概要
カナダで歯科医を営むオズ。妻とは冷え切った関係で、さらに妻の父が残した借金を抱え、苦しい毎日を送っていた。そんなある日、隣にプロの殺し屋ジミーが引っ越してくる。
妻は、ジミーの情報をマフィアに売れば金になるとオズをそそのかし、オズをアメリカのマフィアの元へ出向かせる。オズはジミーを売るのに失敗するが、そこでジミーの妻シンシアに恋をしてしまう。
オズはカナダへ帰るが、妻がある殺し屋に、自分を殺すよう頼んでいたことを知る。さらに、ジミーに彼の妻と一夜を共にしたことがバレてしまい、ジミーは激怒。
しかし、ジミーがマフィアから逃れる方法をオズが提案することで、2人の利害は一致。ジミーとオズの共同作戦が始まる。
観る前ポイント
リアリティより、よくできたフィクションというコミック調な雰囲気。個性の強いキャラクターたちのドタバタ。軽いノリの楽しい映画。ロマンスは単純ながらピュアでほっこり。愛嬌のある殺し屋とオドオドしている主人公のおかしい掛け合い。
レビューの印象
高評価
- 終始あたふたするオズと、落ち着き払ったジミーとの掛け合いが面白く、2人の奇妙な友情も心地よい
- 軽妙なコメディ、命を取り合うサスペンス、美女を取り合うロマンスの3要素を、高い完成度で融合させたすごいストーリー
- テンポよく二転三転するストーリーで、最後まで飽きずに観られる
低評価
- 殺人が面白おかしく描かれていて、不謹慎
- ラストがご都合主義的で納得できない。ジミーのキャラが崩れた
- ストーリーがとっ散らかった印象
ナニミルレビュー
緊張と緩和コメディ
「殺し」なんてものとは全く関わりがなさそうな冴えない主人公のオズ。殺し屋のジミーが隣の家に引っ越してきたことで、一気に殺し屋、マフィアに周りを取り囲まれてしまう。
このエクストリームな状況の中で、右往左往するオズの振る舞いから巻き起こるギャグ。そこがなんと言っても第一の見ドコロ。
どっしりと構えた他のキャラクターたちの中で、オズのドタバタな動きの可笑しさが際立っている。
緊張感のある場面で間抜けなことをする、という王道ギャグ。ベタと言えばベタなのだけど、この映画全体のクラシカルな雰囲気と相まって、とても心地よいコメディ映画になっている。
ストーリーが進んでいくにつれて、だんだんと周囲のキャラクターたちの思惑も明るみになっていく。そのことによって、オズがさらに間抜けな立場に追い込まれて可笑しさが増していく。
序盤から中盤は、主人公のオズがずっと蚊帳の外に置かれている様子で笑わせてくれる。
そして、この間抜けさがあるからこそ、映画後半でオズが見せる勇気や真っ直ぐさ、自分から勝負をかける姿がグッとくるものにもなっている。
殺し屋ジミーの魅力
常に余裕たっぷりで振る舞う殺し屋ジミー。
もちろん殺し屋だから、基本ぶっ飛んでいる。しかし、あたふたしまくるオズを静かになだめている姿を見ていると、否が応でも好感を持ってしまう。
そして、妻シンシアとオズが不倫したと知ってブチ切れるジミー。そして少し落ち着いたジミーが、電話越しで悲しそうに「失望したよ」と語るシーンは印象的。
どっしりと構えているジミーだが、このシーンではオズより繊実なところを垣間見せる。このギャップもまたジミーの魅力を引き立てる。ビビりまくって裏でコソコソ動いていたオズに比べて、ジミーはオズを素直に友達だと思って接していた。
こんなに魅力的なキャラクターが見られるのもこの映画の面白さ。
大人になってからのピュアな恋心
この映画、「ロマンス映画」というには他の要素が強いけれど、そのへんのロマンス映画より真っ直ぐな恋愛を描いているのではないかと感じる。
オズはジミーの妻シンシアに、とてもシンプルに一目惚れしてしまう。それはもう中学生か!とツッコみたくなるぐらいの一目惚れ。
そして、威厳たっぷりに振る舞っていたシンシアも、オズの率直な告白にドギマギ放心してしまう。
この恋心から、ただ事件に巻き込まれていただけだったオズが、シンシアを守るために必死に動き始める。
公衆電話でオズとジミーが交渉する場面は、個人的にこの映画のベストシーン。
映画のクライマックスは完全にオズの恋心に駆動されている。
冴えない男だったオズが、かっこいいセリフを連発する。しかもキザっぽい嫌な感じがしなくて、本当に本心から自然に出てくるような、オズの気持ちが感じられるセリフになっている。
シンシアの方も負けず劣らず、オズのために大金を諦める。それに加えて、ある場面でオズの奮闘を「結局お金のためか」と勘違いしてガッカリするシーンがある。そしてそれが誤解で、オズが本当に自分を好きなのだと分かってすごく嬉しそうな顔をする。
2人ともバツイチで結構いい年のはず。それでもこんな恋愛ができるって素敵だな、と思わずにはいられない。
レコメンド作品
知らなすぎた男
緊張と緩和のコメディ映画といえば、やっぱり『知らなすぎた男』。
この映画も、何も知らない主人公が、危険な状況の中で危なっかしく振る舞うストーリー。
殺人が絡む状況設定と、主人公の間抜けな振る舞いという点でも似ている。しかし、主人公の立ち位置とか、事件の規模とかはぜんぜん違う。
『隣のヒットマン』の、緊張感がありつつどこか牧歌的な雰囲気が好きなら、この映画もきっと気に入ると思う。
ナイスガイズ!
巨悪を相手としながら、軽妙なトーンで進んでいく探偵モノ
オール・ユー・ニード・イズ・キル
デスクワーカーが戦場のカリスマとタッグを組むはめになる王道アクション映画
ビッグ・リボウスキ
ゆるい主人公たちが、謎の事件に巻き込まれていコメディ作品
モンスター上司
上司を殺すため、殺人計画を練る3バカトリオを描く作品