映画

ガール・ネクスト・ドア -パッとしない男子高生が恋に落ちたのは元ポルノ女優-

概要

成績優秀だが、充実していない自分の高校生活に悩むマシュー。ある日、マシューの隣の家に美女ダニエルが越してくる。マシューが窓越しに彼女の着替えを覗いてしまったのをきっかけに、2人は知り合い、デートすることになる。

ダニエルのおかげで初めて青春を謳歌し始めるマシューだったが、親友のイーライが、ダニエルの出演するアダルトビデオを発見。マシューは彼女が元ポルノ女優であることにショックを受ける。

さらに、ダニエルの元にプロデューサー:ケリーがやってきて、彼女をポルノ業界へ復帰させようと働きかける。

マシューは、ダニエルへの思いを確信して迷いを吹っ切り、彼女をケリーの誘惑から守ろうと画策するが、狡猾なケリーの反撃を受け、大学進学さえ危ぶまれる状況へ追い込まれていく。

見る前ポイント

退屈な学校生活を送る男子高生が誰もが羨む美女と恋に落ち、どぎまぎした調子で心を通わせていくド青春ストーリー。初々しさのあるロマンス。ポルノを題材とした映画なので性的なギャグが多めだが、おバカに振り切れる感じではなく、わりと実直な雰囲気。イケてない側の主人公だが、虐めなどはなく、高校生活は退屈ながら平和で、そういうストレスはない。現代の感覚で見るとポルノ女優への感覚など違和感があるかもしれない。

レビューの印象

高評価

  • 初心な男子と彼を翻弄する美女のピュアな恋愛が良い
  • おどおどしていた主人公が逞しくなっていく成長が描かれる
  • クライマックスに向かって伏線を回収しながら予想を超えた展開を見せる

低評価

  • 地味とはいえ、主人公のスペックが高い
  • 一難去ってまた一難の繰り返しが続きテンポが悪い
  • ご都合主義な展開が多い

ナニミルレビュー

ストーリーのためにキャラクターが動いている

正直、あまり乗れなかった。

ストーリーの流れは単純明快で、それ自体はとても魅力的なものだ。

退屈さに苦しむ男子高生が美女と恋に落ちる。彼女の過去を知って葛藤し、しかし彼女への思いを再確認。彼女を過去のしがらみから救うために頑張りつつ、自分に降りかかった危機を、仲間と共にある作戦で乗り越える。

すごく王道な面白さがありそうなストーリー。

ではなぜイマイチだったのか。

問題は大きく2つある。

1つは、主要キャラクターの苦悩や行動原理がぼんやりとしていて、彼らの動機に共感(理解)しきれないこと。

もう1つは、「そうはならないだろ」と思わずにはいられないご都合主義な展開が(特に後半)多発すること。

全体の印象で言うと、上に書いたようなきれいなストーリーを語るために、キャラクターが都合よく動かされている違和感がある。

だから、ストーリーだけを取り出してみると全然問題なさそうなのに、しかしドラマに乗りにくい、という感想を持ったのだと思う。

ダニエルの違和感

この映画は、主人公:マシューとヒロイン:ダニエルの恋愛を中心に、敵対者:ケリーと争うストーリーになっている。

そうであれば、この3人の動機や、その動機を生じさせる苦悩がはっきり観客に分かる必要がある。

マシューとケリーは比較的明快である。2人ともダニエルを自分のものにしたいと思い、相手がそれを邪魔するので苦悩している。

それに加えて、マシューは大学進学のためのスピーチ。ダニエルは自分の実力を社会が認めないという苦悩をサブで抱えている(これらがクライマックスの前振りになっている)。

では、この争いの中心であり、ロマンス的にも重要なダニエルの苦悩はといえば、これがイマイチよく分からない。

ダニエルはポルノ女優という仕事を辞めてマシューの住む町に引っ越し、新しい生活を始めようとしている。マシューとの恋もその一環だ。

彼女が最初に持つ苦悩は、マシューが自分にポルノ女優的な振る舞いを期待したことから生じる(モーテルのシーン)。

(正直、このモーテルでの心情描写はかなり不自然だと感じた。マシューが性欲からダニエルを誘うのは理解できるのだが、終始モジモジしているので何がしたいのか分からない。普通は、最初は興奮するけど、途中で冷めてしまう、という演出にするのでは。

さらにそこでダニエルがマシューの期待に応えるように振る舞うのはおかしいし、しかも、そう振る舞っておいて、「私をそんな風に見るなんて!」と、そのあと怒っている。いや、怒るならモーテルに誘った時点で怒るべきでは。ここは完全にダニエルのひとり相撲感がある。)

過去に関するダニエルのこの、自分の過去に関する苦悩は、直後にマシューが謝罪してくることから、わりとすぐ曖昧になってしまう(=マシューのダニエルに対する複雑な思いもあっさりと解決)。

