映画

悪魔の手毬唄 (1977年) -血の運命と悲劇の殺人-

概要

四方を山に囲まれた鬼首村。そこで20年前に起こった未解決殺人事件を、個人的に追いかけ続けていた警部:磯川は、探偵:金田一に捜査を依頼。金田一は、殺された男の妻でもある青池リカの旅館に泊まり、事件の捜査を始める。

鬼首村には由良家と仁礼家という名家があり、互いにいがみ合う関係。そんな中、両家の娘、由良泰子と仁礼文子は共にリカの息子:青池歌名雄に好意を持つが、歌名雄はやや落ち目の家である由良家の泰子と交際している。

20年前の事件を捜査し始めた矢先、泰子が何者かに絞殺される。泰子の母は、仁礼家の仕業だと訝しむが、ほどなく仁礼の娘である文子も殺されてしまう。金田一は、この殺人の方法が村に伝わる手毬唄の歌詞をなぞっていることに気づく。

事件を捜査するうち、20年前、由良家没落のきっかけを作った詐欺師であり、リカの夫を殺した男:恩田の存在が、今回の事件にも関係するものとして浮かび上がってくる。

みんなのレビュー

高評価

  • 陰惨な殺人事件ながら、悲しく、人情味があるドラマ
  • 当時の日本の風景を再現してくれる映像
  • 役者の顔や、殺人の様子、死体の描写など、怪奇的な映像が魅力

低評価

  • 殺人事件としてのリアリティが低く、探偵の推理もあまり面白くない
  • 殺人の方法が無駄に突飛で、人間ドラマを背負った犯人のキャラクターがぶれる
  • 余計な部分が多く感じる

ナニミルレビュー

時代的なものなのか、公開から40年以上経っている今見ると、いろいろと奇妙に見える。それが悪いというわけではなく、当時はこうだったのかぁ、と思わせてくれるものだった。

例えば、タイトルにもなっている「手毬唄」。鬼首村に伝わる手毬唄の歌詞通りに犯行が行われている、という事実が明らかになるのだが、この設定はストーリー上はわりとどうでもよく、この歌が事件を解決に導くわけでもない。単に、犯行の手法として「手毬唄の歌詞をなぞる」ということの面白さや、日本のある地域の様子を垣間見るような好奇心を満たしてくれるだけ。

手毬唄をなぞるという遊び心のわりに、犯人は愉快犯などではなく、わりと真面目な人間。真面目な人間が殺人を犯してしまうことの切なさが、この映画の大きな魅力になっている。だから、犯人像と、手毬唄をなぞった殺人手法は明らかにミスマッチな違和感が、今この映画を観ているぼくの目には映る。

しかし、こういう面白さが、当時は違和感を伴わずに自然に受け入れられたのかなぁ、というような。そんな風に思わされる。もちろん、当時から違和感はあったのかもしれないが、少なくとも「金田一シリーズはこういうものだ」と受け入れられていたんだと思う。

この手毬唄の設定ひとつみても、この映画が、ミステリーや推理物として、すごく精緻にできた作品だとは言えないと思う。

やはり、いろいろツッコミどころがあって、「普通そんな殺し方しないんじゃない?」とか「普通その変装バレるんじゃない?」とか「それ偶然上手くいっただけじゃない?」とか、悪く言えばご都合主義な展開やトリック、証拠の発見が目立つ。

というわけで、別にミステリー部分はそんなに面白くないのだが、この映画の面白さは別の所にある。

まず、やっぱり昔の日本の描かれ方。風景。人間関係。家屋。ここで描かれるのは昭和27年(1952年)だから、江戸や明治のように昔ではないのだけれど、舞台が田舎の村になっているので、すごく昔の感がある。

この風景を見ると、少なくとも江戸時代ぐらいと今が連続しているんだという感覚を得ることができる。

(以下ネタバレ)

そして、やっぱり人間ドラマこそ面白い。

今はもういない男によって、因縁を持つ女4人とその娘4人。このドロドロの人間関係を軸とした殺人劇。

もちろん、この女の恨み辛みも目を引く要素ではあるのだが、個人的に最も心に来たのは、犯人リカの息子:歌名雄の運命である。

歌名雄は、まず恋人を殺され、自分に思いを寄せていた幼馴染を殺され、さらに妹を殺され、最後には母をも失ってしまう。

歌名雄には全く何の罪もないのに、彼のもとに運命のしわ寄せが全て襲いかかってくる。単に、たまたまリカの息子として生まれただけなのに、彼はそんな目にあってしまうのだ。しかも名家や王家の息子なんていうものでもなく、比較的普通の家の息子である彼のもとに、こんなに大きな運命が叩きつけられるのだから、よくある物語として処理するわけにもいかない。

クライマックスで、歌名雄が、殺人犯が自分の母リカであったという事実を知るシーンがある。その場面で、歌名雄を見守る周囲の村人や警察は、みな目を背けて歌名雄の不幸に同情する。

ここにはただただやるせなさがあって、そのやるせなさからは、誰しもが目を背ける以外のことができない。

そんな悲劇的な歌名雄の運命こそ、この映画の最も深い部分なのだと感じた。

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