映画

ピラニア -人体が削れるグロ描写とエロ描写で押し切るB級パロディ映画-

概要

春の観光シーズン。アリゾナ州ヴィクトリア湖で地割れが発生。地底から古代のピラニアが大量に現れ、釣りをしていた男性が食われて死んでしまう。保安官ジュリーはこの異様な死体を発見し、調査に乗り出す。

同じ頃、休暇に浮かれる観光客の中、ジュリーの息子ジェイクは、アダルトビデオの撮影に来た監督に地元を案内するよう頼まれ、誘惑に負けて承諾する。

ジェイクは妹たちの子守をすっぽかし、撮影に出かける。ジェイクの幼馴染ケリーは撮影クルーの乗る船に乗り込むジェイクを見つけ声をかける。監督はケリーも同行するよう誘い、ケリーとジェイクは共に撮影クルーに加わることに。

保安官らはだんだんと殺人ピラニアの正体に近づき、湖で盛り上がる観光客に岸に上がるよう警告するが、誰も聞かず。ピラニアがちゃくちゃくと水中を進み人々の足元に迫っていく。さらに、ジェイクらが乗る撮影クルーの船にもピラニアが襲来し、船が座礁。ジェイクらは沈んでいく船の上で取り残されてしまう。

みんなのレビュー

高評価

  • 中盤以降のパニック展開、グロテスク描写に見応えがある
  • 『ジョーズ』のパロディとして面白く、かつコミカルな演出で楽しく観られる
  • エロ・グロ・悪ふざけに振り切っていて、B級感が楽しい

低評価

  • パニックが起こるまでが退屈
  • よく言えば王道だが、既視感のある展開
  • 全体的に下品
  • 登場人物の行動にツッコみたくなる場面が多い

ナニミルレビュー

ポジティブ

B級感満載で悪ノリしまくりなスプラッター映画として爽快な仕上がり。

とにかく、前半やたらエロ描写が多く(そもそもアダルトビデオの撮影が主人公を動かすキーになっているから)、エロいサービスショットの後、後半スプラッター展開ね、はいはい、というテンションで観ていると、スプラッターが想像以上の人体破壊ぶりで驚いた。

正直、誰も彼も定型的なキャラクターで、葛藤も薄っぺらくストーリーは弱い。

しかし、この映画において基本的にストーリーはエログロ描写を演出していくための下敷きでしかないと思う。そして、深いドラマを描こうという素振りを見せることもないので、そこにガッカリするとしたら、観客側の問題だろう。

ということで、とにかく最初から最後までサービスショット(エロモグロも)をつなぎ続けましたという印象の映画。

人体破壊描写に関して、爆発で体がバラバラになったり、体が切断されたり、内臓が出たりなどの描写をよく見るが、本作は敵がピラニアということで、体のいたる箇所の肉が食いちぎられて、「体が削れていく」という描写になっている。

個人的に、この描写は初めて見たので新鮮だったし、視覚的なショックも大きかった。

最初にピラニアの巣へと入っていった調査員が襲われ、そのうち1人を船の上に上げたところで、下半身がほぼなく、骨だけが残っている状態が描写される。ここがまず驚き。

そして、主要人物であるAV監督の最期もすごい。ピラニアに襲われながらも、なんとか救出されるのだが、腰から下がボロボロ。しかし、骨は残っている。この「骨とその周囲の肉だけが残っている身体」がなんとも痛々しくて、単に体がバラバラになったり、大量に出血する以上に悲惨なビジュアルになっている。

少しずつピラニアの驚異を見せ、だんだんと緊張を高めて、ピラニア襲撃シーンが始まると、水辺は阿鼻叫喚の凄惨な状態になる。

これでもかとスプラッターを重ね、見応えがある描写が続く。

岸は逃げ逃れる人と救助される人であふれ『プライベート・ライアン』的な悲惨でグロテスクな光景が繰り広げられる。しかし、このあたりまでくるとすでに目が慣れてきており、そこで起こる悲惨な事態はすっかりギャグに見えてくる。

運ばれている途中で上半身と下半身がちぎれてしまい、絶叫したあと眠るように絶命する女性の描写があったり、みんなで逃げ込んだ海上のステージが倒れて大勢が滑り落ちたり。ここはもはやドタバタコメディにしか見えなかった。