では、それで2人の恋愛がうまくいき始めるかといえばそうではなく、ダニエルは訪ねてきたケリーと共に、ポルノ女優として、ベガスのコンベンションへと出かけていく。

このあたりで、さすがにドラマに乗れなくなってくる。

なぜ、その仕事を辞めたいと考えていたダニエルは、再びその仕事へ戻っていくのか。こここそがダニエルの最大の葛藤のはずだし、マシューとケリーが争う原因なのに、この葛藤がほぼ描かれない。

ベガスへ発つ前、ダニエルはマシューに問い詰められて、「私に普通は無理。これが私」と言う。

しかし、ここまでのダニエルを見ていて、それほど彼女が新天地での生活に苦労しているさまは描かれない。

マシューとの恋愛も楽しみ、パーティーにも参加し、ご近所さんに疎まれる様子もなく、それなりに馴染んでいるようにしか、観客には見えない。

さらに、そんな言葉を残して去っていったダニエルだが、コンベンションでマシューに説得されて、またすぐ町に戻ってくる。

つまり、「私に普通は無理」というダニエルの言葉は、単に「苦悩している」という記号として発されるだけで、何も彼女の内面や性格を反映していない。

ストーリー的に、ここでダニエルが元の仕事へ戻ろうと振る舞わなければ、マシューが彼女を取り戻すために頑張るシーンが描けない。だから、ここではダニエルにこの悩みを言わせなければいけない。

「ストーリーに合わせてキャラクターが動いている感じがする」というのは、端的にこのダニエルの葛藤の描かれ方に現れている。

ダニエルには、内面があるようでない。ただ、マシューとケリーの争いを巻き起こすためだけに、マシューと付き合ったり、ケリーに付いて行ったり、そしてまたマシューの元に戻ってきたりしている。

さらにストーリー的な粗を言えば、ダニエルが町を去ったのは疎外感ゆえだ(「私に普通は無理」の元の言葉は「I don’t belong here」)。

そしてダニエルが町へ戻ることを決意するマシューの言葉は「君にAV女優なんて似合わない」(元は「You are better than this」)だ。

(AV女優という職業に対して、その物言いは単に失礼なのでは、と思うのは今の感覚なのだろうか・・・。ここでは立ち入らないが、個人的にかなり違和感のあるセリフではあった。)

マシューの言葉は、ダニエルが町を去った理由と噛み合っていない。この言葉はロマンチックかもしれないが、ストーリー的な機能は果たしていない。

マシューの行動は、ダニエルがポルノ女優に戻ろうと考えてしまった原因を何も解決していない。(その原因自体があまり説得力を持って描かれていないのは先に書いた通りだが)

ダニエルがケリーに誘惑された時点でも、マシューはダニエルのことを好いているのだし彼女を止めていた。それでもダニエルは仕事に復帰した。

ということは、ダニエルの気持ちを変えるためには、単にマシューがダニエルを止めるだけでは不十分なはずだ。

ダニエルが町から離れようとしたときにはできなかった何かを、マシューはやらなくてはいけなかったはずだ。

しかし、この説得シーンを経て、ダニエルはマシューの元へ戻っていく。

これでは、単にダニエルが優柔不断なようにしか見えない。乙女心が揺れ動いているのだ、と言われればそうなのかもしれないが、ぼくは全然納得できなかった。

ここでのダニエルの軽薄な揺れ動きは、そもそも彼女がポルノ女優をやめて新しい生活を始めようとした決意自体を軽く感じさせる。結果、彼女のキャラクター自体が薄っぺらくなってしまう。

さらにいえば、この説得のシーンは感動的な演出で描かれてはいるものの、マシューは何も失っていないから迫力がない。マシューはただ、言いたいことを言って帰っただけだ。

(ここでマシューがダニエルに似顔絵の紙を手渡すのをすごく重く描いているけれど、あの絵にそれほど重い意味を感じられるものだろうか。正直、とってつけたようにしか見えなかった。もちろん、それをマシューが大事に持っててくれたんだ的なことはあるのかもしれないけど、いや、さすがに無理があると思った。)

こうやって挙げていけばキリがない感があるのだが、とにかく「ここでダニエルが仕事に復帰する」「マシューが助ける」「ケリーが怒ってマシューの金を盗む」…という筋書きと、キャラクターたちの感情や苦悩が連動しておらず、結果、ストーリーが順調に進んでいても、いまいち話に乗れなくなっていく。

