映画

ラブリーボーン -ドラマ、スリラー、ファンタジーを超えて描かれる受容の物語-

概要

14歳の少女スージー・サーモンは、穏やかな街で平和に暮らしていた。家族も仲良く、初めての恋にときめきながら、幸福な思春期を送っていたスージー。

サーモン家の住む住宅街は一見平和な場所だが、近所に住む男ハーヴィーは少女を襲っては殺している連続殺人犯だった。

不幸にはスージーはハーヴィに目をつけられ、ある日、学校の帰り道で捕まり、殺されてしまう。

事件はすぐに発覚するが、犯人は見つからず、数年の月日が過ぎていく。

その間に、スージーの妹リンジーはハーヴィーに不信感を感じだす。独自に捜査を続けていた父ジャックも、ハーヴィーの不審な行動に確信を持ち行動するが、証拠もなしにハーヴィーに襲いかかったことで、逆に警察に咎められてしまう。

母アビゲイルは疲弊し、ジャックは捜査に取り憑かれ、リンジーは真相を求めつつ、自身の身にも危険を感じる。ジャックはアビゲイルのため彼女の母を呼ぶが、アビゲイルは家を出ていってしまう。

スージーは自分の家族の様子を、この世と天国の間の世界からずっと見ている。

同じくそこに居合わせた少女ホリーは、「過去のことは忘れて天国に行こう」とスージーを諭すが、スージーはどうしても事件を諦め、家族から離れる決心がつかない。

そんな中、リンジーはハーヴィーが出かけたのを見計らってハーヴィーの家に侵入する。彼が犯人であることを示す決定的証拠を掴んだリンジー。

そして、母が家に帰ってきて、久々に家族が集まる。

残された家族とそれを見守るスージー。家族の苦悩と狡猾なハーヴィーが野放しの恐怖。

シリアスで残酷な事件と、スージーのいるファンタジックな世界、そして、残された家族のドラマが絡み合いながら紡がれるシンボリックなストーリー。

みんなのレビュー

高評価

  • 残酷で悲劇的な話しながら、家族愛が美しく描かれている
  • 「魂の救済」というスピリチュアルなモチーフが幻想的な映像で描かれていて見応えがある
  • 様々な出来事を見せながら、あるメッセージへ着地するストーリーに深みがある

低評価

  • 不条理な顛末でモヤモヤする
  • 登場人物たちの行動がバラバラでストーリーとしてまとまっていない

ナニミルレビュー

オススメ度:A

こんな気分の時オススメ:宗教色の強いストーリーが観たい時。家族の悲劇・葛藤を描いた作品を観たい時。ファンタジックな映像を観たい時。

ジャンル横断の不思議な映画

一件の残酷な殺人事件を軸にストーリーが進行するこの映画。

一見サスペンス・スリラーのようにも思えるが、この映画が描くのはそれだけにとどまらない。残された家族の苦悩を描くヒューマンドラマでもあり、スージーがいる死後の世界を描くスペクタクルファンタジーでもある。

そして、これらバラバラの要素が、ひとつのメッセージへと収れんしていくストーリーが見事。

 

ざっくり言ってしまうと、ひとつの事件から3つのストーリーへと分かれるこの映画。それぞれのストーリーにそれぞれの雰囲気が流れている。

家族を描くシーンでは、スージーの死を悲しみ苦悩する、ずっしりと重たいドラマの雰囲気。

殺人鬼ハーヴィーを描くシーンでは、サスペンスフルで、時には張り詰めたスリリングな雰囲気。

そしてスージーを描くシーンでは、ファンタジー映画を見ているかのような、壮大で不思議な雰囲気。

 

映画はこの3つのストーリーを絡ませながら進んでいく。当然、映画の雰囲気も移り変わっていく。

悪く言えば、この移り変わりに付いていくのはとても疲れる。もしかしたら、この移り変わりに乗り切れず、この映画に入り込めない人もいるかもしれない。

しかし、このジャンルを横断するような移り変わりに没入できると、ストーリーの展開にグイグイ興味を引かれ、感情を揺さぶられ、キャラクターたちの感情の渦に飲まれていくような感覚を味わえる。

こういう不思議な感覚に陥ることができる映画はそうそうない。

 

キリスト教

この映画はスピリチュアルな映画である。そして、キリスト教的な世界観をベースとしたストーリーになっている。

天国のシーンがキリスト教的だというのは当然だが、現世で起きていることも一貫してキリスト教的な要素をベースに作られている。

ハーヴィーは悪魔であり、スージーの家族はハーヴィーの所業によって、憎しみにかられ、復讐に燃え、家族はバラバラになってしまう。

 

この映画は賛否両論を巻き起こすタイプの映画である。ラストに納得がいく人といかない人に分かれるだろう。

だが、メッセージとしては一貫している。苦悩を受け入れ、過去に縛られず生きることだ。

この映画は、人間が憎しみを抱き暴力を行使することを否定する。そこが、勧善懲悪を期待する人からすればスッキリしないところだろう。

裁きは人間に許された行為ではない、というのが、この映画の世界観だ。

 

「私は、ほんの一瞬生きて、この世から消えた。(I was here for a moment and then I was gone. )」とスージーは語る。この「一瞬」というのは、彼女が若くして死んだという意味ではなく、天上から見れば、人の人生はどの人生も一瞬でしかないということだ。

その一瞬の中にいろいろなことが起こり、人間はそれに囚われる。しかし、どんなことでも、たった一瞬の中で起きたできごとに過ぎないのだ、というこの感覚。

ここにちょっとキリスト教的な視点を入れれば、死後、天国で過ごす長大な時間に比べれば、人生なんて一瞬のことなのだから、そこにこだわってもしょうがないよ、ということだろうか。 

キリスト教的な世界観を信じるかどうかは別として、この映画の中では、このメッセージは明確で、かつ効果的に語られている。

 

映画を観終わって、あなたはどう感じるだろうか。

爽やかな気持ちかもしれないし、やりきれない気持ちかもしれないし。もしくは、欺瞞に対する嫌悪感かもしれない。

何にせよ、価値観や感情を揺さぶられる映画であることは間違いない。

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