映画

殺人の追憶 -コメディタッチで描かれる刑事ドラマとモヤモヤする陰惨な事件-

概要

1980年代の韓国。農村地帯で暴行され殺された女性の遺体が見つかる。遺体は縛られ、被害者自身の下着が頭に被せられていた。同じ状態で発見される遺体が相次ぎ、パク刑事らは同一犯の連続殺人として、この事件を追う。パクらの乱暴な捜査を通して、怪しい容疑者が次々と現れるが逮捕には至らない。そんな中ソウル市警から新たに赴任したソ刑事はパクらのやり方を批判し、冷静な捜査で犯人に迫っていくが、ソ自身も犯人の残忍さを見て我を失っていく。

みんなのレビュー

高評価

  • 野蛮な取り調べ、街の風景、破傷風など、当時の様子を垣間見る懐かしさや驚きがある
  • スリリングさ、もどかしさのバランスが上手くて引き込まれる
  • ハードな題材ながら、観ていて辛いシーンが少なめ(ややグロテスクな描写はあるけれど)
  • パクとソのキャラクターの対比、そして捜査の過程でパクとソの人間性が変化していくドラマが素晴らしい

低評価

  • 刑事たちの取り調べの乱雑さが気になってサスペンスに乗れない。また非人道的でドン引き
  • 捜査の進展自体もやや場当たり的、偶然的で推理ものとしては面白くない
  • シリアスとギャグが同居していて、どういう感情で観ていいのか難しい
  • モヤモヤする結末に煮え切らない

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:不可解な事件に悩まされたい時。陰惨さとコミカルさのギャップがある作品が観たい時。

全体的なレビュー

ハードな内容だと想定して構えてみたのだけど、全体的な印象としてわりとエンタメっぽい雰囲気で意外だった。(日本で言うところの、お昼間のサスペンスとか、シリーズ物の刑事ドラマっぽい印象。)

ただ、起きている事件のエグさはしっかり描かれていて、悲惨さはしっかり伝わってくる。エンタメ的と言っても重たいシーンがないのではなく、グロい描写や陰惨な緊張感のあるシーンもあり、結構な振れ幅がある映画。

その振れ幅を「ちぐはぐで乗れない」と感じる人もいるかもしれないが、個人的にはそこが良かった。明るくコメディっぽい演出が多いことで、「日常の中で陰惨な事件が起きている」という悲惨さが浮き彫りになっている感じがあった。明るい場面があるからこそ、陰惨な事件がより残酷に感じた。

しかも客観的に見ると、その明るい日常の中にも、刑事による乱暴な捜査や拷問という残酷さがある、というのも構造的に面白い。

そしてやっぱり、パク刑事の「ひと昔前の人」というキャラクターが良い。今なら絶対許されない粗暴さと、同時にある動物的な優しさ。拷問した相手に新しい靴を買って事を収めている雑さ。現実では絶対にダメなのだが、フィクションだからこそ許されるこの大らかさを見られるのは、この作品の大きなポイントだと思う。

捜査の進展に関しては、偶然与えられるヒントに左右されすぎていて、推理を進めていく楽しさはほとんどなかった。でもこの映画はそこに重心を置いていないと感じる。捜査はあくまでストーリーのベースであって、その上で起こるドキドキハラハラ、バディムービーとしての信頼関係の構築、そして陰惨な事件とラストのモヤモヤ。

陰惨でありながらエンタメであり、描かれる内容の振れ幅を保ちながら、かなり見やすい映画になっている。

レコメンド作品

ミスティック・リバー

ある殺人事件をめぐって起きるスッキリとしないストーリーを描く作品

JFK

闇に葬られてしまった真実を追い続ける男を描く作品

ナイスガイズ!

正反対の性格の2人が巨悪を追うコメディ作品

ノクターナル・アニマルズ

小説内で描かれる陰惨な事件によって元妻にメッセージを突きつける男のストーリー

ファーゴ

どんどんと悲惨さを増す事件とそれに関わる人間を描いた作品

アウトロー

ある無差別殺人の冤罪をはらすために奔走する元軍人と弁護士のバディムービー