映画

クロッシング -3人の警察官の弱さと葛藤-

概要

それぞれに悩みを抱える3人の警察官の群像劇。

退職間際で無気力に働くエディ。長い潜入捜査に辟易としているタンゴ。子どもと妻を養うのに十分な稼ぎが得られず困っているサル。

エディは退職日まであと7日。余計な仕事をする気がなく、目の前で騒ぎがあっても見て見ぬふり。

タンゴは捜査していたギャングのボスに命を救われ、情が移り、刑事としてのアンデンティティが揺らいでいる。しかし、捜査を抜けたいと言っても、上司は簡単には彼を解放してくれない。

サルは、双子を妊娠する妻と子どもたちと暮らし、家では良い父親を演じるが、家族を養うため、犯罪の現場から押収した現金をこっそり盗んでいる。

潔白な人間とは言えない3人。しかし、単純な悪人やダメ人間ではなく、それぞれの葛藤の中で苦しみながら生きている様子が描かれている。

みんなのレビューまとめ

高評価

  • 暗く悲壮感のある雰囲気の中に、上手く人間味が描かれている
  • 善良なだけでもなく、単なる悪人でもない登場人物たちに厚みがあって魅力的
  • ハラハラさせる展開で、最後まで集中して観られる

低評価

  • ダメ男たちのダメなストーリーを見せられるだけ
  • 3人のストーリーがもっと劇的に絡み合うと期待したが、そうでもない
  • 似た作品は過去にも多く作られ、陳腐に感じた

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:暗めで渋いストーリーが観たい時。荒んだ街に生きる人間ドラマが観たい時。白黒つけがたいキャラクターが観たい時。

善悪の葛藤

サルは、悪人を殺して犯罪絡みの金を奪ったりしているが、それは家族のためだ。

住んでいる家のカビのせいで、喘息持ちの妻は体調を崩し、お腹の中にいる胎児にも影響が出始めている。

サルにとってお金を得ることは単なる欲望ではなく、家族の命に関わる重大な問題だ。

真面目に働く同僚、可愛い子どもたち、体調不良に苦しむ妻。板挟みになりながら、自分が泥をかぶる形でサルは金を盗んでいる。

 

タンゴは、ギャングのボスを捕まえるという刑事としての自分と、そのボスに命を救われ、彼を守りたいという人間としての自分の間で揺れ動いている。

黒人ギャンググループの一員として生活する中で、警察たちの横暴さにも日々直面し、ちょうど無実の黒人青年を警察が銃殺する事件も発生する。

警察に対する所属意識と、黒人コミュニティに対する仲間意識。その葛藤の中で、悪人としてのボスを逮捕するのか、友人としてのボスを助けるのか。激しい葛藤に苛まれている。

 

エディは無気力な男だが、それは20数年の警察官人生の中で、だんだんと絶望していった結果だということが、新人警官との会話で明らかになる。

彼は映画終盤まで無気力なままだが、現場の危険性を察知したり、誘拐された女性を1人で勇敢に助けたり、有能で正義感のある男だということが分かる。

そんな彼と、無気力になってしまった彼を見比べることによって、彼がどれほどの矛盾や無力感と向き合ってきたのかが暗示されている。

 

どうしようもない状況

この映画は、この3人の群像劇になっている。

一応、同じ警察で働いているが、ストーリー的に絡む部分はほとんどない。

各々がそれぞれの問題を抱え、それぞれのストーリーが進行する。

3人に共通するのは、内面の葛藤や、人生に対する虚しさや苦しさだ。

三者三様の立場から、同じ警察官で、同じ町で暮らす彼らそれぞれの人生の苦難が示される。

 

やる気だけではどうしようもない。1人の力ではどうしようもない。正義感だけではどうしようもない。義務感だけでも、友情だけでもどうしようもない。

このどうしようもなさと、その中で生きる3人の強さと弱さ。その環境じゃ状況から生じてしまった厄介な葛藤。

暗い雰囲気ではあるが、人間ドラマが詰まったストーリーになっている。

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