概要
かつて裏社会で名をはせた凄腕運び屋のクリス。現在は足を洗い、家族を持ち、幸せに暮らしていた。だが、妻の弟アンディがトラブルに巻き込まれ、犯罪組織に多額の借金を負ってしまう。
クリスはアンディを救うため、昔の仲間を集め、しぶしぶながら偽札密輸を計画を立てる。
レビューの印象
高評価
- 引退した凄腕が家族のために最後の仕事をするという、王道の面白さがある
- 常に一歩先を読んで行動する主人公がかっこいい
- トラブルに次ぐトラブルで、最後までハラハラして観られる
低評価
- 登場人物の行動や心情に納得できない場面が多々ある
- ご都合主義な展開が多く、ストーリーも陳腐
- 展開が早いわりに思ったほどアクションはなく、サスペンスも中途半端
ナニミルレビュー
オススメ度:B
こんな気分の時オススメ:凄腕がどうにかトラブルを切り抜けるハラハラ展開が観たい時。密輸を行うチームものが観たい時。
貿易船を使う凄腕運び屋
引退した元凄腕の仕事人が止むにやまれない事情で仕事を請け負う、という鉄板設定。
「運び屋」というと、カーチェイスでドンパチやりながら依頼人やブツを運んだりする設定のものも多い。
しかし、この映画の主人公クリスは密輸入を生業としていた頭脳・技巧派なキャラクター。
ストーリーの軸となる仕事も、海外から大量の偽札を密輸入すること。大量の現金は大きいし重い。これをどう国外から国内に持ち帰るのか。そこにクリスの職能が発揮される。
なので、ドンパチよりは隠密行動やその計画がメインの映画になっている。
とはいえドンパチ、アクションシーンもある。なぜなら、もちろん計画は計画通りに進まないから。
密輸に使うのが船なので、船が港に着いて、荷物を積み下ろしし、再出発するまでがタイムリミットとなる。
ある問題がまた次の問題を呼び、あの手この手を尽くして時間を稼ぎながら仕事をこなすハラハラ感。
銃撃戦に巻き込まれたり、装甲車を襲う強盗を手伝わされたり、アクションシーンもしっかり観ることができる。
ザラついた映像が渋い
全体的に映像が渋い印象で、ザラザラとした質感や、背景がボケたクローズアップも多く、ハードボイルドな雰囲気を醸し出している。
冒頭のシーンで、税関に見つからないようブツを海に投げ捨てた義弟が、その後タバコに着火して一服するシーンがある。蛇足な感じはしつつ、この映画の雰囲気を伝える良いシーンになっていると思う。
主人公クリスの親友であるセバスチャンの苦悩や行動もストーリーのポイントになっている。
良かれと思ってやったことが裏目に出たり、ちょっとしたミスが大きな悲劇に繋がっていったり、この映画全体に流れる静かな雰囲気と悲壮感は、主人公のクリス以上にセバスチャンに寄り添っているように感じる。
優しいけれど、大物にはなれない半端なキャラクターであるセバスチャンの哀愁も込みで映像の渋さを感じられる。
地元感のある舞台
この映画の登場人物は、往年の知人たちばかりである。
悪役ブリッグスも元々クリスたちの知り合い(元仕事仲間)だし、密輸に使う船の船長も知り合い、という感じで、田舎町の身内感が漂う世界観。そういう意味でヤンキー物のテイストも少しある。
個人的に面白かったのは、クリスを脅す悪役であるブリッグスが、ストーリー内で何度もクリスにボコられていること。こんなにボコられていたら、主人公を操る悪役として問題があるのではないか、と思うのだが、とにかくボコられている。しかもそこを娘に見られてて可哀想。
なんとも間の抜けた悪役に見えてしまいそうだ。しかし、ブリッグスがクリスの家族を襲うシーンなんかを見ていると、ちゃんと怖い。「コイツが自分の家に来たら嫌だなぁ」とちゃんと思わせてくれる振る舞いをしている。
しかし、このブリッグスもセバスチャンと同じで、片田舎の小物感があって切ないキャラクターだ。
この地元で唯一有能でメジャー感のあるクリスと、小物感が抜けないそれ以外の男たち。人気者と人気者になりきれない高校時代をずっと引きずっているかのような人間関係。
こういうところにも、ヤンキー物っぽさがあって面白い。
レコメンド作品
トランスポーター
凄腕運び屋を描く軽快なアクションエンタメ作品
ボーダーライン
国境を越える捜査の緊張感を描く作品
ブラッド・ダイヤモンド
ダイヤにまつわる社会問題を軸に主人公の苦悩と成長を描く作品
ワイルド・スピード MEGA MAX
裏家業引退のため、最後にチームでデカい一仕事をこなすストーリー