概要
ニック、デイル、カートの3人は、それぞれパワハラ、セクハラ、めちゃくちゃな経営をする上司に悩まされていたが、それぞれ上司に反抗できない社会的な理由があり困っていた。
ある日、ふと冗談で上司を殺してしまおうと話したのがきっかけで、3人は上司の殺人計画を考え始める。
殺し屋を探し、依頼料を払うが、この殺し屋はペテン師で、アドバイスだけで実行はしないと話す。3人は仕方なく、彼のアドバイスを元に、自分たちで手を下すことを決意。
動機で疑われないように、3人がそれぞれお互いの上司を殺すことに決め、上司の身辺調査を進め、犯罪計画を実行に移していく。
レビューの印象
高評価
- ヤバイ上司という現実的な設定でありつつ、徹底的にバカバカしく出来事を描いていて楽しく笑える
- キャストがそれぞれのキャラクターをやり切っている
- テンポがよく、展開もしっかりしている
低評価
- 主人公たちの行動がでたらめ過ぎて、途中でどうでもよくなる
- せっかく良い題材なのに、下品さが際立っていて風刺が弱い
- 後半、わりと凄惨なことが起きてテンションが下がる
ナニミルレビュー
オススメ度:B
こんな気分の時オススメ:おバカ映画が観たい時。ブラックユーモアや下ネタ満載のギャグが観たい時。仲良し3人組が奮闘する姿を観たい時。
良い点!
上司に逆らえず奴隷化してしまう現代アメリカの社会問題をベースにしながら、素人の頼りない3人が殺人計画を実行するという重めなテーマをドタバタコメディに仕上げているところが面白い。
また、計画を進める中で、せっかくのチャンスを、キャラクターたちのだらしなさやドジによって不意にしてしまうもどかしい展開が、ストーリー的にもギャグとしても楽しめる。
主人公たちが殺人計画をするストーリーなので、ややダークな話かと思いきや、ラストはすっきりハッピーエンドで見られる。
イマイチな点・・・
セクハラ上司ジュリアに対する罰が、ちょっと肩透かしな印象がある。
確かに、この女性から男性へのセクハラに関しては、映画内でも「むしろ羨ましい」という描かれ方にもなっていて、そのトーンで考えると、あの結末でも適切な気もする。
しかし、このテーマの映画であれば、そこはもうちょっと真面目に描くべきだったのではないか、と思わないでもない。女性からのセクハラを、それ以外の問題と同等に扱わないことで、マッチョな偏見に受け取られかねないのではないか、という気がする。
もちろん、デールが悩んでいる様子は描かれているし、1本の映画のストーリーで全てをカバーする必要はないわけだけれど。
酷い上司、辛い状況
ダメ上司に振り回される映画はよくあるが、度を超したモンスター上司を題材にした笑えるコメディ映画はなかなか見かけない。
本作は、モンスター上司を殺そうと計画する3人の物語。殺人計画とその顛末をコミカルに描くブラックユーモアたっぷりのコメディ映画である。
基本的には気心の知れた男3人がわちゃわちゃする映画なので、笑いながら楽しんで観ることができる。
殺人計画も、いい意味でリアリティはあまりなく、熱心にストーリーを追うというより、リラックスして楽しんで良いものになっている。
ただ、この映画の題材となっているハラスメントに関しては、やや誇張されているとは言え、その辛さに共感して暗い気分になる人もいるかも知れない。
昇進をちらつかせて部下をいいように使うパワハラ上司。職場で性的嫌がらせをしてくるセクハラ上司。自己中で会社を私物化する無能な上司。
こんな職場環境が実際にあるとすれば、これは普通に人権の問題として扱うべき内容だ。
というのも、3人のうち2人は、この上司に弱みを握られている。ニックは転職する際の紹介状をこの上司に書いてもらう必要があり、下手に逆らうと社会的に転落しかねない。デールは性犯罪の経歴があり(冤罪だが)、逆らうと警察に訴えると釘を差されてしまう。
「辞めたければ辞めればいい」と簡単に言ってしまえない状況にそれぞれが立っており、パワハラ、セクハラに耐えなければならない生活を送っている。
この映画の中ではこの部分が誇張されて描かれているとはいえ、相手の弱みを握ってしまえば、とてつもない権力になってしまうヤバさがよく表れている。
犯罪歴による搾取は、例えば『ドラゴンタトゥーの女』(特にスウェーデン版)などでは、かなりえげつなく描かれている。
きっと、自分の経験が重なったりすると、映画を観て笑いつつも、その裏にある恐ろしさを感じることができるはずだ。
間の抜けた殺人計画
裏にある社会問題は恐ろしいものだが、コメディなので、この映画では可笑しみのあるストーリーとして描かれている。
3人は終わりのないハラスメントに苛立ち、ちょっとした冗談話から本当に上司を殺害しようと思い立つ。
殺し屋を探して特殊な性サービスの男性を呼んでしまったり、危険なバーである男にまんまと騙されたりしつつ、計画のため、情報を集めに上司の家に侵入する。
そこでもまた、コカインをひっくり返してハイになったり、出来心でイタズラを始めたりと、全く緊張感のないトーンで計画が進行していく。
ドジで落ち着きがないデール、緊張感がなく余計なことをしてしまうカート。そんな2人に苛立つニック。
そんなゆるゆるな情報収集ではあったが、予想外にも上手いこと事故に見せかけて殺害できそうなヒントを得る。
しかし、そんなに上手くは行かず、ドタバタしながら逆にニックの上司にはめられそうになってしまったりする。
3人の仲良しオジサンが、可笑しな殺人計画を進めるドタバタコメディとしてももちろん面白い。
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