映画

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス) -外国での出会い、ぎこちないトキメキ、特別な1日-

概要

パリへ向かう列車の中で偶然出会ったアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌ。2人は意気投合するが、ジェシーの降りるウィーンに着いてしまう。

ジェシーは意を決し、彼の乗る飛行機が来る翌日の朝まで、ウィーンの街で一緒に過ごそうとセリーヌを誘う。そして2人は列車を降り、ウィーンの街中へ繰り出す。

2人は行く当てもなく街を歩き、路面電車に乗り、セリーヌの思い出の墓地に行き、行き当たりばったりにレストランに入ったり、教会に入ったり、船に乗ってお茶をしながら翌日の朝まで過ごす。

お互いの価値観を話し合い、時には噛み合わず、時には相手に感心しながら時間を過ごすうち、だんだんと心惹かれあっていく。

みんなのレビューまとめ

高評価

  • すぐに別れることが前提の男女の交流が、切なくもロマンチック
  • ウィーンの街並み、偶然の出会い、限られた時間など、全体的に設定がお洒落で素敵
  • 若さゆえのヤキモキ感がピュアで、会話も自然

低評価

  • 「限られた時間」という設定がご都合主義に感じる。また会いたいなら会えばいい
  • ひたすら会話が続くので苦痛
  • ときめきの演出があざとく感じる

ナニミルレビュー

オススメ度:B

こんな気分の時オススメ:旅先での儚い恋が観たい時。若いロマンスが観たい時。落ち着いたロマンス映画が観たい時。

良い点!

若い2人のぎこちない感じが、心地よくも居心地悪くもあり、何とも言えないフレッシュさが感じられる作品になっている。

セリーヌは情熱的で、オープンマインドで、アートや宗教にも興味を示すが、ジェシーは皮肉屋でセリーヌの話をからかう。同時に、ジェシーは祖母の霊を見た話や、ある結婚式の話をし、それはセリーヌの心を惹くものだったりする。

この、全体的には微妙に噛み合っていないのだけど、ある部分で強烈に共感し惹かれ合っている2人。一目惚れのもどかしさや危なっかしさが強烈に感じられるストーリーになっている。

お互いがお互いに、この非日常の思い出を良いものにしようと、必死に交流を盛り上げる努力をし、その必死さがそのまま恋心に姿を変えてしまうような不思議な感覚。

それは本当に恋なのか、思い出づくりの為にちょっと気持ちを盛りすぎじゃないか、なんとも微妙な感覚に浸れる興味深いストーリー。

イマイチな点・・・

基本的に、若い二人がおしゃべりをしているだけのストーリーではあるので、退屈といえば退屈。

しかしそういう映画だ。ストーリーというより、会話の中の微妙な緊張関係を感じて楽しむ映画だと思う。

ときめきの危なっかしさ

たまたま列車で出会い、意気投合して、そのままウィーンのオシャレな街で1日限りの恋人関係なんて、なんともロマンチックな状況だ。

これを、単にロマンチックでキラキラしたストーリーとして描かずに、むしろ、主人公の2人がこのロマンチックさを理解しているからこそ、ぎこちなく振る舞っている危なっかしさが特徴的な映画だ。

 

冷静に見ていて、2人はかなり価値観が違う。興味の対象も違うし、家庭環境も違う。

だから2人が話していると、一見楽しそうでも、常に一定の緊張感や気まずさが漂っている。しかし、2人ともこの気まずさがトキメキを消してしまわないように、時には無理して笑い、楽しい時間を壊さないようにしている。

そして、違う点がたくさんあるからこそ、共感できるエピソードや共有できる価値観が強烈に2人の距離を縮める。そして、このロマンチックな恋を永遠にしたい気持ちが、「きっと上手く行くはずだ」という根拠のない自信を2人に与えていく。

2人は、幸せな夫妻はお互いに嘘をついていると話し、結婚すると相手に飽きて愛が冷めていくと一般論を話しながら、「でも、自分はそうじゃない」と確信し、2人のこの恋が特別であることをお互いに確認し合う。

この客観性を失っている2人の交わりを見ていると、「まさに恋そのものだ」とひしひしと感じずにはいられない。

ロマンチックな出会いがトキメキを生み、このトキメキが人を盲目にする。

楽しい気まずさ

気まずさは普通いやな感情だけど、この映画では気まずさが2人の絶妙な距離感として描かれている。そして、この距離感が、このストーリーを単なる甘ったるいロマンスと一線を画するストーリーにしている。

例えば、自分から質問ゲームを仕掛けてきたのに、まともに質問に答えないジェシー。そして、やっと質問に答えたかと思うと、一度で理解できなかったセリーヌに2度目のチャンスを与えず、「この話はもうやめよう」と言って切り上げてしまうジェシーの勝手な感じと、ややいたたまれないセリーヌ。

ここでの2人の微妙なすれ違い方は、本当にリアルで素晴らしい。

セリーヌはセリーヌで、ちょっと自分が喋りすぎているな、と思っている。しかし、喋らないジェシーもずるい。この微妙な行き違い。語ることの多いセリーヌと、皮肉屋であまり世界に興味がないジェシー。

この2人のすれ違いは、最初から最後までずっと繰り返されている。にも関わらず、だいたいの場面において、セリーヌが愛想笑いをしたり、上手く話題を切り替えたりするお陰で、なんとなく2人は仲良く話している空気になっている。

だから、映画内では楽しい空気、親密な空気が充満している一方で、どこか気まずい空気が微妙に醸し出されている。

よく知らない男女の微妙な距離感を絶妙に描いている会話劇と演出がとにかく素晴らしい。

そして、この微妙な緊張関係がずっと流れているからこそ、ラスト近くのレストランでの会話が効いている。

セリーヌは「彼は私を怖がっているんじゃないか」と言い、ジェシーが「ぼくは彼女にバカだと思われているんじゃないか」と言う。お互いの不安が、本当にリアルな恋愛の不安として響いてくる。

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