映画

バンク・ジョブ -政府、マフィア、警察、強盗犯、それぞれの思惑と情報戦-

概要

テリーは借金まみれの中古車店を経営する小悪党。そんなテリーに、旧友のマルティーヌから銀行の貸金庫を襲う仕事の話が舞い込む。

テリーは、このまま日常が続いていくより一発大仕事をかまそうと考えて仕事を引き受け、同じような志を持つ仲間たちを集めて銀行強盗の計画を進め、実行する。

しかし、マルティーヌが持ってきたこの仕事は、政府が王室スキャンダルの写真を盗み出すために仕掛けた策略であり、テリーらはそれに利用されていただけだった。

さらに、貸金庫は、マフィアやその他政治家、警察にとって都合の悪い文書や写真も多くあり、テリーらは警察、諜報員、マフィアからそれぞれ追いかけられる羽目になってしまう。

みんなのレビュー

高評価

  • 実話ベースだと考えると、銀行強盗だけでなく人間関係や政治問題など、その周辺まで含めてエンタメ作品にしているのがすごい
  • それぞれの思惑が交錯し、どちらに転ぶか分からないサスペンスフルな展開が面白い
  • イギリスらしさを感じられる

低評価 

  • アクションシーンが少ない
  • 主人公たちの怪盗団が間抜けすぎて話に乗れない
  • 登場人物が多く、全体を把握するのが困難

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:それぞれの思惑が交錯するサスペンスを観たい時。チームでの怪盗ものを観たい時。実話ベースの面白い話を観たい時。派手さより落ち着いたクライムサスペンスを観たい時。

良い点!

この銀行強盗自体は本当にあった話らしく、驚きと共に興味深く観られる。

(ただ、強盗の黒幕や、報道統制などの政府の動きについては、いろいろと異論もあるようなので、あくまでも「この事件の顛末としてあり得る1つの筋書き」ということなのだそうだ)

前半は素人集団による大胆な強盗計画を描くケイパー物。後半は政府やマフィアの思惑が交錯し、それに巻き込まれる主人公たちの苦闘を描くサスペンスになっている。

テキパキと事件の全体像を描きながら、銀行強盗のワクワク感、そして情報戦のハラハラ感を楽しめる映画になっている。

イマイチな点・・・

実際にあった事件の全貌を描くために、蛇足が多かったり、掘り下げが浅かったりする部分がある。

例えば、潜入捜査官の話は、主人公であるテリーらのストーリーとはほぼ無関係だが、敵役の諜報員をやや不自然にストーリーに引っ掛けられている。事件の中の出来事としては重要な要素なのだろうけど、テリーらのストーリーにとっては蛇足になっている。

また、登場人物も多く、それぞれの思惑や動機を描くのに追われているせいか、かなり早いペースで話が進んでいく。その結果、各キャラクターの内面は最低限の描写になっている。

それはそれで良いのだが、その希薄な内面描写の中で、テリーの夫妻関係や不倫などを描いているのも、やや蛇足に感じる。テリーの動機は「一発当ててやろう」という野心なので、必ずしも家族の存在は重要ではないし、変にロマンスやドラマを挟まなくてもよかったのではないか、と思う。

さらに、ご都合主義的展開や、無駄に見えるキャラクターの不自然な動きも気になる。

例えば、最後のパディントン駅での活劇も、そもそもティムがあそこにいる必要はなかったし、ヴォーゲルのボディガードがあまりにも無能だったり、何より、パスポートや無罪放免の書類の受け渡しと、人質である弟の受け渡しは、同じタイミングである必要はないし(実際、グダグダになっているし)、無罪放免になるなら高飛び用のパスポートは必要ないだろとか、そうだとしたら顔写真の受け渡しは完全に無駄な動きだったな、とか。

とにかく、いろいろツッコミどころはあるのだが、まあ、実話を再現しようとしたのかな、という納得の仕方をするしかない。

事件の全貌

登場人物が多く、序盤で人物配置を理解できないと、後半何が起きているのかを見失いやすい映画だ。

だが、基本的にはシンプルな話だ。

王室スキャンダル写真を盾に横暴を働くマイケルXという運動家がおり、政府は「そのスキャンダル写真を奪いたい」という動機がある。写真が、ある銀行の貸金庫にあることは分かっている。

政府は自分たちの手を汚さないため、マルティーヌを利用し、テリーらに貸金庫を襲わせ、その後テリーらからスキャンダル写真を奪う計画を考えている。

しかし、テリーは機転を利かせて政府の追っ手をすり抜ける。

さらに貸金庫にはスキャンダル写真以外にも様々な「都合の悪い情報」が眠っており、テリーらは知らず知らずに、そういった物を全て盗んでしまったことで、マフィアや、その他諜報員にも追われる羽目になってしまう。