さらに無理のあるクライマックス

マシューとダニエルのすれ違いが解決すると、次はケリーがマシューの金を盗み、さらに奨学金スピーチが台無しになる、という別の問題へ焦点が移る。

ああ、なるほど留学生の話がここにつながるわけか、と思ったのだが、さすがにこのあたりの展開は雑すぎる。

まず、そんな大金が盗まれたのなら普通に警察沙汰でしょ、と思う。にもかかわらず、マシューも銀行員もなぜか自分たちが悪いのだという認識を共有していて、秘密裏にことを解決しようとする。

銀行員の責任は逃れられないだろうけど、普通に考えてマシューは被害者でしかない。だから、この後マシューがケリーと直にケリを付けようとしていることに説得力がない。

さらに、そのあとケリーに会い、ぼこぼこに殴られた後、「痛み止めだ」と言って出された薬を素直に飲み込むマシュー。いや、殴られた直後にそいつが出してきた謎の薬を飲むわけなくない?

しかし、ここでマシューが薬を飲まなければ、奨学金スピーチで大失敗する展開を描けないからしょうがない(またストーリーのためにキャラクターが無理をしている)。

(この奨学金スピーチでもまた、マシューはダニエルへの思いを語るのだが、もうその話は終わったじゃん・・・。スピーチ自体は感動的なのかもしれないけれど、ストーリー上の意味が何もないので、「ああ、脚本家が言いたいことを言っているな・・・」という印象。)

というかそもそも、マシューがケリーに薬を飲まされる展開を描かなければいけないから、銀行から金が盗まれても警察沙汰にはできなかったのだ。すべては前もって用意されたストーリーを展開させるためだ。

ケリーはマシューに、ライバルの家からある物を盗んでくるよう指示するわけだが、これも全く意味不明な嫌がらせだ。しかし、ここでマシューとライバルを会わせておかなければ、ラストの大作戦を描けないから会わせている。

そんなこんなで、だいぶ無理のある展開を積み重ねて、ラストの大作戦のお膳立てを進めていく。

ここまでは目をつぶるから、最後は気持ちよく大団円を描いてくれ!と思うのだが、この大作戦も、非常に無理のある展開で、素朴に「いや、絶対無理でしょ・・・」と思ってしまうもの。

というか、かなり奇跡的な偶然が重ならなければ成功しないような作戦なのだ。「周到に準備しました」みたいな前振りをするのであれば、こういう博打感が強めな作戦だと興ざめする。そこは「すげえ!」と素直に思わせてくれないと納得できない。

しかも、そこでもまたマシューのダニエルへの思いを描くのだが、それがまたひどい。

作戦が失敗しそうになり、マシューが一肌脱がなければいけないことになる。ここはマシューが勇気を出して成長するシーンなのだが、しかし、そのあと、ダニエルのためを思って、やはり断ることにする。

もう、まったく意味が分からない。ダニエルへの思いが、勇気ある行動をしないための言い訳になり、成長を阻んでいる。そんなクライマックスあるか。

敵役ケニー

わりと散々なこの映画で、それでも良いと思ったのは、敵役であるケリーというキャラクターだった。

最初は兄貴肌な立場で登場し、誰からも一目置かれるような魅力的な存在として、マシューと交流していく。

また、化けの皮が剥がれた後も、何をしでかすか分からない感のある雰囲気で、従属した方がいいのか、逃げた方がいいのか判断に迷ってしまうような、ミステリアスな雰囲気がとても良い。

ただ。ラストでの彼の評価のされ方にはやはり違和感がある。

この映画の作り手は、彼を乱暴ながら良い導き手として描いている。

それは、ラストのマシューのモノローグで、ケリーのことを「僕の顧問」と語らせていることから分かる。

いや、さすがにそれはないだろうと。

というのも、ケリーはどう考えてもマシューから2万5千ドル盗でいるわけで、どう考えても高校生を脅す犯罪者だ。

それはラストのラストまで続いていて、大作戦のあと、すべてが上手くいきホッとして家に帰ってきたマシューを、ケリーはさらに苦しめる。

(ちなみに、ここで実はマシューらの作戦はケリーとは無関係であったと分かるのだが、さすがに脅しの材料であるビデオを先に見ておかないなんてありえないだろう。でももはや、そんなことしか起きない映画だから、もういいのか)

とにかく、最後の最後までケリーはマシューを苦しめるのに、ラストで「僕の顧問」と呼ばれ、清濁併せ呑むちょい悪おじさんみたいに締めくくられるのはさすがにナシだろう。

それは、ケリーというキャラクターがたしかに魅力的だという話とは別に、道徳的にダメだろ、と思った。

という感じで、これはなかなか問題の多い映画だと思った。

もともと日本では劇場公開はされておらず、『24』で有名になったエリシャ・アン・カスバートが出演しているということでビデオスルーとなり、今ぼくは観ることができているようだ。

ちなみに、これを書いている時点で、アマゾンレビューではなかなか高評価。

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