概要
ステラ・マリス学園のラグビーチームとその家族は、チリで行われる試合のため飛行機でアンデス山脈上空を移動していた。しかし飛行機は雪山に墜落してしまう。
生き残った学生やその家族は、遺体の整理、怪我人の手当をしながら、食料を集め、救助を待っていた。生存者は半壊した飛行機の中で身を寄せ合って、いつくるかもわからない救助を待つ日々が始まる。
食料も尽き、救助が打ち切られたというラジオ放送を聞いて絶望する生存者たち。周囲の捜索を試みるも空腹で体力が落ち、有効な行動が取れないジレンマに陥ってしまった。
そんな中ある生存者が、この事態を解決するためには、遺体の肉を食べるしかないと提案する。
レビューの印象
高評価
- 極限状態でタブーを犯す行為、さらに宗教的な葛藤を描いていて、単純に良し悪しを決められない行為に、大いに考えさせられる内容
- 容赦なく続く災難の数々にも関わらず粘り強く生きる登場人物に感心し、勇気付けられた
- 人肉食というテーマだが、グロテスクさが薄く観やすい
- 墜落や雪崩の映像が凄く、絶望感がよく描けていた
低評価
- 役者たちの見た目が小綺麗すぎて、サバイバルのリアリティが欠けている
- 登場人物たちがやけに明るく元気で違和感があった。人物たちの服装や行動からも、雪山の大変さが伝わってこず、起きていることに対して演出が軽い
- 人肉を食べるシーンもあっさりしていて、エグさがない。
ナニミルレビュー
オススメ度:B
こんな気分の時オススメ:極限状態に置かれた人間のドラマが観たい時。
全体的なレビュー
人肉を食べるシーンがあるということで、かなり構えて観ていたけど、グロテスクさはほとんどなく、観やすくホッとした。反面、起きていることのわりにあっさりし過ぎかなぁ、と感じた。
そして、やっぱりサバイバルしているわりに登場人物たちのルックが綺麗すぎるのは気になった。ある程度美化しても良いと思うけど、ヒゲも生えていないのはさすがに違和感があった。
良くも悪くも、テレビでゴールデンタイムに流れても大丈夫なように演出された映画だな、と思った。メッセージ性は弱まるけど、その分より多くの人に届いて欲しい、という意図だと思う。実際、人に勧めやすい感はある。
一方で、次々と降りかかる災難のしんどさはしっかり感じられて良かった。特に雪崩の絶望感が凄かった。
そして、その絶望感に合わせて宗教への信仰が描かれている場面も興味深い。
安穏と生活している状況だと、科学がある今、宗教なんて不要だと考えてしまいがちだけど、いやいや、やっぱり祈るしかない状況というのはあって、宗教というのは人間にとって必要なんだな、と自然と納得させられた。
特に、太陽の描き方が素晴らしい。凍えそうな夜が終わって、太陽が昇ってきた時の安堵感。「ああ、なんとか生き残れた。太陽に、この世界に生かされてる」という、おそらく人間にとって根本的で原初的な宗教感覚を、映像とストーリーを通して実感することができた。
太陽の暖かさなんて、住居とエアコンが充実した現代だとなんとも思わないけど、そっか、人間にとって太陽ってそういう存在なのか、と考えさせられた。
観る前に期待していたサバイバル感や、人肉というワードからくるドロドロした感じは肩透かしだったけど、むしろ宗教についていろいろ考えさせられる映画で、その方面が素晴らしかった。
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