映画

SUPER 8/スーパーエイト -謎の列車事故と怪奇現象とジュブナイル-

概要

少年ジョーは幼馴染チャールズが監督する映画作りを手伝って過ごしており、その映画のヒロインとして撮影に参加することになったアリスと仲良くなる。

ジョーたちが夜中の駅で撮影をしている時、横を走った列車が事故を起こす。ジョーたちは危機一髪で助かり、映画を撮影中だったカメラに事故の様子が撮影される。

事故現場はすぐに軍隊によって閉鎖され、街の人々は事情を知ることができない。同時に、街では盗難や停電など不可解な事件が頻発し、最後には大火事がおこり住人は避難を余儀なくされる。

避難先でアリスを探すジョー。怪我をしたアリスの父を見つけ、アリスが怪物に拐われたと聞いたジョーは、アリスを助けるため、友人たちを説得して街に戻る。

みんなのレビュー

高評価

  • 8ミリカメラでの映画作りや、当時の風景、少年少女からくるノスタルジックな感覚が素晴らしい
  • 会話の端々に現れる思いやりに心温まる
  • 印象に残るシーンやキャラクターの表情が散りばめられている

低評価

  • 宇宙人、親子、恋愛、友達と要素を盛り込みながら、それらをストーリー上でうまく統合できておらず、チグハグな印象
  • 雰囲気は良いが、蛇足感のある設定も多く、全体的に展開がモタついている
  • 心理描写に説得力がなく、ドラマが薄っぺらく感じる。ラストもイマイチ感動できない

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:少年少女が映画を作るジュブナイルものが観たい時。レトロなモチーフが描かれる作品が観たい時。

良い点!

ジョーとアリスのピュアな恋愛がとても心地いい。

お互いを意識し始める視線のカットや、騒々しい仲間たちの中で2人だけの空気が出来上がっていく過程、そして2人きりになっても、ただ話をしているだけというピュアさ。

ジョーにせよアリスにせよ、周囲の目を気にしたり、余計な考えを持つことなく、自然体で相手を好きになっている感じが、ジュブナイル物ならではの面白さになっている。

また主人公だけでなく、その親や親友にも葛藤があるのもいい。

さらに宇宙人も、単なる悪ではなく、かといって応援できる善でもないバランスになっていて、そこも、この少年たちの物語の中で深みとして効いてきている。

イマイチな点・・・

ストーリーがあまり上手くまとまっていない。

例えば、ジョーの父ジャックの葛藤や、捜査活動自体に面白さはあるのだが、それがラストの事件解決と何も関係していない。

またジョーの母が亡くなっているという設定も、あまりジョーのキャラクターに影響を及ぼしている感じがしない。母の死は、むしろ父ジャックの葛藤になっているが、それはメインストーリーにはあまり影響しない。