一方で、体の皮がめくれたりしながら苦しんでいる人々の寄りの描写にはしっかり「痛そう・・・」というショッキングさがあり、行き過ぎてギャグっぽくなるにしても、シリアス目に痛みを描くにしても、真面目に惨状を描写しているのが凄い。

期待していた以上にスプラッター描写がしっかりしており、想像を超える映像の凄さだった。ぼくは配信サービスで観たのだが、これは映画館で観なければ観たといい難い作品だとも感じた。

イマイチな点・・・

まずピラニア襲撃までが長い。というのもストーリーが弱いので、結局「ピラニア襲撃が見たい」以外の期待感があまりなく、そこにいたるまでは長い前フリになっているから。

それをカバーするためにも、ひたすらエロいシーンが続くわけだが、うーん、やっぱり映画鑑賞としては退屈だった。

本当は、ジェイクとケリーのロマンスがもっと良ければ、そこを楽しんで観られたと思うだが、この映画のロマンス(というか人間関係全般)はあまり良くない。

なぜロマンスがいまいちかといえば、登場人物の行動にいまいち説得力がなく、結果として、あまり魅力的なキャラクターにもなっていないから。

さきにも書いたとおり、それほどストーリーがしっかりしている映画ではないし、それが大問題だというタイプの映画でもない。なので、ある程度は行動に説得力がなくてもそれはご愛嬌と思って観ていられる。

とはいっても、納得できない行動が続くと感情移入しづらい。そうするとアツいシーンもなんとなく冷めてしまうし、命の危機でもハラハラが弱まってしまう。

主人公ジェイクはやや弱気な好青年で、エロい誘惑につられて母親の言いつけを破り、クライマックスではケリーを巻き込んでしまった責任を感じ成長するという流れになっている。

ジェイクは「自分のせいでケリーを巻き込んだ」というが、実際はケリーは止めようとするジェイクを振り切って自分から危険に飛び込む形になっている。その上、AV監督にそそのかされるケリーに対し、ジェイクは常に軽率な行動をやめるよう注意している。

ジェイクは最初からずっとケリーに対しては責任感をもって行動していて、なので、ラストでのジェイクの後悔に説得力がなく、だから彼の「成長」も上辺だけのものにしかみえない。

ジェイクが終始真面目な男として描かれている。このしわ寄せがケリーの方にいっており、ケリーはだいぶお転婆で奔放に描かれている。

ここは好き好きなので、奔放だからケリーのキャラクターが弱いとか魅力的でないというわけではないのだが、この映画全体的に、女性は性に奔放な存在として描かれている(こういうジャンル映画的なステレオタイプ)。

その中でヒロインも奔放なキャラクターにしてしまうと、個性が埋没してしまい、いまいちヒロインの特別な魅力が感じられない。

映画冒頭こそ、調子のいいイケイケな男の誘いを断って、真面目なジェイクの方へ行く、という行動でケリーの性格付けがなされている。この時点ではジェイクとケリーの関係性には説得力がある。

だが、ケリーがだんだんと性的な遊びに乗せられていくと、ケリーの性格が曖昧になる。(個人的に、ケリーが乗せられていく過程は、口車に乗せられて性的な行為を求められる女性の姿を見ているようで、いや~な感じがした。)

いたずらっぽくてノリが良い女性の魅力を描きたかったのだと思うし、そういうキャラクターだって全然アリなのだが、このストーリーにおいては、まずキャラブレしていること、そしてジェイクの誠意を無視していることによって、やはりケリーは魅力的な人物には見えない。

よってジェイクの恋心にも説得力がない。だから、クライマックスの救出劇もいまいちアツくない、という感じになってしまっている。

映画クライマックスでは、スプラッター描写の中、いろいろと「アツい」展開も描かれる。だが、どれも記号的でグッとは来ない。

例えば、黒人警官が水辺に立って船のスクリューでピラニアを退治しながら、同時に食われてしまう英雄的な描写がある。たしかに、身を挺して敵にダメージを与える行為は英雄的だと思うけど、しかし、普通にもっと上手いやり方あっただろうし、その行為によって直接的に救われている被害者が描かれていないので、勝手に無茶な行為をして死んでいったように見えてしまう。