後半では、テリーらは自分たちを利用した政府に自由の身を約束させるというミッションと、マフィアに捕まった弟を助けるというミッションを同時に進行させていく。

 

途中途中で挟まれるマイケルXの元に潜入している潜入捜査官は、一応マイケルX宅で写真を探すという任務を遂行しているようだが、観客からすれば写真は貸金庫にあることが分かっているのだから、彼女の捜査は、映画のストーリー的には無駄であり、混乱を生む蛇足になっている。

ただ殉職の事実は、事件の全貌の一部としては描く必要があったということだと思う。

それはテリーの仲間が殺されるシーンも同じで、ストーリー的には意味がないが、殺されたという事実を描く必要性によって、ストーリーに挟み込まれている。

 

一本のストーリーとして見ると、回り道や余計な登場人物が目につき、締まっていない印象を受ける。

しかし、ある実際の銀行強盗とその背景や影響を描いた作品としてみると、事件の面白さとして、興味深く観られるような映画だ。

「王室」という特殊なプレイヤー。政府のスパイ。素人集団による大胆な強盗。無線の傍受を元にした警察の捜査。スキャンダルを盾に横暴を働く活動家の実態。

その時代のイギリスに想いを巡らせながら観ると面白い。

それぞれの欲しい物、できること、できないこと

映画後半、それぞれの思惑が交錯していく面白さが、この映画の肝だと思う。

なぜここが面白いのか。

それは、それぞれのプレイヤーが別々の動機を持ち、別々のものを望み、そして、できることとできないことが、それぞれに違う中で交渉を進めていくからだろう。

 

例えば政府は、権力によって身柄を拘束したり、または恩赦を与える権限を持っている。そして欲しいのは王室スキャンダルの写真であり、おおっぴらに人を捕まえて拷問したりはしない。

マフィアが欲しいのは賄賂の帳簿であり、権力は何も持っていないが、拷問を含めた暴力はいくらでも振るうことができる。

警察は、純粋に強盗事件の犯人を追い求め、マスコミに情報を流したり市民に協力を求めたりできるが、法の許さない方法は使えない。そして、テリーが賄賂の帳簿を断片を渡したことで、この帳簿を求めるように誘導される。

主人公テリーらは、その3者が求める全ての物と情報を持っており(写真、帳簿、自分たち自身)、それをどう使うかを決められる。欲しいものは人質の弟であり、しかし権力や協力者はなく、逮捕の危機が迫っている。

 

テリーらは、まず逮捕の危機をなくすため政府の諜報員と取引する。そして、弟を取り戻すため、マフィアと警察の両方に帳簿を渡すと言っておびき出し、警察にマフィアを退治してもらう作戦を実行する。

最終的には、マフィアが警察に捕まり、警察はマフィアと関わった汚職警官を大量粛清。そして政府はスキャンダル写真を手に入れ、テリーらは自由の身になる。

テリーらは、圧倒的不利な状況から、知恵と情報を使って、欲しいものを手に入れ、仲間を襲ったマフィアへの復讐を果たす。

地元のヤンキー感

主人公テリーと、テリーに仕事を持ってくるマルティーヌは、何やら2人の過去を持っているような雰囲気。

そして、テリーの妻とマルティーヌは、会うたびに視線をバチバチさせている。

そして、テリーが強盗計画に誘うデイブやケビンは旧知の仲で、さらにケビンは過去にマルティーヌと関係を持ったことがあった。

そして、テリーは弟と一緒に中古車店を経営しており、強盗実行中に見張りが必要になると弟に頼んで急遽来てもらう。

 

銀行強盗と、その後の泥沼化をメインストーリーとしつつ、その裏で流れるこの地元感。幼馴染や弟、過去に色々あった人たち。

「素人による強盗」というのはこの映画の面白さの1つだ。

ではなぜ素人チームが出来上がったのか。それは、地元の友達を集めて強盗をしているから。

この妙に牧歌的な雰囲気が、ハリウッド系の銀行強盗映画にはあまりない雰囲気を作っているようにも思える。

また、盗まれるメインのターゲットが、金ではなく「名誉を貶めかねない写真」というのも、なんかイギリスっぽい感じがする。

この、プロフェッショナリズムより友達、金より名誉の原理でストーリーが進行していく感じも、この映画に特徴的な1つの魅力だと言えるだろう。

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