映画

ウルフ・オブ・ウォールストリート -ハイテンション・ローモラルのサクセスストーリー-

概要

リッチになることを夢見るジョーダンは、22歳でウォール街の証券会社に就職して働き始める。半年かけて下働きをしながら資格を取得し、いざ証券マンとして働こうとした日にブラックマンデーが起きる。

失業したジョーダンは、田舎の小さな会社に再就職。そこでメキメキと頭角を現し、そこそこリッチな生活を送る。じきにエリートとは言えない仲間たちを雇って、「ストラットン・オークモント」という会社を設立、詐欺まがいの営業で莫大な利益を上げ、会社はどんどん成長する。

ジョーダンは薬物、セックスに明け暮れる日々を送り、会社は猛獣の暴れるジャングルのような熱気に包まれている。ジョーダンはそこでカリスマ社長として君臨し、違法な方法で自身の財産も膨らませていく。

大金を稼ぐジョーダンはFBIに目をつけられる。ジョーダンは違法に稼いだ金を隠そうと画策するが、捜査の手は迫ってくる。

みんなのレビュー

高評価

  • 仕事としても、生き方としても、こんな世界があるのか、という驚きがある
  • ハイテンションで過激な遊びがとにかく見ていて楽しい
  • 不道徳ながら、自らの話術やリスクテイクの精神、野心にかけて生きる主人公が清々しく魅力的

低評価

  • とにかく不道徳(言葉遣い、薬物、女遊び、詐欺などなど)で共感できない。結末も納得できず不快感が募る
  • 派手なだけでストーリー的に無駄なシーンも多く、上映時間が長すぎる
  • メッセージがよく分からない

ナニミルレビュー

良い点!

3時間の映画とは思えないほど、退屈する隙間がない。

若者のサクセスストーリー、ハイテンションな詐欺営業、ドラッグでハイになるジョーダンたちのコミカルな姿、オフィスとは思えない無茶苦茶な会社と社員たち、ジョーダンのカリスマぶり、これでもかという贅沢、海を越えた破天荒。

単純に、ブラックユーモアたっぷりなコメディ映画として笑える。そして同時に、こんな狂気が経済の一部として世界に影響を与えていた(与えている?)のかという驚きがある。

さらに、電話口で証券を買う人や、ラストでジョーダンのセミナーを聞く人々によって垣間見える普通の善良な人々。この善良な人々が見えることで、ジョーダンの破天荒ぶりが一層際立つと同時に、この映画を観る観客に対する、刺すような視線も同時に描かれている。

ジョーダンはとんでもない悪人だ。しかし同時に、少なくとも彼が自分の人生を楽しむ度胸を持っていたことは間違いない。セミナーにちょこんと座る人々にその度胸があるだろうか。

証券マンの悪を通して、「本当に大儲けする勇気があるか? そこにちょこんと座って死ぬか?」と訴えてくるような映画。

「警察に捕まるからやめた方がいい」「他人に迷惑をかけるから最低だ」というようなお利口さんな視点ではなく、もっと根本的に、自分の人生として、「本当にこの勝負に全力を尽くせるか」と問われているような、そういう鑑賞後感になるド迫力な映画。

イマイチな点・・・

ジョーダンたちの破天荒さに不愉快になる人も多いだろう。初っ端から極めて不道徳なパーティーから始まるし、下品なシーンのオンパレードなので。

そして、オチ的にもジョーダンはそこまでの罰を受けずに社会復帰しているので、勧善懲悪的なラストを期待した人からすれば、モヤモヤするに違いない。

また、ジョーダンたちのアホな悪ふざけに面白さを感じなければ、3時間は恐らく長く感じると思う。ただジョーダンらの破天荒ぶり、ぶっ飛びぶりを示すためだけの、ストーリー的にはそこまで重要ではない乱痴気シーンも多い。もっとコンパクトにしろ、と言う意見も出て当然だろう。

ただまあ、そこは『ホーム・アローン』で言うところの、ラストの泥棒退治シーンみたいなもので、ケビンに対して「最初から警察呼べよ」って言っても仕方ない。この映画の乱痴気シーンは、「不要だ」と言っても仕方がないシーンだ。このハイテンションな馬鹿らしさこそが大きな見せ場なのだから。

羞恥心の向こう側

映画の疾走感と呼応するように、ずっと薬物を摂取し続けているジョーダンと仲間たち。

何をするにもドラッグを吸っている。ジョーダンが、朝起きてから、様々な薬を摂取することで、見事に自分の体調管理をしている説明はハイクオリティなブラックジョークになっている。

まさに、ドラッグの摂取が生理現象の一部になっている世界。

もちろん、彼らのドタバタはコメディとしても面白いのだが、それ以上にこの映画から感じるのは、羞恥心をなくした人間たちのとんでもないエネルギーだ。

この映画の中でも1番笑えるシーンは、ジョーダンがオーバードーズで地面を這うことしかできなくなってから、親友ドニーを救うまでの一連のシークエンスだろう。

ここでのジョーダンのみっともなさは、一般人なら思い出しただけで赤面してしまうようなものだ。

ジョーダン以外でも、例えばドニーは、パーティーにやってきたナオミの美貌を見て、皆が談笑している中、自分のものを出してオナニーし始める。

こんなことをしてしまったら、もうどんな顔をして人前に出ればいいか分からなくなりそうだが、そんなことはドニーを含めて誰も気にしていない。

また、オフィスでのパーティーに売春婦を呼んで大勢の前でセックスしているシーンもあるが、冷静に考えれば、大勢の前でセックスをするなんて普通の感覚では恥ずかしくてできない。