それにそもそも、そこまでのストーリーで観客がこの警官に感情移入する余地がなく、ちょい役が死んだくらいにしか見えないのに、画面上では彼の同僚が鎮痛の面持ちになっており、観客との感情のズレがあらわになっている。

英雄的行為による殉職と、仲間の死を痛む同僚たち、という記号的な感動描写をしているだけで、そこにも説得力がない。

また、主人公らが助かるかどうか、スリリングな救出劇が最後にあるのだが、ここもあまりにも行動に説得力がない。

ピンと張ったロープを伝って危険な船から安全な船へと移動するのだが、なぜかみんな同時にロープを渡りだす。それによってロープがたるみ、水面に近づいたことで犠牲が出てしまう。

いや、普通に1人ずつ渡ればいいだろ、と誰もが思うはずである。どう考えても、途中で犠牲者を出してスプラッターを描きたいがための行動であり、せっかくハラハラする場面なのに緊張を削いでいる。そして、その頃にはすでにスプラッター描写も見飽きているので、描写で驚くこともできず、すごく冷めた感情になってしまう。

作り手の都合を考えれば、ここでちまちま1人ずつ渡らせるシーンなんか撮ってたら、それこそモタモタして緊張感が削がれるだろ、というのは分かる。分かるのだが、それは映画の作り手の感情としてはリアルだが、命をかけてロープを渡っている登場人物たちの感情としてはリアルじゃない。よって、観客にとってもリアルではなく、「なんでみんなで一緒に渡ってるの?」としかならない。

その後、ジェイクとケリーを救うために船で2人を繋いだロープを牽引しようとするが船のエンジンがかからない、という展開になる。危機的状況で、なかなかエンジンがかからない。古典的だが効果的な演出だと思う。

一方、エンジンがかからずパニクっている間「いや、とりあえず手でロープ引っ張れよ」「ジェイクとケリーも待ってないで泳げよ」と思わずにはいられない。

また、ジェイクによるケリー救出劇は、ピラニアに「ある餌」を与えることで、時間稼ぎをして実行される(そんな都合よくピラニアがいなくなるわけないだろというツッコミは野暮)。なので、この場面ではタイムリミットが緊張感を演出している。「またいつピラニアが戻ってくるわからない!急がないと!」そういう場面なのだ。

そのわりに、ジェイクもケリーもモッタモタしており、熱いキスを交わしたり、なぞの装置を作ったりしている。いやもうその暇があったらさっさと泳げ。っていうか、ピラニアはいないんだから、そもそもジェイクが潜る必要性は本当はない。天窓から会話はできるんだから、「今のうちに上に上がってこい」と言うだろ普通。上に上がりさえすればとりあえず他の方法を考えられるんだから。

そして、ジェイクは最後に船に積まれていた謎のガスを使って大爆発を起こす。一応、ピラニアに一発仕返しをするスッキリシーンっぽく演出されているのだが、そもそもピラニアがどれくらいの数いるのか分からないのに、爆発に巻き込まれて死ぬリスクをおかしてそんなことする意味がわからない。

さきほどの黒人警官もそうだが、とにかく、ピラニア群の全貌が分からない状況で、目の前のピラニアをちまちま殺しても、観客は何の意味も感じられず、なんのカタルシスもない。

とにかく、クライマックスにかけて単に「そういう絵」が撮りたかっただけという展開ばかりになっていき、最後の印象が悪くなってしまった。

まとめ

いろいろとネガティブなコメントが出てしまい、かなり悪評感が出てしまったが、そんなんツッコんで観るような映画じゃないだろ、と言われたら、その通りだと思う。とにかく「削れた人体描写」の凄さを味わうだけでも価値のある作品。

とはいえ、やはり登場人物の魅力が薄いのは難点ではあると思う。この手の映画なら、出来事や設定がご都合主義で進んでいってもそれほど違和感はないが、人間の行動が違和感だらけだとどうしても興を削がれてしまう。とりあえず「こいつは助かって欲しい」「こいつは死んでほしい」と思わせてくれるぐらいの登場人物ではあってほしい。

とはいえ、90分を切る長さの映画なので、白ける前に見終わってしまう。スプラッター映画が好きな人におすすめできる作品であるのは間違いない。

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