概要
愛するジュリーに結婚を承諾させたいティム。ジュリーのキャリアが上手くいっている中、ティムもある企画が評価され、ようやく昇進のチャンスを得る。
上司のランスに呼び出されたティム。ランスは、昇進を決める前に、ある晩餐会に参加してくれとティムに頼む。その晩餐会は、参加者が変人を1人ずつ連れて参加し、その変人をバカにして楽しむという悪趣味なものだったが、この晩餐会に参加し、ランスに気に入られなければティムの昇進は望めない。
この晩餐会にジュリーは反対し、ティムは参加を諦めようとするが、たまたま剥製職人のバリーを車で轢いてしまい、彼と知り合いになる。バリーは死んだネズミを剥製にし、作品を作っている少し変わった人。ティムは咄嗟にバリーを晩餐会へ招待する。
しかし、それがジュリーに知られジュリーとはケンカになり、彼女は出ていってしまう。そこに約束の日を間違えて、晩餐会の前日なのにバリーが現れる。
バリーはティムの生活をむちゃくちゃにするが、同時に、ジュリー探しを助ける。ティムはだんだんとバリーに対する友情を感じ始め、最終的にティムはバリーを晩餐会に連れていくのを諦める。
ランスの期待を裏切るのを承知で、ひとりだけで晩餐会に参加しようとするティムだが…。
レビューの印象
高評価
- それぞれに個性が際立った登場人物たちの関わりが面白い
- 社会的立場が全く違う登場人物たちの間に優しい人間関係が生まれていくストーリーが感動的
- ストーリーがよくまとまっている
低評価
- 変人たちの行為が単なる迷惑行為に感じてイライラする
- コメディにしてもロマンスにしても男同士の友情にしても、王道すぎて陳腐
- 突出した可笑しさがない
ナニミルレビュー
ポジティブ
スムーズな展開もさることながら、そこに説得力をもたせている個性的なキャラクターたちの魅力が素晴らしい。
ただでさえ困難な人間関係にぶちあたっている主人公のティムが、さらに、おかしな人に囲まれて、どんどん不幸なシチュエーションに陥っていくさまを本当に可笑しく描いている。このまさにコメディなストーリーの上手さ。
そして、「おかしな人を笑うこと」を批判する作品でありながら、「おかしな人で大笑いさせられる」作品でもあり、そして、「おかしな人」をとても暖かく、優しく描いた作品である。
ネガティブ
あんまりない。けれど、冷静に見ると、ややご都合主義的な展開も意外と多い。
ただ、そもそも非常識なキャラクターがたくさん出てくるドタバタなストーリーなので、あまりそういう細かいところは気にならないと思う。
何はともあれ、コメディアンの面白さ
ちょっと変わった人をバカにして笑いものにする。コメディではよくあるこの構図のモラル的な危うさを感じさせる、ちょっとメタな視点が入った作品。
「キャラクターを笑いものにすること」に抵抗を感じながらも、それでもコメディアンたちの面白さに笑ってしまう。
笑うことの攻撃性をテーマにし、コメディ映画としては大きいなハンデを背負いながら、それでもガンガンこちらを笑わせてくるコメディアンたちの演技に感服する。
純粋すぎて空回りするバリー。ナルシストで説得力抜群の意味不明な発言を繰り返すキーラン。高慢で空想の世界に生きるサーマン。自己中心的で自分の感情にしか興味がないストーカーのダーラ。
ティムとバリーを中心としながら、それぞれのキャラクターが2人と関係することでさまざまなギャグが炸裂している。非常識な行動を取る人間同士が関わることで生まれる予想外の会話やアクションのが最高に面白い。
ギャグとストーリーテリング
この映画のストーリーは、ストーリー展開の全てがギャグによって展開していくと言っても過言ではないほど、まさに「コメディ映画」という作りになっている。
ベースにあるのはティムの出世したいという願望と、そのための晩餐会への参加。ティムがバリーと出会い、彼と晩餐会前日から当日を一緒に過ごす様子が、ストーリーの大部分を占めている。
ジュリーとケンカした後、バリーに無理に体を引っ張られたせいでティムは腰を悪くし、それによってティムはバリーと行動を共にしなければならなくなり、さらにバリーの勝手な行動を遮れなくなる。
バリーが勝手にキーランに電話をかけられたことでジュリーの浮気を疑い、バリーがキーランの部屋の中に車の鍵を投げ入れたことで、キーランの部屋に侵入することになってしまう。
そして、バリーが勝手にストーカーのダーラへメッセージを返信したことでティムの家もバレ、バリーの余計な気遣いのせいで大事な商談もむちゃくちゃにされ、しかもジュリーとの関係も悪くなってしまう。
バリーのおかしな行動はすべてギャグになっている上に、このおかしな行動が映画のストーリーを推進させている。そして、そんなストーリーを経ているうちに、ティムはバリーに友情を抱き始め、それがクライマックスへと繋がっていく。
バリーが登場してから映画が終わるまで、ギャグのないシーンがないのではないかというくらい、ギャグによって映画が動いていく。それも、物をぶん投げるようなドタバタギャグから、バリーの悲しすぎて笑える過去による哀愁感のあるギャグまでさまざま。
さらに、そのバリーの過去が、ティムのバリーに対する感情を変えるきっかけになっていたり、バリーがティムのために自己犠牲をする展開につながったり、ギャグでありながらストーリー的にどんどん回収されていく。
笑い、笑われることの暴力と愛
タイトルに成っている「奇人たちの晩餐会」というのは、おかしな人を晩餐会に招待して、それを見て嘲笑い、1番おかしな人にトロフィーをあげるという、悪趣味な晩餐会のことである。
この晩餐会や、それに参加するビジネスマンたちを通して、「他人を笑う」ということの、悪趣味さや攻撃性が描かれている。
そして、これは画面内のキャラクターたちだけを批判しているのではなく、コメディ映画を観て笑っている観客にも跳ね返ってくる。
だから、この映画をを観ていると、可笑しく笑いながらも、笑ってしまうことに対する内省も同時に生じてくる。
しかしこの映画は、「人を笑う」ということを、単に批判して終わっていく映画ではない。
クライマックスで、ティムはバリーに、晩餐会の趣旨を話し、バリーも自分がバカにされていたことに気付いてガッカリするシーンがある。
しかし、ティムが思っていたほどバリーはそれを気にしておらず、バリーはバカにされてもいいから、1番になりたいとティムに話す。
そこから、バリーは晩餐会を大いに沸かせ、トロフィーを受け取って満足する。
笑うということの中には、相手をバカにし攻撃する側面がある。と同時に、相手を受け入れ、認めるという側面もある。
バカにして嘲笑う関係が不健全であるように、相手のおかしなところを笑えないのも健全な関係とは言えない。
バリーは非常識な行動と、度が過ぎた純粋さでティムの生活をめちゃくちゃにする。同時に、バリーが作るミニチュアは素晴らしいものだし、ティムに対する優しさも本物だ。
おかしなところは別に笑ってもいい。大事なのは、そのおかしなところだけがその人のすべてではないと、ちゃんと相手を理解することだ。
笑いながら、そんなことを思わせてくる、とても楽しい映画。
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