ドラマ

ヴェロニカ・マーズ(シーズン1) -高校生探偵、スクールカースト、セレブと不良と青春ロマンス-

概要

高校生ヴェロニカの人生は、親友リリーが殺された事件をきっかけに一変する。

ヴェロニカの通う高校は、厳然としたスクールカーストがあり、街全体にもセレブと労働者の間の緊張感が漂っている。(冒頭で「中間層がいない街」と説明される)

ヴェロニカは元々セレブ家庭の彼氏(ダンカン:リリーの弟)がおり、カースト上位のポジションにいた。しかし、ダンカンは突然ヴェロニカから離れていく。

さらに、元保安官だったヴェロニカの父キースは、リリー殺人事件について公式見解とは異なる調査を進め、周囲の反感を買って保安官をクビになり、街の有力者たちからも恨まれる。その機にヴェロニカの母もキースの元を去る。

キースは私立探偵として活動。娘のヴェロニカはその仕事を手伝いながら、高校生探偵として学内のさまざまな事件を解決する生活を送る。

周囲の妨害を受けながらも、ヴェロニカはリリー殺人事件の真犯人、母の行方、ダンカンの真意を知るため独自に調査を続け、ジリジリと真相に迫っていく。

を背景としながら、シーズン全体としては親友の死の真相に迫るミステリー。ここのエピソードは個別の事件を解決していく一話完結ドラマになっている。

また恨まれながらも逞しく過ごすヴェロニカ自身の魅力。そしてセレブとも不良とも人間関係を持つヴェロニカの充実したアメリカンハイスクール青春ドラマでもある。

!!これより下はネタバレの可能性があります!!

レビューの印象

高評価

  • 格差や人種など現実社会を反映した世界観で見応えがある
  • 不遇な状況でも毅然と生きるヴェロニカが魅力的
  • ヴェロニカを取り巻く人間関係が心地いい(特に父)

低評価

  • いくつかのエピソードが足早に並列されたり、複数話を跨いだりすることが多く、混乱する
  • 事件の解決方法が強引に感じる
  • ヴェロニカの行動に問題(プライバシー侵害など)を感じすぎてストーリーに乗れない

ナニミルレビュー

テーマ、モチーフ、キャラクター、葛藤、設定・舞台、音楽、カメラワーク

2000年代の西部劇

『ヴェロニカ・マーズ』は、2000年代のカリフォルニア、架空の街「ネプチューン」を舞台にしている。主人公は小柄で可愛い感じの女性(ドラマ内でこう形容される場面がある)。

いわゆる「西部劇」とはほど遠く思える世界観だが、観始めた時点で、「西部劇っぽい」という印象を持った。

このドラマの面白さは、このギャップのある世界観だと思う。現代が舞台で女子高生が主人公であるにも関わらず、西部劇っぽい。

「西部劇」の定義をするのは難しいのでここではしない。ただ、なぜぼくが「西部劇っぽさ」を感じたのかを書いてみる。

第一話では、次々とヴェロニカの境遇が説明されながら、不良バイカーに目をつけられた転入生ウォレスをヴェロニカが助けつつ、その不良にも恩を売って、結果的にヴェロニカも助けてもらう、というストーリーになっている。

この一連の事件の中で起きることは、ほとんどが不法行為である。窃盗や暴力も起こるが、そこに司法はあまり介入せず、高校生たちの力関係、人間関係で全てが収まっていく。

そこにあるのは、「目には目を歯には歯を」の応酬で、ヴェロニカが賢く立ち回り、権力に頼らず問題を解決していく頼もしい姿が描かれる。

ヴェロニカはまったく権力を頼りにしていない。他の高校生たちも、法律より自分たちのルールで動いている。

なぜそうなのかといえば、権力が頼りないからだ。

この町の司法権力=保安官たちは腐敗している。ヴェロニカは過去に性的暴行を受け、そのことを保安官に相談するが、まともに取り合ってもらえない。

(ちなみに第一話でヴェロニカが転入生のウォレスに「町に警官はいない、保安官だよ」とわざわざ説明している。ここにも西部劇感がある。)

争いのプレイヤーになるのはリッチな白人と、荒くれ者のバイカー(恐らく南米系,アジア系のグループ)、コンビニでバイトする黒人、腐敗した保安官。

そして、元々リッチな白人グループにいたが、そこから弾き出され、どのグループにも属さない代わりにどのグループにもある程度顔がきくヴェロニカ。

お互いに対する緊張感、威嚇や暴力によって落とし所が決まっていく事件の顛末などから、「無法者たちの正義」が感じられ、そういった出来事や人物配置が西部劇っぽさを感じた原因だと思う。

普通に観ていると「いや、それ訴えられたら終わりなのでは」とか、「相手の人権無視しすぎなのでは」と思う場面が何度もあるのだが、ネプチューンではそういう価値観はあまりない。

