映画

ソフィーの選択 

概要

優しい作家志望の田舎出身の若者:スティンゴが、夢を追って引っ越した都会で出会った謎の多いカップルと友人になる。カップルの男性:ネイサンは精神的に不安定で、カップルの女性:ソフィーはアウシュビッツの生き残りで、生きることに罪悪感を抱えている。

カップル2人は大げんかをしているかと思えば、仲直りを繰り返し、お互い精神的依存関係にある。スティンゴはソフィーに恋心を抱きながら、ネイサンにも親愛の情を持つ。嫉妬深いネイサンはスティンゴとソフィーの関係を疑い、ついには銃を持ち出す。

ソフィーを連れて逃げるスティンゴだが、ソフィーはスティンゴの説得に応じず、自分の過去(アウシュビッツでの経験)を話して、スティンゴの元をさり、ネイサンの元へ帰っていく。

レビュー

正直、あまり面白く見られなかった。というのが素直な感想。その前提でレビューを書く。

このストーリーの惹きになっているのは、スティンゴのソフィーに対する恋(共感・恋愛)、不安定なネイサンの行動(不安・サスペンス)、ソフィーの過去(好奇心・ミステリー)。

スティンゴの恋(共感・恋愛)

まず夢を追う若者が都会で一人暮らしを始め、同じアパートに住む隣人ソフィーに恋をするというオーソドックスな展開。

ソフィーはいきなり恋人ネイサンとケンカしており、スティンゴは優しくソフィーに声をかけ、ソフィーはお礼に夕食を持ってきてくれる。

ソフィーと良い仲になるんじゃないかという期待感と、優しいスティンゴに対する共感を与えつつ、すぐにネイサンと仲直りするソフィーを見せられ、そうそううまくいかない現実を描く。

この恋心は映画全体を流れていき、スティンゴのネイサンに対する友情や、ソフィーの過去と嘘に対する怒りが葛藤となりながら、エンディングで一夜を共にしつつもソフィーにフラれる、という結末まで続く。

この映画のメインストーリーは、この恋愛であり、ソフィーの過去も、ネイサンの行動も、この恋愛を複雑にするように描かれている、と捉えることができる。

といいつつ、この映画は「何をメインと見るか」が個人的な関心に左右される映画だと思う。ただ、ストーリーの流れから考えれば、恋愛が全体の大枠としてあり、その中にネイサンとの関係(さらにその中にスティンゴの夢=小説)と、ソフィーの過去があると整理する方が自然だと考えられる。

ソフィーの話にインパクトがあるので、そちらをメインに見るのも理解できるが、あくまで回想だし、そちらがメインのストーリーだと考えるのは難しい。

その上で、この恋愛があまり面白く描けているとは思えなかった。

まず、スティンゴがソフィーを好きなんだというのが、いまいちよく分からなかった。

途中で一瞬付き合った女性の話が出てくる。セックスができなかったという事実=スティンゴが性に飢えているという説明のためだけに登場したような、取ってつけたエピソードに感じた。

スティンゴが性に飢えているのは分かったが、それとソフィーに対する感情との関係がよく分からなかった。この女性との関係が始まる時、スティンゴが2人の女性の間で揺れ動くという描写も特になく、だからスティンゴのソフィーに対する気持ちがよく分からない。

そして当然、スティンゴはネイサンといちゃつくソフィーと、普通に友人関係として一緒に過ごしている。

この関係が不自然なわけではないのだが、ソフィーとの恋愛がストーリーの大筋であるなら、やはりもうちょっと、このポジションにいる自分に対する葛藤を描かなければいけないのではないか、と感じた。

この友人関係の問題は、スティンゴの葛藤ではなく、ときどきネイサンがキレて面倒なことになるという、物理的な問題としてストーリーを動かすことになる。

スティンゴは常にソフィーを気遣っていて、そういう意味ではソフィーに対する気持ちは分からなくはないのだが、それが友人としての優しさなのか、愛しているからなのか、あまり明確ではない。

もちろん、そういう「微妙な」関係性を描いているのだと言われれば確かにそうなのだが、恋愛のストーリーとしてのパンチには欠ける。

だから、最後にソフィーと結ばれても、そんなに嬉しくないし、それで去られてもそんなに悲しくない。

とにかく、スティンゴの恋愛全体にいまいち共感できず、このメインの話にのれなかった。

不安定なネイサン(不安・サスペンス)

この映画の緊張感を作っているのはネイサンだ。直接的に大きな暴力は振るっていないが、いわゆるDV彼氏。

ストーリーが進むと、実は精神を病んでいることが分かる(でしょうね、という感じだったが)。

ネイサンにはたしかにハラハラさせられた。そして結末も、このネイサンのキャラクターに起因する悲劇になっているので、ストーリーとしても綺麗に収まっている。

陽気で、演技的で、愛情表現も大きく、一緒にいて楽しいタイプ。だが、ときどき妄想に陥り、暴力的な態度に出る。このギャップに魅力を感じるかどうかは人それぞれだが、スティンゴとソフィーが彼を放っておけないことには納得できた。