この映画を見ていると、こういうシーンばかり出てきて感覚が麻痺してしまうが、この映画に出てくる登場人物たちは、誰も彼も周りの視線なんて気にせず、そして周りの醜態なんて気にせず、とにかく、ガンガン「ファック」しまくっている。

それこそが、この映画のエネルギーの正体なんじゃないかと思う。つまり、羞恥心というブレーキがない。

倫理観が欠如した犯罪者を描いた映画はたくさんあるが、ここまで羞恥心を欠いた犯罪者を徹底的に描いた映画はほとんどないのではないか。

皆どんなに醜態を晒しても、次の日にはケロっとした顔をして会社に出勤している。

目の前でどれだけ悪趣味なことが行われていても、誰もがその倫理性を問うより、周囲と共に熱狂し、自分がその瞬間を楽しむことに集中している。

いろいろと酷いことが起きているこの映画の雰囲気が妙にカラッとしているのは、酷さがインフレを起こしていることに加えて、メインキャラクターたちが周りの目を気にせず、自分の欲望に異常に真っ直ぐだからなのではないか。

ジョーダンたちは、自分の野心を持ち、望みを持ち、そのためのテクニックを磨き、必要な会社を立ち上げ、新しい戦略を模索し、それでガンガン勝ち上がっていく。

そこにはリスクを恐れたり、他人の目を気にするような弱さはなく、とにかく力強く前進していく。

もちろん、彼らのやっていることは最低だ。だけど、彼らの心意気とその強靭さは、常人が憧れても不思議ではないものだ。

君の欲望をどうする?

この映画では、ジョーダンたちに食い物にされる被害者の姿は映されない。

しかし映画のラストは、出所したジョーダンのセミナーを聞くオーディエンスの顔で終わる。

映画序盤で、ジョーダンは最初のメンターであるハンナから、株屋のルールを説明される。

ジョーダンは、顧客ではなく、ただ自分が儲けることだけ考えればいいと言われ、株価の動きなんて誰にも分かるわけがないから、とにかく何でも売りつければいいのだと教えられる。

そして、ジョーダンが会社設立と共に迎える仲間は、賢いとは言えない人たちだ。

なぜ、こんな安っぽいペテンがまかり通るのか。

ジョーダンは、会社設立前、仲間にどうしてこのビジネスがうまくいくか説明する。 

「簡単だ。誰でも楽して手早く儲けたいと思ってる。毎日普通に働く連中、みんな金持ちになりたいと思ってる。そういう奴らに、買わなければ、と思わせればいいんだ」

ジョーダンはこうして会社を立ち上げ、どんどんクズ株を売りつけて自分のビジネスを軌道に乗せる。

さらに終盤、水難事故から生き残ったジョーダンは、一般の人向けの財テクセミナーを催そうと考える。そのコマーシャルでジョーダンは、自分の戦略に従えば、どれだけ簡単にリッチになれるかという文句を強調し、経験者の「セミナーに参加すれば、稼げます」という声を紹介している。

どうしてこんなに安っぽいペテンがまかり通るのか。

それは、楽して儲けようと考え、目が曇っている人が多いからだ。

結局、甘い夢を見せるジョーダンたちの口車に乗せられる、楽して儲けたい普通の人々が差し出すお金によって、ジョーダンたちは繁栄している。

そして、そういう気持ちは誰の心にも恐らくある。だから、ジョーダンは「簡単だ」と語っている。

ジョーダンは、悪魔のように、普通の人々の中にある弱さにつけ込むことで大金を稼ぎ、悪辣な生活を送っている。

最後、ジョーダンのセミナーに参加する普通の人々の冴えない顔を映し出して、「まさにあなたたちがジョーダンを支えている」と言わんばかりのシーンで映画は終わっていく。

さらにこの映画は、地下鉄に乗る人々や、ジョーダンの「このペンを僕に売って」という課題に必死に答えようとするセミナーの参加者、つまり普通の人々を、やや冷たい視線で捉えている。

ジョーダンは少なくともリスクを冒し、自分の能力を使って行動し、大富豪までのし上がった。

一方で多くの普通の人は、ただ誰かの甘い言葉に乗っかることで、楽してお金を儲けようとしている。そういう人がジョーダンから株を買う。

そういう普通の人々は、ジョーダンに比べて出来た人間だと言えるのか。

確かに株を買わされた人は被害者はだし、ジョーダンは加害者だ。

しかし、ジョーダンは自分の望みを叶えるために行動するガッツを持っていた。株を買った人は、幾らかのお金を払っただけで望みが叶うと考え、安易な道を行った。

自分の頭で考えず、何も挑戦しなかった人が、ジョーダンの凋落に溜飲を下げている。

この映画は、ジョーダンに対して「いい気味だ」と思わせるエンディングを取っていない。

監督は、ただ椅子に座って、誰かの失敗を見て優越感に浸る観客を良しとしていない。

ジョーダンはしょうもないペテン師だったかもしれない。それはそうだとして、じゃあ、君は君の人生をどうするの?

そう語りかけてくるようなエンディングになっている。

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