概要
車いじりが好きな高校生ショーンは、ストリートレースで問題を起こし、母に愛想を尽かされたことから、東京に住む父と一緒に暮らすことになる。
東京でもストリートレースが開催されていることを知ったショーンは、父に黙ってレースに参加。そこでドリフトキングの異名を持つタカシとその友人ハンと知り合う。
タカシの叔父で暴力団の組長カマタは、タカシらのグループから上納金が納められていないことを怒り、ハンが金を着服していたことを知る。
ショーンは、タカシとのストリートレースによって、この問題を解決しようとカマタに提案する。
レビューの印象
高評価
- 東京の街中を舞台としたストリートレースに見応えがある
- 主人公と友人や父との関係性が熱い
- これでもかと日本車が登場する
低評価
- 設定に無理がありすぎる
- ストーリー展開がご都合主義で、キャラクターの内面も薄い
- シリーズの中でも内容が浮いている
ナニミルレビュー
高校生の走り屋
シリーズ3作目になる今作の主人公は高校生ショーン。
1作目がファミリー、2作目がバディ、3作目で青春物。レース狂いのキャラクターたちはそのまま、毎回テーマを変えてきている『ワイルド・スピードシリーズ』。
映画が始まると、「このテーマでどんなカーアクションが観られるんだろう!」というワクワク感が湧き上がってくる。
ひとつ大きな注意点がある。
前作まで主人公だったブライアンがなかなか出てこない。どうストーリーに絡んでくるのだろうか、と待ったまま、映画はエンディングを迎えてしまう。
基本的に今作は、前作までのストーリーとは切り離されて作られている。前作からの流れを期待していると少し拍子抜けしてしまうかもしれない。
しかし、逆に言えば、シリーズの他作品を観ていなくても、この作品は不足なく楽しめるということでもある。
「『ワイルド・スピードシリーズ』にはそんなに興味が無いけど、日本が舞台ならちょっと観てみたい」と思う人は、これまでのシリーズを見直す必要はない。この作品をとりあえず観てみても大丈夫。
ちょっとおかしな日本描写
シリーズの他作品を観なくても問題ないストーリーになってはいるが、この作品だけを観て『ワイルド・スピードシリーズ』を評価するのは少し待ってほしい気持ちもある。
これは観客が日本人ならばしかたないことだが、やっぱり日本の描写がいろいろおかしい。ショーンを日本の環境に接続するために、いろいろと無理のある展開もある。
そういう意味では、『ワイルド・スピードシリーズ』の中でも、ストーリー的には少し難のある作品になっていると思う。
しかし逆に言えば、そのおかしな描写を楽しめるということでもある。
日本人だからこそ気づける「そんなバカな!」というポイントを楽しみつつ、リアリティは大目に見てショーンの奮闘を楽しむのもいい。
そのような欠点があるとはいえ、東京の環境を活かしたシーンももちろん多くある。
映画を観ていて全体的に感じるのは、東京の「狭さ」と「立体感」。
東京は道路が狭い。そして人も多い。そして、高速道路にしても駐車場にしても、立体的な構造を持っている場所も多い。
そういう環境の中で走るには当然テクニックが必要になってくる。
今作では前作までと比べても、よりテクニックの重要性が増している。これは舞台が東京だからこそ、上手くストーリー上の必然になっている。
ただ早いだけだと壁に激突していくだけ。ショーンは東京での最初のレースでそのことを思い知らされる。
日本の描写は違和感があるところが多いが、東京の地形はしっかりレースの面白さとして活かされている。
『ワイルド・スピード』の肝はやっぱりカーアクション。そこは東京を活かしてしっかり作られているのだから、当然前作までにはない面白さがある。
鍛錬と勝負
テクニックの重要性が増した今回のストーリーでは、前作までに比べて主人公の鍛錬シーンがしっかり描かれている。
青春物というテーマも相まって、スポ根的な展開の面白さがしっかり含まれたストーリーになっている。
前作までは、いい部品を使ったり、いい車を手に入れることが、目的を達成するためのキーになっていた。
今作ではショーンの行う鍛錬が、クライマックスで勝つためのキーになっている。「練習して勝つ」。この展開が面白くないわけがない。
しかも、最後のレースはまさに命がけのレースになっている。
もちろん、これまでのレースやカーチェイスでも、事故って死ぬ可能性があるという意味ではいつも命がけだった。
しかし、今回のクライマックスでは、車が行き交う公道よりも偶然の要素が少なく、事故る=テクニック不足という仕組みになっている。
ここでの勝負は、ただただショーンのテクニックにかかっている。
今作はお金や犯罪の話が少ない。この映画の面白さはショーンが東京に来て、東京のレースで勝つために腕を磨くという、修練の物語の面白さだ。