病気だったソフィーを優しく介抱する姿で強調されるように、とにかく「悪い奴ではない」というラインが描けていたし、病気であることが分かると同情してしまう。

だから、彼の暴力的な態度はある程度許せてしまうし、そんな彼と縁を切ってしまうのも悪いかな、という気持ちにもなってしまう。と同時に、妄想に取り憑かれた時の話のできなさもイライラするレベルで描かれている。

縁を切るのははばかられるが、付き合っていると面倒。この葛藤がちゃんとしている。

ネイサンが明るく振る舞っていても、いつまた面倒を起こすのか気が気じゃない。これがサスペンスを生じさせている。

スティンゴとソフィーが良い感じになるのはある意味で嬉しい展開なのだが、同時にネイサンの妄想を駆動してしまうのではないかという不安も同時に生じる。ネイサンの存在によって、二重の感情がストーリーに流れるようになって、それが見応えにつながっている。

しかし、ネイサンは、道具的なキャラクターとしては機能していると思うのだが、ネイサン自身のドラマは別に描かれていない。そこはやはり残念かなと思う。

途中で彼の兄が出てきて、麻薬をやめさせたいとスティンゴに相談する。

ここからネイサンのドラマが立ち上がるのかと思いきや、その件はスルーで映画は進んでいき、結末でネイサンは死んでしまう。

ネイサンは、作り手が観客を飽きさせないために、ときどき暴れさせる都合のいいキャラクターとしてストーリーに位置付けられている。そんなふうにも感じてしまう。

あと、スティンゴの小説についても、ネイサンとの仲を深めるのに一役買っていたが、それ以外にはスティンゴの作家という個性はそれほど活かされていないように感じた。

ソフィーの過去(好奇心・ミステリー)

この映画最大のポイントは、恋愛の相手役であるソフィーの過去だろう。

たしかに壮絶なものだし、ソフィーのキャラクターを奥深いものにしていると思う。

特に、単なる被害者ではなく、どちらかといえば加害者的な境遇だったのに、被害者側に割り振られてしまったという悲劇性が良い。

また自分が難を逃れるために、その加害者の境遇を利用しようとしたことや、それが更なる悲劇(=選択)を生んだ皮肉なども混みで、とても胸にくるエピソードだった。

しかし、ではこのソフィーの過去が、この映画のストーリーをすごく面白くしているかと言えば、あまりそうは感じられなかった。

ソフィーの過去は、別個のエピソードとしては面白い(という言い方は不謹慎だがく)。だが、この過去によって、メインのストーリーが直感的に面白くなっているかというと微妙だと思った。

回想シーンの宿命として仕方がないが、、メインストーリーを足止めし、やや退屈さを助長していると感じた。

この過去は、メインストーリーに絡めて言えば、単に美しい女性だと思っていた相手が、実は嘘をついていて、それに裏切られて傷つく、というスティンゴの心情を生じさせている。

さらに、ソフィーの持つ罪悪感によって、スティンゴとの結婚に踏ん切りがつかない=恋が成就しない=破滅的な選択をしてしまう、という結末にも関係している。

ということで、それなりにストーリー的な位置付けがちゃんとしているのは分かるのだが、しかし、あまり面白くはなかった。

というのも、このソフィーの過去は、ソフィー自身にとっては大きな問題になっているのだが、スティンゴからすれば「可哀想な過去」でしかなく、ソフィーに対する気持ちを大きく動かすものではないように見える。

スティンゴはソフィーが嘘をついていたことには怒ったが、彼女の過去に対しては常に同情的なので、ソフィーの過去は2人の恋愛をドラマチックにはしていない。

つまり、そんな過去が語られて「にもかかわらず好き」という形で描けていたら、恋愛としてグッと来るのだと思うのだが、ソフィーの過去回想のあとには、この「にもかかわらず」感がない。

ソフィーの告白は、単に「可哀想な目にあったんだね、だから僕が支えるよ」という、すごくストレートな感情としてしか、スティンゴの恋心に寄与していない。

だから、正直に暴力的に言ってしまうと、ソフィーの回想シーンは、やや説教くさい御涙頂戴的な過去シーンに見えてしまった。

観客であるぼくは、主人公のスティンゴを通してストーリーを追っている。そして、ソフィーの過去は、スティンゴの気持ちをそれほど大きく変えはしない。

例えば最後の子供の選択の話でも、スティンゴは、ソフィーが自分を簡単に受け入れない理由が分かっただけであって、ソフィーに対する感情が大きく変わったという展開にはなっていないし、2人はそのあとセックスしているし、スティンゴは単に翌朝ソフィーに去られるのであって、そのことの方がスティンゴにとっては事件なわけだ。

だから、過去エピソードは単に過去のエピソードであって、ストーリーで進行しているドラマにはそれほど寄与していない。にもかかわらず、やはり重たい話だからか、過去エピソードはそこそこの尺が取られている。

そのあいだメインストーリーは止まっている。

正直、うーん、と思ってしまった。そういう感想が許されなさそうな映画ではあるのだが、これが正直な感想だ。