概要
ある飛行機事故から生還した5人のカウンセリングを担当することになったクレア。自宅でのカウンセリングを望んだエリックと、4人のグループカウンセリングの日々が始まる。
飛行機事故はパイロットの操縦ミスが原因という発表になっていたが、生存者たちの話では飛行機が墜落する前にエンジンで爆発があったという話が出てくる。事故の原因に疑いを持ち始めるクレア。そして生存者の後を尾行する航空会社の者と思われる怪しい影。
1人、また1人とグループカウンセリングの欠席者が増え、クレアは航空会社がもみ消しのため生存者の口封じをしていると考える。そこに、自分も生存者だという新たな患者が現れるが、彼もいつの間にかいなくなってしまう。
そしてある日、生存者たちを尾けていた航空会社の男が、突然クレアの前に現れる。
レビューの印象
高評価
- 主人公の居心地の悪さに共感できる演出が上手い
- 優しい世界が描かれ、人間関係について考えさせられる
- ミステリーとしては微妙だが、ヒューマンドラマとして面白い
低評価
- オチありきのストーリーで、オチが読めると退屈
- ご都合主義的展開が目立つ
- 登場人物にリアリティがなく、感情移入できない
ナニミルレビュー
オススメ度:B
こんな気分の時オススメ:ホラーのようなミステリーのようなサスペンスのような不思議な雰囲気を味わいたい時。静かな映画を観たい時。人間関係の機微を描いた作品を観たい時。
ポジティブ
不穏で不気味な雰囲気のある演出は面白い。自分がそこに所属していないような、普通にしているのに場違いな感じが終始漂っていて、映画のテーマと演出が上手くマッチしている。
航空会社の陰謀、クレアとエリックのロマンス、姉妹のケンカといろいろな要素を描くことで場面場面のトーンを振りながらも、不気味な雰囲気がベースで流れているような空気感も面白い。
そこからラストは一気に温かいムードに振って終わる。この感じも結構悪くない。優しさを感じられるエンディングになっている。
ネガティブ
とはいえ、この手の結末はもう意外性を感じないのも正直なところ。
かつ、暗示的なセリフや場面が多すぎて、さすがに途中で気付いてしまった。そして、途中で気付いてしまうとそれ以上の展開がなく、予定調和的なエンディングになってしまう。
また、航空会社の陰謀にせよ、クレアとエリックのロマンスにせよ、姉妹の仲直りにせよ、いろいろな要素を混ぜたせいで、全体的に締まってない感じがしてしまう。それぞれの要素が別個で展開していく感じは否めない。
何が語られるのか分からない不思議な雰囲気
突然の事故シーンから始まるこの映画、サスペンスなのか、ヒューマンドラマなのか、ミステリーなのか、なかなか掴みどころのないトーンでストーリーが進んでいく。
この不思議な感覚がなかなか新鮮で面白い。
特に、ちょっと不気味な感じがする演出が面白く、ホラー映画のような恐怖感はないが、ミステリーにしてはちょっと気味が悪い、というくらいの微妙な空気感が流れている。
窓の外に突然立っている男が不気味なのは当たり前だが、主人公クレアの隣人である優しいおばさんまで、不気味な感じがする。と同時に、格言めいたことを言っていて、何かのメッセージを常に発している。
同時に、メンタルに問題を抱えたキャラクターたちが登場することによって、この不気味さが、彼らの不調の結果であるような不思議な感覚を醸し出している。
特に、クレアと恋仲になるエリックは、事故の影響で躁状態だが、トラウマから異常な行動を起こしたりする。
この普通に見えた明る人が突然奇妙な振る舞いをしたり、でも、その結果2人の関係が少し親密になって、ロマンスっぽくなったり。
トーンが入れ替わりながら、掴みどころのないストーリーが展開していき、映画終盤まで、何がメインのストーリーなのか分からない不思議な雰囲気の映画になっている。
暗示的なセリフや出来事
クレアの隣人のおばさんを始め、この映画のキャラクターたちは終始含みのあるセリフを語り続ける。
例えば、最初にクレアが仕事を依頼されるところ。大学での勉強に熱中しあまり実務をしていないクレアに対して、「コンフォートゾーンから出るのを恐れるな」と語る。これは映画の結末を知ってから聞くと意味が変わる。
また、クレアが初めてエリックに会う際、看護師たちの態度も、映画の結末を暗示している。
隣人のおばさんは、エリックとの関係を踏み切れないクレアをからかいながら、「人生は短いのよ。翼を広げなさい」と勇気づける。
こういった暗示がストーリー全体に散りばめられている。
レコメンド作品
ヒア アフター
大きな事故からの再生を描く作品
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飛行機事故に関わったキャラクターを描く作品