメリカのホテルで働きながら、以前夫だったリックとの親権争いに悩む。


何の接点もない3つの物語。クライマックスでその秘密が解き明かされる。

みんなのレビューまとめ

高評価

  • 後悔や自責を描くストーリーが切なくて共感できる
  • クライマックスにかけて読み解ける語りの構造が面白い
  • それぞれのストーリーに共通な問題を考えさせられる

低評価

  • 小説ならまだしも、映画としてはストーリーとして分かりにくい
  • やりたいことは分かるが、バラバラのストーリーを見せられた感があってスッキリしない
  • 描かれるストーリーが陳腐で、キャラクターの魅力が薄い

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:トリッキーな構成のストーリーが観たい時。少し暗く切ない雰囲気に浸りたい時。上手くいかない人生に苦悩するストーリーが観たい時。

3つのストーリー

ニューヨーク、パリ、ローマの3都市を舞台に、男女関係、親子関係をストーリーの軸とした群像劇。

どこか似た背景を持ちながら、全く違う人生と状況。その中で信頼、許し、愛情と裏切り、怒り、嘘が渦巻きながら、人間の弱さを描き出していく。

ひとつひとつでも成立しているストーリーを、3つ重ねることによって、安易にあるキャラクターに肩入れできない構成になっている。誰にでも共感可能なところがあり、誰にでも反感を買う部分がある。

濃厚な感情の波

全体的に物寂しげで、切ないトーンで映画は進んでいく。

その中にも、ロマンチックなアフェアがあったり、見知らぬ美女と打ち解けたりする楽しげなシーンもある。しかしそういうハッピーなシーンもまた、次の悲劇への前兆になっている。

冒頭のキャラクター紹介が終わりストーリーが始まると、「ロマンス映画か」とまずは感じる。バーで女を口説く男とホテルで情事およぶ男女が出てくるから。

しかし、ストーリーが進むにつれて、恋愛はあくまでストーリーのベースであって、登場人物たちの関心事はそれ以上のものだということが分かってくる。

そこにあるのは、自分の価値を感じたいという欲望だったり、自分の浅はかさを埋め合わせたいという願いだったり、大事なものを失いたくないという恐怖だったり、失ったものを取り戻したいという狂気だったりする。

誰かの嘘が人を裏切り、誰かの嘘は信頼の証になる。誰かにとって信頼は全財産より大事なもので、誰かにとっては商売道具でしかない。

さっきまで優しくて感情移入していたキャラクターが実はひどい人間だと分かったり、さっきまで気に食わないと思っていたキャラクターが突然可哀想に思えてきたり。

本心の見えない登場人物たちの行動は、キャラクター同士だけでなく、観客の態度も揺さぶってくる。

誰が善人で悪人か。誰が加害者で被害者か。暗くてアンビバレントな雰囲気をたっぷり味わえるストーリーになっている。

持ってる女、持ってない女、失った女

この映画、メインキャラクターとしては男女が3人ずつのはずなのに、やっぱり女性に重点が置かれているように感じる。

女性を軸にこの映画を見てみると、高そうなホテルで愛人の包容力の中に包まれているアンナ、ホームレスで娘のためにお金を稼いでいるモニカ、子どものためにキャリアを捨て、その息子に会うことができないジュリアの3人がでてくる。

3人共に苦しみがあり、一見すると十分に感情移入可能なキャラクターになっている。

しかし、ストーリーが進むにつれて、それぞれに過ちがあり、もしかしたら嘘があることが分かってくる。何が本当に本当なのかは、ストーリーの中では必ずしも明かされない。

この3人が対比的に登場することによって、単純な感情移入ができない映画になっている。

例えば、これがアンナだけが主役のロマンス映画だったとすれば、それは楽しい情事と苦しみが織りあったストーリーになり、誰もがアンナに肩入れして映画を観るだろう。

しかし、他の2人の暗い生活と対比されることで、アンナの幸福さは鼻につく要素になりかねない。アンナの可愛らしい仕草や表情が、いちいち苛立たしく感じたりする人もいるだろう。

そうすると、アンナはただの嫌な女で終わるのかといえば、やはりアンナにはアンナの悲劇があり、「それはいくらなんでも可哀想だ」と思わずにはいられない展開も用意されている。

そして、ホームレスのモニカにも幸福な展開があったり、ジュリアにも責を負うべき過ちがあったり、どの幸・不幸が誰に相応しいのか。簡単な判断を許さない構成としての群像劇になっている。

3人のストーリーが相対化されることで、見ているこちらの感情もかき回される。

観てハッピーという映画ではない。でも、自分がどのキャラクターにどういう感情を抱くのか。それを知ることで新しい発見があるかもしれない。

レコメンド作品

ノクターナル・アニマルズ

作家が小説によって過去の恨みを晴らすストーリー

ヒア アフター

全く違う場所で似た苦悩を持つキャラクターたちを描く作品

マンチェスター・バイ・ザ・シー

過去の過ちに対する自責で生きる気力を失っている男を描く作品

アメリカン・ビューティー

同じ家に住みながらそれぞれ違う生き方と葛藤を持つ家族を描いた作品