概要
犯罪者ニールと警察官ヴィンセントの宿命の対決を描く。
頭がよく冷酷なニールは完璧な強盗計画を実行するが、チームの1人が無闇に警備員を射殺し計画が狂ってしまう。この事件を担当するヴィンセントは、わずかな痕跡からニールの存在を割り出し、じりじりと彼に迫っていく。
全く違う立場でありながら、お互いだけがお互いを理解し合うニールとヴィンセント。2人はお互いを騙し合いながらも、お互いの実力を認め合う関係になっていく。
ヴィンセントの追跡により米国に止まることを諦めたニールは高飛びを決意。その兆候をつかんだヴィンセントは最後までニールを追いかける。
レビューの印象
高評価
- ヒリヒリするようなハードボイルドな演出が渋くてかっこいい
- 銃撃戦がリアルでアクションシーンとして面白い
- 各登場人物たちに信念があり、そのぶつかりから生まれるドラマが興味深い
低評価
- ストーリーが淡々として、アクションも少なく、長く感じる
- 泥臭い戦いの中に挟まれるロマンスが邪魔
- アクションにしても男臭さにしても、振り切れていない中途半端さがある
ナニミルレビュー
オススメ度:A
こんな気分の時オススメ:どろ臭い友情が観たい時。切れ物同士の攻防が観たい時。ハードボイルドな雰囲気に浸りたい時。
スリリングな展開
観終わって確認すると、上映時間が3時間弱あることに驚いた。というのも、そんな長さを感じないほど展開がスリリングで退屈するところがなかった。
映画冒頭は主人公ニール率いるチームの手際のいい輸送者強盗から始まる。軍隊かと思うほどの手際の良さ。
しかしこの強盗事件から、この映画のラストに至るまでのあらゆる問題がスタートする。問題行動のある新しいメンバーを消そうとしたが逃げられ、この仕事で手に入れた証券の持ち主はニールらをハメようとする。そしてメンバーのちょっとした口癖を糸口に、ニールらは警察に尻尾を掴まれる。
もうひとりの主人公、刑事ヴィンセントがニールらの情報を掴んでからは、まさに息を呑む展開になっていく。
プロの強盗とプロの刑事の対決。どちらも頭が切れ、どちらも慎重で、お互いの些細なミスを逃さず一進一退の攻防を繰り広げる。
ヴィンセントは慎重に調査を進めていたかと思えば、大胆にニールの前に現れる。余裕たっぷりで話していたのに、次の瞬間ニール一味に尾行を振り切られてしまう。
ヴィンセントとニールの攻防と同時に、最初の強盗事件で債権を奪われたヴァン・ザントはニールらを殺そうと画策する。ヴァン・ザントのこの行動によって、ニールらの計画は撹乱され、それがピンチを呼び、手に汗握る展開が続く。
この緊張感。3時間があっという間なのも当然だ。
ハードボイルドな雰囲気
ニールは頭が切れるが寡黙な男。しかし、ミスをしたメンバーをファミレスでいきなりボコり始め、容赦なく撃ち殺そうとする。
一方でヴィンセントも、タレコミ屋一同を大声で恐喝するような、言ってしまえば悪徳刑事。しかも何のためらいもなくショットガンを持って犯人を追いかけるタフな男。
2人とも自分が最前線に立ち、誰よりも頭を使い、ハートが強く、自分の流儀を持っている。そして邪魔するやつには容赦ない。目的のためには躊躇なく暴力を振るう。
それが一番感じられるのは、銀行強盗後の街中での銃撃戦。「その状況から逃げる気なの?」と驚く。完全に包囲されても全く屈服する気がないニールら。
そして、ヴィンセントもショットガンを持ってニールらを追いかける。
街中で、車に穴が空くほどのデカい銃をぶっぱなしながら、着々と突破口を目指して前進していく強靭さ。
この強靭さと共に、チームに対しては家族のような責任感を持つニール。銃撃戦で負傷した仲間を見捨てないところも魅力のひとつだ。
プロ同士の勝負と友情
ニールは強盗、ヴィンセントは刑事。2人ともそれぞれの仕事が天職であり、周りとはレベルが違う2人の一歩も譲らない戦いが激アツでシブい。
余計な人間関係を持たず、家にはまともに家具も置かず、この裏稼業にすべてを賭けているニール。
そして、犯人を追いかけることに入れ込みすぎて、結婚生活が崩壊していくヴィンセント。
お互いがお互いの生き方を理解し、お互いの凄さを認め合いながら、絶対に譲らない。
そして最後は、2人が拳銃一丁を持って一騎打ち。最後のセリフ、最後の振る舞い。
真剣に勝負できる相手だけがお互いを理解している。そう思わせるラスト。
思いっきり余韻に浸れるアツい映画だ。