自分たちのルールで動き、自分が信用できる人間を頼りにしながら生き、正当な手続きを経なくても、悪い奴に罰がくだるならそれでいい、という価値観。

ここには義賊や任侠の面白さがあって、そうやって逞しく生きるヴェロニカの姿が、このドラマの大きな魅力になっている。

2020年代現在の感覚で素朴に観ると問題含みの内容だが、そのラフな世界観にサバサバした魅力を感じてしまった。

セレブの元カレ、不良の友達、父娘関係

探偵ミステリーという側面が強いが、このドラマは高校生の人間関係ドラマも同時に描いている。

第一話で「とにかくヴェロニカは不幸な目に合っている」と強調される。

正直、一話に説明を盛り込みすぎな感じがあるが(登場人物や過去回想が多すぎて全体を把握するのが難しい)、ヴェロニカというキャラクターをしっかり理解してもらいたいという意図があったのだと思う。

不遇でも逞しく賢く生きるヴェロニカの好感度は高い。不良バイカーに取り囲まれても動じず、周りからの挑発も上手く言い返すウィットや強さがあり、応援したくなるキャラクターだ。

「不遇だ」という設定がありながら、ヴェロニカは、ある意味で非常に羨ましい境遇にいる。

セレブと労働者しかいない町で、労働者側にいたヴェロニカが、セレブな彼氏をゲットしていた、という設定はシンデレラ的なものだ。

(ストーリーが始まった時点で、そのシンデレラ設定はすでに過去ではあるけど。)

そして不遇だから辛いかといえば、わりとそうも見えない。

ヴェロニカは誰よりも自由に振る舞っているように見える。そして、探偵業をやっていることもあり、校内でも一目置かれている。

また、セレブたちに蔑まれるが、逆に労働者側の高校生にはそれなりに信頼されているような場面もある。なによりヴェロニカに調査依頼してくる人間は後を経たず、それはヴェロニカに承認を与えている。

また、ヴェロニカがそれほどひどいハラスメントを受けているという場面はあまり描かれず、ただ一部の同級生に嫌われているというぐらいの描かれ方なので、それほど暗い場面やストレスはない。

そして、エピソードが進んでいくほど、ヴェロニカはモテモテになっていく。

不良バイカーのウィーヴィルはなんだかんだでいつも助けてくれるし、ウォレスとは異性の親友(ほぼ兄弟)として非常にいい関係を築く。元彼ダンカンは絶対まだヴェロニカに気があるだろっていう感じだし、第一印象が最悪のローガンとも最後は恋仲になる。

懸命に生きている応援したくなる主人公と、主人公にかまってくるいろんなタイプの男たち。ここに少女漫画的な楽しい人間関係があるのは間違いない。

また、父娘関係も良好で、ちょうどいい距離感でヴェロニカに接する父と、父を愛するヴェロニカの関係は見ていて心地よいものだ。

こういうベースの楽しさがありながら、実は父と本当に血が繋がっているのかという疑いが浮上したり、リリー殺しの犯人が身近な人物なのではないかという疑念が生じたり、去った母をめぐって父と対立したり。

それなりに緊張感のある場面もあって、それはミステリーの引きになりつつ、人間関係を複雑にもしていて、ドラマの面白さを高めている。

特に、ローガンとの関係は、敵から恋人へという変化の大きさゆえに結構見応えがあった。

「絶対相いれなさそうな相手とくっつけよう」というのはアイデアとしては思いつくと思うのだが、これをストーリーとして自然に描くのは難しそうだ。

このドラマでは、「ローガンの母の死をヴェロニカが調査する」という出来事をきっかけにして、2人の関係を近づけ、2人が惹かれあっていくことにそれなりに納得感があって、しかし同時に驚きもあって、上手いストーリーになっているな、と思った。

ストーリーを通して、人間関係がしっかり変化していくのも、このドラマの面白さだった。

高校生探偵

もちろん、高校生探偵として活躍するヴェロニカの活動自体の面白さもある。

だが、その調査方法は正直、「そんなに上手くはいかんだろ」と思うものがほとんどで、ご都合主義感はかなり強い。

ただ、それは『名探偵コナン』を見て、「毛利小五郎が眠ってるのに気づかないわけないだろ」と思うのと一緒で、そう感じるからこのドラマがつまらなく見える、という感じのご都合主義には感じなかった。

いや、最初の数話はそう感じるのだが、だんだんそういうリアリティラインのドラマなのだと思えてくるし、なにより、「西部劇」的な、そもそもがちょっとフィクショナルな世界観なので、あまりそこのリアリティを求めず、楽しむことができた。

そのような態度で見ると、カメラやパソコン、頼れるパートナーたちと連携しながら、情報を集め、事件を解決していく毎回のエピソードはそこそこ楽しい。

そして、シーズン全体として描かれるリリー殺人事件の顛末も結構面白くて、終盤にかけては「こいつが犯人か」と思わされる展開が二転三転して、「え、その人!?」という驚きがあった。

個人的には、全く想像もしない方向でもないし、かといって容疑者としてはそれほど有力ではなかった人が犯人だったので、「おお、そういう結末か!」という面白さがあった。

また、リリー殺人事件が急激に解決されていく終盤では、それまでのからまった人間関係もいい感じでほぐれていき、全体的に「良かったね」という安堵感で終われる話運びになっている。

ぼくは探偵物というより、アメリカ学園ものとして楽しんでいたので、それほどミステリー部分には期待していなかった(実際各話の探偵エピソードは「そこそこ」という印象だった)のだが、この終盤の解決劇はなかなか良くて、最後2、3話は一気見させられた。

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