映画

バーン・アフター・リーディング -お前ら映画の観すぎ-

概要

CIAをクビになったオズボーンはCIAの暴露本を執筆し始める。オズボーンとの離婚を考える妻は、彼のパソコンから彼の財務データと共にその原稿をコピーし、弁護士へと渡す。弁護士の秘書がフィットネスジムでこのCDを落とし、ジムで働くリンダとチャドはCIAの機密情報を手に入れたと舞い上がる。

チャドとリンダは金を巻き上げようとオズボーンを脅迫するが、オズボーンは応じない。キレたリンダはロシア大使館へ行ってCDを渡し、金を払えばもっと情報を教えると約束する。

しかしそれ以上の情報はなく、困ったリンダはチャドをオズボーンの家に侵入させ、新たな情報を盗み出そうとたくらむ。家の中を物色するチャドはちょうどオズボーンの妻と不倫中だったハリーと鉢合わせ、事態は思わぬ方向へと展開する。

みんなのレビュー

高評価

  • どんどん泥沼にはまり事態が複雑になっていく展開が面白い
  • それぞれの執着心を皮肉るブラックユーモア、悲劇と喜劇を見せつける展開が痛快
  • とにかく間抜けなキャラクター達が笑える

低評価

  • 話が複雑で見易いストーリーでない
  • 出来事の面白さ優先なためキャラクターの動機が薄く感情移入はできない
  • あっけない幕引きで消化不良

ナニミルレビュー

オススメ度:B

良い点!

同監督の『ビッグ・リボウスキ』を彷彿とさせる、ハッタリにつぐハッタリでストーリーを複雑に進展させていき、皮肉っぽく幕を引くいたずらっぽさが楽しい。

リアリティや人間の内面なんてどうでもよく、とにかく話を面白く展開させ、最後まで観客を楽しませればいいのだ、という割り切り方が清々しい映画。

登場人物たちの行動はあまりにも浅はかで、そこがコメディになっているのだが、とはいえ、これらの行動には既視感があり、いろいろな映画で描かれるベタな行動ともいえる。

手に入れた機密情報で人を脅したり、アメリカの情報がロシアに渡ったり、カーチェイスをしたり、友人の妻と不倫したり、死体を海に沈めたり。

他の映画では真剣な問題として描かれるこういった出来事を、最も間抜けに描いて見せることで、そもそも映画の中で面白い出来事っていうのは、基本的に行き過ぎた出来事なのだということを考えさせる。

CIA上官が部下から事件の顛末を聞いて、「ほっとけ」と答える、この態度がまさにこの映画全体の態度を表している。

そもそも、すべての事件の原因がリンダの「全身整形をしたい」という欲望なのが、この映画の不真面目さを物語っている。

そして、さまざまな悲劇が起きて、いろんな大きな事件が描かれた後、このリンダの目的が、CIA上官の厄介逃れのために果たされるバカらしさも最高に面白い。

ハリーが地下室で作っている謎の工作。

「徹底的にやらないとね」という不倫相手との会話のあと始まるこの工作は、いかにもな演出でサスペンスフルに描かれた結果、まったく下品でどうでもいい椅子に仕上がる。

この「椅子」こそが、この映画自体を象徴していて、あれこれ面白おかしい見せ方をしておいて、実はすべてどうでもいいものだった。ここから学ぶべきものなんて何もない。でも期待していた時間は楽しかったでしょ。

あの椅子も、パッと見それっぽく見えるけど、たぶん普通に使えない。よく考えたらおかしな形。でもパッと見では意味が伝わる。

この映画もまさにそうで、必死にストーリーを追っている間は何となく意味が分かる。話が複雑になり、あれとあれがここでつながって、この2人がこういう関係で…と、不思議で奇跡的なストーリーに目を奪われる。

でも冷静に考えれば、そんなこと普通あり得ないだろ、と思うことだらけ。そんなこと普通できないでしょ、と思うことだらけ。

でも、それでも映画としてはちゃんと面白い。そして映画の面白さはそれでいい。映画の面白さはどう語るか次第なのだ、と分からせてくれる作品。

イマイチな点・・・

出来事の面白さを追求する映画であり、ドラマ部分、キャラクターの内面は薄っぺらくは薄味。

例えば、映画のストーリーを駆動しているのはリンダの「整形手術の費用が必要」という欲望だが、リンダは出会い系で知り合ったハリーと、整形していなくてもそれなりに楽しく過ごしており、リンダの「整形しなくては」という切実さは伝わってこない。

ストーリーの奇妙な複雑さを増すため、リンダとハリーは愛人関係にならなければいけないのだが、そのストーリー上の都合によって、リンダの内面のドラマは弱まっている。

この映画はそんなことばかりで、キャラクターたちの内面は、突飛な出来事を描くための道具に過ぎない。だから当然、ドラマも薄味。人物に切実さがないので、それぞれの出来事にもスリルはない。

もちろん、恐らくそれこそがコーエン監督の狙いであり、人間の内面なんかなくても、映画の外形だけで十分ストーリーは面白くできるのだという、皮肉っぽい、しかしとてもテクニカルな職人技なのだと思うけど。

まとめ

コーエン兄弟の中では、残酷な描写がない方の映画で、『ビッグ・リボウスキ』に近く感じた。映画の面白さが発生する仕組みを熟知し、それを皮肉りながら、しかし実際に面白いストーリーに仕立ててしまうコーエン兄弟。個人的にこのテイストは好きなので、とても楽しめた。

映画のラストは「学ぶべきものは何もない」という趣旨のセリフで締めくくられるけど、「学ぶべきものは何もなくても、面白さはあるのだ」という意味に思え、そして、エンターテインメントはそれでもいいのかな、と思わせてくれる幕引きだ。

飄々として皮肉っぽいけど、映画の楽しさを存分にわからせてくれる作品。

レコメンド作品

ビッグ・リボウスキ

ひょんなことから探偵役を買う主人公が周りに振り回されながら誘拐事件を捜査するコメディ映画

マッチポイント

結婚によりセレブの仲間入りを果たした幸運な元テニスプレイヤーが、不倫の末に泥沼にはまっていくストーリー

マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ

自分の夫と離婚するため、夫の前妻と交渉し、彼らを復縁させようと画策する女性を描くコメディ映画

バンク・ジョブ

単なる銀行強盗のはずが、結果的に多くの機密情報を手にしてしまったことで悲劇に見舞われる強盗団を描くクライムサスペンス