何より、重要なアイテムになるかと思われた、ジョーたちが手に入れたあるアイテムも、ストーリー内では意味のある物として使われない。

別個に見るとそれぞれ面白そうな要素が散りばめられているんだけど、それが一本のストーリーに練り上げられていない。

ジョーとアリスの恋

さまざまな要素があるこの映画で、1番グッと来たのは、ジョーとアリスの恋模様だった。

思春期に入るかどうか、というタイミングの甘酸っぱさ。

多くの友人に囲まれていながら、2人が視線を送り合う様子で心が接近していく過程を描いているのも上手いし、2人きりになった時、自然体で仲を深めていくのも素晴らしい。

2人を見ていて心地よく感じるのは、2人の警戒心や羞恥心が希薄で、性欲がほぼないからだ。

これが1番端的に表れるのは、夜にアリスがジョーの部屋を訪ねるシーン。

夜、部屋に2人きりで、しかも停電中。にも関わらず、2人はなんの葛藤もなく、向かい合ってただ会話をしているだけ。

これが高校生以上の恋にはない、この年代ならではのときめきシーンだ。

もちろん高校生でも、この状況で何もしないということはあるだろう。しかし、そこには絶対に葛藤や気まずさがある。

ジョーとアリスの年代は、「何もしない」ということが自然であり得る最後の年代だ。

このシーンはかなり直接的だが、例えば、アリスがジョーの部屋で模型を見せてもらうシーンも上手い。

そもそも模型作りはちょっとオタクっぽい趣味だ。それは「灰色だけで14種類ある」というセリフのどぎまぎした感じにも現れている。

でも2人の年代は、そういう「イケてる」「イケてない」みたいな社会的な価値基準が、まだそこまで重要じゃない年代だ。

だからこそ、このシーンに余計な意味が乗っからず、単純にジョーは自分の好きなものをアリスに紹介し、アリスもそれを自然に驚きながら聞いている。

この余計な力みのなさは、スクールカーストが重要事項になってしまった後には、取り戻せない自然さだ。(それを超えて大人になってしまえば、また取り戻せるかもしれないが)

ギークたちのゾンビ映画作りを手伝っている時点で、アリスもわりとそういうタイプなのかもしれない。

しかし、アリスのような美少女が、無邪気にオタクグループの中にいるのも、やはりこの年代が最後だと思う。

そして、ゾンビメイクをした顔でジョーといちゃつくアリス。どう考えても、ゾンビメイクをした顔は、自分のベストな顔じゃない。でも、そこをあまり気にしすぎていない感じも力みのなさだ。

ちなみに、ゾンビ演技練習シーンは、そのあとアリスが初めて見せる微笑みまで含めて、この映画最高のシーンと言える。

こういうピュアな恋の何が良いのか。

この映画を観ていると、それは余計な意味が乗っからず、2人の間で完結していることの完璧さなのではないかと思う。

余計な意味とは、先ほど書いたような「イケてる」「イケてない」とか、人間関係における損得とか。

さらに言えば、「夜中に部屋を訪ねたら、変に思われるんじゃないか」とか、「この状況で何もしないと、逆に失礼なんじゃないか」とか、そういう余計なことを考えないこと。

「この人のこと好きだな」「一緒にいて話したいな」という自然で、力まない感情だけで完結できる恋。

ジョーとアリスの恋は、この2人のキャラクターを通してできる最高の恋愛を見せてくれている。

キャラクターたちの関係性

比較的キャラクター数の多い映画だが、それぞれのキャラクターにしっかり葛藤を置いている点も、この映画に厚みを与えている。

もちろん、主人公ジョーとヒロインのアリスは、親の問題で葛藤を抱えている。

それに加え、ジョーの親友チャールズは片思いに悩み、ジョーの父ジャックは妻の死をまた引きずっている。そしてアリスの父ルイスも孤独感や罪悪感に苛まれており、宇宙人も単純な悪ではなく、ある経緯を持っている。

チャールズの片思いもまた、ジョーたちの恋に負けず劣らず、この年代っぽいなぁ、という甘酸っぱさがある。

撮影後にレストランで食事を取るシーン。ここはジョーが模型作りの話を通して、初めてアリスとまともに会話をするシーンだ。

騒々しい友人たちの中で、ジョーとアリスだけが列車事故の話をしており、2人の連帯感が生じる最初のときめきのシーンになっている。

しかし同時に、ここでのチャールズの行動を見ていると、アリスが興味を持ったジョーの話を遮ったり、背伸びをしてコーヒーを頼んだりして、一生懸命自己アピールをしていることが分かる。

ジャックとルイスの関係性も良い。

ルイスは街の厄介者。ジャックは真面目な警察官。そしてジャックの妻は、ルイスの数少ない理解者だった。

その妻が、仕事を休んだルイスの代わりにシフトに入ったことで、事故にあい死んでしまった。

もちろんこれは不幸な事故なのだが、「なんでルイスじゃなくて妻が」というジャックの気持ちは想像に難くない。

そして実はルイスの方も「自分が死ぬべきだった」という苦しみを持って生きている。

2人は妻が死んで以来、初めてまともに会話をし、そこでルイスがジャックに謝る。そしてジャックが「あれは事故だった」とルイスを慰める。

こうしてルイスは罪悪感を、ジャックは恨みを乗り越える。

この2人の関係もなかなか良い。

良いドラマが散りばめられているのだが、それぞれのドラマが、ストーリー展開にうまく接続されていない感があるのが本当に残念。

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